13-2
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「どのチームも強そうだね……!」
「ふふ、でも私達だって負けてられないでしょ~?」
「ええ、そのためにこれまで準備してきたのですから」
吹雪は左右に座る真理と美空にそれぞれ目を配る。二人の意思と気持ちは確認するまでもなく、そしてそれは吹雪も同じだ。
「マスター、敵の反応。これは……」
と、周囲を警戒していたフレイスヴェルグが連絡してくる。見れば彼女のレーダーに3つの反応が。
「おうおうおうおう! アタシらの炎に焼かれて灰になっちまうオロカモノ共はどいつだ?!」
そこには真っ赤なカラーリングのドールが三人。
「チーム・バーニングフレア……! 叢雲ちゃん、気をつけて!」
「フン、誰に向かってモノを言ってるのかしら? こんな奴ら、コテンパンにしてあげるわよ!」
「ヘッ、威勢のいいドールだな……気に入った! テメェを倒すのは最後にしてやるぜ! いくぞ、ウェスタ! ヘスティア!」
「やったるぜ!」
「爆☆殺!」
起伏のある丘が広がるエリアで会敵したチーム・ブロッサムメイツとチーム・バーニングフレア。真っ先に駆け出したのはバーニングフレアだった。
先頭を走るのは巨大な火炎放射器を持ったチームリーダー、イグニッシュ。その危険極まる武器と荒々しい口調で並み居る敵を焼き尽くす、炎のように燃え盛る苛烈なドールだ。
その後方、左右を固めるのはヘスティアとウェスタ。どちらも火に関係する女神の名を冠しており、二人共イグニッシュに負けず劣らず激しい気性の持ち主だ。
「オラオラいくぜェ!」
先手必勝とばかりにイグニッシュの火炎放射器が大量の炎を撒き散らす。一直線に伸びる炎は意外と射程距離が長く、叢雲たちは咄嗟に後方へ回避することで難を逃れたが。
「逃がしゃしねぇぜ!」
「ぶっころ☆死!」
ヘスティアは二丁のグレネードランチャーを、ウェスタは全身に搭載したミサイルをそれぞれ発射する。放物線を描いて飛来する無数の焼夷弾は叢雲たちの退路を塞ぐように着弾していった。
「熱ッ?! ちょ、ちょっと熱いわよ!」
「叢雲ちゃん?!」
周囲の草原が燃え広がりだし、辺りは一瞬にして燃え盛る。そしてその火力はじわじわとブロッサムメイツに継続ダメージを与えだしていく。
ドールの攻撃方法はいくつもあるが、バーニングフレアが得意とするのはこの燃え盛る炎だ。炎系の攻撃は継続してダメージを与え、周囲のオブジェクトをことごとく破壊する。一歩間違えれば自分たちにも被害が及びかねない中級者~上級者向けの武装といえるが、彼女たちはまるで自分の手足のように炎を操るという。
「くっ……この火力、私の装甲でも長くは保たないですよ!」
「まずい、ヴェルグちゃんの自慢の翼もこの火の中では離陸が難しい」
あっという間にブロッサムメイツは炎に取り囲まれてしまった。さらにその周囲をバーニングフレアが包囲し、炎の勢いを増すべく攻撃の手を休めない。
「燃えろ燃えろォ! イチかバチか、その炎の壁を突き抜けてきてもいいんだぜ? その瞬間にアタシの火炎放射器が黙っちゃいねぇがな!」
「なぁにぃ? もっとこんがりと焼いて欲しいって? それなら追加の燃料をサービスしてやるぜ!」
「大☆爆☆発!」
じわじわとなぶり殺すつもりなのか、直接攻撃しないイグニッシュら。その火力をもってすれば並のドールはあっという間に撃破してしまう筈だが。
「二人共、低くしゃがんでなさい! 十種雲形・巻層雲!」
叢雲が握る天之羽々斬が淡く光り、彼女は独楽のようにその場で一回転する。鋭い回転斬りは周囲の炎を切り裂き、さらには放出されたビームによって吹き飛ばされる……が。
「なんて炎なの……?!」
勢いよく燃え盛る炎はもはや地獄の業火の如し。多少の攻撃ではその火力を削ぐことはできないまでになっていた。
