第十三話「熱ッ?! ちょ、ちょっと熱いわよ!」
第十三話
「そろそろかしらね~?」
そう真理は呟く。
「真理センパイ、どうかしました?」
アナウンスされたエリア制限の確認をしていた吹雪が真理の方へと向きなおる。予選大会は開始から一時間ちかく経過しており、既に終盤戦と言える頃合いだ。
「みんな、一旦集合よ〜! この地点まですぐに来て頂戴〜」
「一体どうしたってのよ。こんな所で油を売ってないで、さっさと他のチームを探さないといけないんでしょ」
叢雲、フレイスヴェルグ、アルテミスの三人はさっきまでそれぞれ分散して敵チームを探索しており、この突然の召集に困惑していた。
「そうです真理! いくら勝ち残り戦とはいえ、のんびりしてる暇はありません!」
「ヴェルグちゃんのレーダーには反応無し……この周囲にはもう敵がいない可能性大」
「みんな、よく聞いて~?今の時点で残りチームの数は5よ~? 私達を含めてね」
「え? もうそんなに減ったんですか?! 美空は知ってた?!」
「吹雪さん、ほら、ディスプレイのここに表示されてるのが残りチーム数です」
「でね、今までは積極的に敵チームを倒してたの~。その理由とは〜?」
「ハイッ! 万が一ドローになった場合、戦果ポイントで上位二位に入るようにする為です! これは試合開始前に真理センパイが言ってましたよね?」
「そうその通り~! でもね、残りチームが少なくなった今、私達は確実に勝ち残る為にここからは慎重に動くべきだと思うの~」
「その考えには賛成です、真理先輩。恐らく他のチームはこれまでと違って手強くなってるはずですし、上手く立ち回るのが重要かと」
そう言うと、美空はブースの中からチラリと外を伺う。会場のボルテージは相変わらず高いままで、これから始まるであろう激戦を待ち望んでいるようだ。
『さあ、一体誰が予想したでしょーか?! 無名の実力者、チーム・黒風白雨が怒涛の快進撃を続けるー!』
吹雪たちのいるマスターブースからでも、中央に吊り下げられた大型ディスプレイの映像はいくらか見える。そこでは大会の司会進行こなすバト子ちゃんの実況と解説が可愛らしいそのアバターと共に映し出されていた。
『それではっ! ここまで勝ち残っているチームを改めてご紹介しましょう! まずはこのチーム! ブラッドパイレーツ!』
そこに映し出されたのは勇ましくも麗しい、女海賊たち。この終盤になってもメンバーは欠けておらず、大したダメージを負っているようには見えない。
『会場の皆さんもご存知、荒々しい戦い方をする一方、とてもクレバーな立ち回りで数々の激戦をくぐり抜けてきた猛者中の猛者! しかしこの激しい戦いで予備の武装や弾薬は殆ど尽きてしまったようだぞ~!? このピンチをどう切り抜けるのかぁ!』
次に映し出されたのは草原を優雅に闊歩するメイド風騎士とその御付きだ。
『お次は気品溢れるこのお方々! ロイヤルメイドナイツ! その高貴さからは想像もつかないほど苛烈な攻撃でここまで並み居る敵を蹴散らしてきました! しかしながら戦いは最後までどう転ぶか分からないぞ!』
リーダーであるグローリアスを先頭に、オーシャンとコロッサスが少し後方から周囲を警戒している布陣だ。流石というべきか彼女らに目立ったダメージはなく、その表情にもかなりの余裕が覗える。得意げな顔で鳳凰院麗華の高笑いがここまで聞こえてきそうだ。
「麗華さんにグローリアスちゃん……やっぱりロイヤルメイドナイツはここまで残ったわね~」
「私達も負けてられませんよ!」
「でも練習試合のように上手くはいかない筈です。注意しましょう」
『さあさあ、お次のチームです! 今大会で一番の活躍を見せる黒風白雨!』
荒野を一人、トボトボ歩く陽炎の姿がディスプレイに映し出されると同時に会場が一際沸き立つ。この短時間で多くのファンを獲得したらしいのだが、どうも本人は気づいていないようである。
『なんとこのチーム、今回の大会出場まで公式データが存在しません! 全てが謎、謎、謎ォ! 一体今まで何をしてきたんだ?! しかしながら実力は十分、この黒風白雨1チームで20人以上のドールを撃破してしまう凄まじさ! 注目の大型新人とはこのチームの事だ!』
(あれが、シューちゃんのチーム……)
吹雪の脳裏には試合直前の事が思い返される。数年ぶりに再開した幼なじみ、八雲秋華とのイザコザ。
吹雪は小さく頭を振り、ともすればグルグルと思い悩みそうになるのを防ぐ。言葉では伝わらない、今は行動と実力を以て秋華に吹雪の信念を伝えるしかないのだ。
『さてさて、こちらも無名の新人チーム! その名もブロッサムメイツ!』
「あっ、叢雲ちゃんが映ってる! 大画面で見る叢雲ちゃんもかわいいなぁ……」
『ブロッサムメイツも黒風白雨同様、これまで殆ど公式戦のデータがありません! しかしながら不肖私、バト子ちゃんは面白い情報をゲットしてますよぉ~! な、なんと! ブロッサムメイツ所属の叢雲というドール、実は第一世代型ドールだというんですよ!』
その言葉に観客席も思わずどよめく。「まじかよ……」「古っる!」「え?本当に動くの?」などという声が聞こえ、叢雲は途端に怒りを露にしてしまう。
「ちょっと! 誰が三葉虫だのアノマロカリスですって?!」
「そ、そこまでは誰も言ってないよ叢雲ちゃん!」
『黒風白雨の陰に隠れがちですが、ブロッサムメイツも実力派のチームです! 他のチームにどこまで肉薄できるか?! この先が楽しみですね!』
「な、なんか私達の評価だけ他と違わない……?」
「ブロッサムメイツはこれが公式戦初出場ですし、なんの実績もありませんからね。仕方ありませんよ、吹雪さん」
「そうよ〜、これから皆をぎゃふんと言わせたら良いのよ〜!」
「そっか、それもそうですね!」
(黒風白雨のインパクトに負けてるとは言い辛いわね〜)
「そしてそしてぇ〜! いよいよ大本命! チーム・阿修羅と並んで予選通過確実視されているのはこの方々! チーム・バーニングフレア!」
その名が呼ばれた瞬間、観客席からはバーニングフレアの名が連呼される。メンバー名であるイグニッシュ、ウェスタ、ヘスティアと書かれた横断幕がそれぞれ掲げられ、お揃いの法被を着たファンが一斉にコールしだす。まるでアイドルかなにかのライブ会場のようだ。
「燃えたぎるソウル、灼熱の血潮! 私達の身体は真っ赤に燃える鉄で出来ている! そう公言するバーニングフレアの特徴はその圧倒的な攻撃力! 防御や守りなんて言葉は出荷前の工場に置き忘れてきたと言わんばかりの脳筋揃い! おっと、このチームに限っては褒め言葉なのでご注意を!」
そして、マスターブースの一つから人がその場で立ち上がり何かを叫びだした。
「うぉぉぉ! お前ら! もっともっと燃え上がれ! アタシ達がバーニングフレアだァァァ!」
彼女はチームリーダーである火山日美子。真っ赤に染めた短めの髪をツンツンにし、パンクロック風に纏めたスタイルの、ちょっと特殊なノリの少女だ。
「ちょ、ちょっと日美子ちゃん! 椅子の上に立ったら危ないよ!」
「ウルセェ、マリー! あとアタシの事はボルケーノって呼べって言ったろうが!」
「私は窯元緋鞠だし、日美子ちゃんは日美子ちゃんでしょ〜!」
「ああもうっ! おい、エルも何かマリーに言ってやれ!」
「みんな~、ウチの名前が木山萌依留だからエルなんだよ~? ヘスティア共々よろしくね~!」
観客席に向かって手をひらひらさせるエルこと、萌依留。だいぶ、かなり、とても余裕をかましている彼女たちなのだが、その実力は相当なもの。今もこうしてふざけているように見えるが、その実、少しも油断はしていないのだった。
『さてさて、残る5チームの中から無事に予選を通過し、本戦へと進むことの出来るのは一体どのチームか?! それでは引き続き試合をお楽しみください~!』