「真理、私のミサイルでここを吹き飛ばします! 良いですか?!」
「ダメよアルテミス~! そんな事をしたらあなた達まで……!」
「マスター、ヴェルグちゃんのHPが半分を切った。このままでは危険域に入ってしまう」
「もう少し待って、ヴェルグ! 何か方法は……!」
火攻めという古来よりの方法、単純明快な攻撃。だが、それゆえに突破するのが難しい。これまで比較的優勢を保ってきたブロッサムメイツはここに来て上位チームの洗礼を受けているのだ。
「……叢雲ちゃん、アレを使うしかないよ」
「ちょっと、アレってまさか?! 本気なの?!」
吹雪の提案に驚く叢雲。その表情は普段からは想像もつかないほど困惑していた。
「私達はここで負けてられない……確かに危険な賭けになっちゃうけど、ここでやらなきゃ!」
「……そうね。全く、とんでもないヤツよ。アンタ」
叢雲は自身の手の中にある大剣に目を落とし、ヤレヤレといった風に肩を竦める。
「いいわ、この叢雲の名をしっかりとあいつらに刻んでやるわ! 天乃羽々斬、全エネルギー開放!」
ガシャリ、と大きな音を立てて刀身が二つに分かたれた天乃羽々斬。刀身と刀身の間には内蔵されたビーム発生装置が露出し、青白い光が漏れ出していた。
「十種雲形・積乱雲! ハァァァアアア!」
天乃羽々斬を天高く掲げる叢雲。そして刀身からはまばゆい光とともに、一条の巨大なビームが上空へと放たれた。
「な、なんだァ?!」
「これはヤベー匂いがプンプンするぜ!」
「驚☆愕!」
あまりのエネルギー量に、取り囲んでいたバーニングフレアの面々も思わず天を仰いでしまう。一人のドールが放出するエネルギーとしては破格であり、これほどのビームは他に類を見ない。
バトルフィールド最上部に達したビームは一気に拡散し、その周辺で巨大な雲を作り出す。まるで真夏の空に表れる入道雲を連想させるソレは、一気に雷雲へと変化しだす。
「覚えておきなさい。叢雲っていう私の名前はね、常に所有者の天に雲気を纏わせ、雨雲を呼ぶ神剣からとられたのよ」
辺りを薄暗く覆った雷雲からは何度も雷鳴が轟く。そして、雨が降り始めた。何条もの、極細のビームの雨が。
「ウオォォオオ?!」
「なんだコリャア?!」
「無茶☆苦茶!」
このエリア全域を恐ろしいビームが降り注ぐ。一条のビームは、それこそアルテミスの持つオリオン・ボウのビーム並の威力があり、何発も食らってしまえば危険なほどだ。
バーニングフレアの三人は前後左右、どうにか天からのビームを回避し続けるが、全て避けきるのは難しいようだ。
「チッ、炎が……!」
イグニッシュが横目に見た光景は、無数のビームが炎の壁をかき消すところだった。ちょうど叢雲を中心とした僅かな範囲にはビーム攻撃が降り注がず、三人はそこで炎が消えるのを今か今かと待っている。
「……ッ! 流石にエネルギーを消耗し過ぎたわ……」
その場でふらつく叢雲。十種雲形・積乱雲は天之羽々斬に蓄えられたエネルギーのみならず、叢雲本体のエネルギーも大量に消費してしまうという、諸刃の剣だった。しかし、それに見合う威力と範囲を持った超必殺技といえる。
「叢雲、少しそこで休んでるといい。後はヴェルグちゃんと……」
「この私が敵を蹴散らしちゃいますから!」
「……二人だけに活躍させるつもりはないわ。私も……!」
『叢雲ちゃん、ここは二人に任せよう? だって、それがチームだもん』
「……分かったわ。くれぐれも無理はしないでよ?」
吹雪の説得に、意外と素直に応じる叢雲。普段は強気な彼女もそれだけ消耗が激しいという事なのだろう。それを見たフレイスヴェルグとアルテミスは互いに顔を見て微笑む。
「チーム・ブロッサムメイツはこんな所で負けません!」
「ヴェルグちゃんの戦況予測……十二分に勝てる。勝ってみせる」
あれだけ燃え盛っていた炎の壁も殆ど鎮火した。天からのビームが止んだのと同時に、二人のドールが飛び出した。




