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「と、今頃は色んなチームが私達を狙って集まってきてるハズなのよ~」
ブロッサムメイツのブース内で真理がみんなに作戦内容を話す。森林エリアの中央部に陣取った彼女らは予定どおりという風に次の行動を展開していく。
「確かに、上手くいけばかなりの敵を戦わずして撃破できますね」
「でも大丈夫ですか? それだとアルテミスちゃんの弾薬は……」
「吹雪ちゃん、問題ないわ〜。ちゃんとペース配分は考えてあるから。アルテミスが」
「ハイっ! 私にお任せください!」
元気よく返事をするアルテミス。そんな彼女が身に付けている数々の武装が起動していく。ミサイルコンテナのハッチが規則正しく開き、肩のキャノン砲とガトリング砲がその動きを確かめるように左右に振れた。そしてメインウェポンであるオリオン・ボウをスナイプモードから弓状のボウモードに変形させる。
「それじゃあ真理センパイ、アルテミスちゃん! バーッとやっちゃって!」
「いくわよ〜アルテミス! ヴェルグちゃん、データお願い〜!」
「了解した。索敵データから敵ドールと思われる反応を抽出条件済み。マーキングして今も居場所は把握している」
「……データ受信しました! 叢雲さん、ヴェルグちゃんさん、ちょーっと伏せててくださいね!」
先程まで飛行していたフレイスヴェルグは上空から周囲の地形を探査すると同時に、その場にいた敵チームを把握していた。彼女に搭載されたセンサー群は高性能なものを揃えており、よほどの電子戦装備かステルス機能を有するドールでなければその鋭い眼からは逃れることは出来ない。
そして、得られたデータから敵の現在位置を割り出し、その座標データを最大限に発揮できるアルテミスへと渡す。
「いっきますよ~! 全弾発射です!」
「全部は使っちゃダメよ〜?!」
コンテナからは何条もの白煙が放たれ、マイクロミサイルが予め入力された地点目指して飛翔していく。空気を切り裂いて舞い飛ぶソレは、甲高い独特の音を奏でながら推進剤の反作用により前へ前へと邁進した。
それに追いつけ追い越せと言わんばかりに無数の銃弾が追従する。滑らかに回転する六連の銃身は次第に熱を帯び、秒間あたり数十発もの飛礫を吐き出す。アルテミスのセンサーと同期している照準は比較的近い場所にいる標的を次々と狙っていき、その首をせわしなく動かす。
また、反対の肩に取り付けられたキャノン砲は対ドール用榴弾を一定の間隔で撃ち続ける。大抵の大型砲は堅牢な装甲の貫徹を目的とする徹甲弾か、大小の破片を着弾地点にばら撒く榴弾が用意されている。榴弾の破片は分厚い装甲には防がれてしまうが、ドールの生身の部分や薄い装甲などには有効打となり得るのだ。
「何度見ても! この火力! おかしくない?!」
「通常のバトルでは! 過剰! でも今は頼もしい!」
叢雲とフレイスヴェルグは少し離れた所でアルテミスの一斉射を眺めている。あまりの轟音に普段より声を張らなければ立ちどころにかき消されてしまうほどだ。
「ヒャッホウ! 真理の敵は全て薙ぎ払いますよ!」
撃つ、撃つ、撃つ。ミサイルが、銃弾が、砲弾が。マスターである真理が見ている画面にはアルテミスの各種ステータスが表示されているが、そのうちの残弾数はかなりの勢いで減少していく。そしてフレイスヴェルグがマップにマーキングした敵反応も次々と消えていく。
「アルテミス〜、とどめよ〜!」
「大きな花火を打ち上げます! フルバースト!」
アーチェリーのような形状をしたオリオン・ボウにエネルギーの矢が番えられ、それを天に向けて射る。強力なビームを内包したソレはバトルフィールド高くで爆ぜ、アルテミスを中心とした一帯に小型の矢が降り注いでいった。
「わぁ、綺麗な花火……とか言ってるレベルじゃないわね、コレ」
「周囲の地形がまるごと破壊されている。ヴェルグちゃん的にもドン引き」
「ふぅ、これで周囲の敵チームは大方撃破できたんじゃないでしょうか?! 真理、褒めてください!」
「ありがとう~アルテミスはいい娘ね~!」
ぴょいぴょいと跳ねて喜びを全身で表現するアルテミス。しかして、周囲に広がっていた森林は見るも無残な姿に成り果てていた。
「ま、まぁ残った敵は私達が片付けるわ! 行くわよ、フレイスヴェルグ!」
「仕方ない。素早く処理する」
* * *
「くっ……?! おい、無事かストームツー、スリー?!」
『わ、私はなんとか耐えれたが……ストームツーが……』
チーム・デザートストームは恐るべき暴風とでもいうようなアルテミスの猛攻をどうにかしのぎ、互いの安否を通信で確認していた。が、ストームツーは撃破判定、ストームスリーも大ダメージを負っているというありさまだ。
「なんて火力だ……ここまで凄まじいのはなかなかいないぞ?!」
「大丈夫?! ステータス上では軽傷で済んだみたいだけど……!」
「ああ、マスター。私は大丈夫だ……しかしこのまま継戦は難しい。予選勝ち残りを狙うにはこのままゲリラ戦を主体に終盤まで戦力を温存した方が……チッ、見つかった!」
ストームワンは素早くその場から跳躍。その数瞬後、地面に小さな穴がいくつも空いた。
「敵ドール補足。ライブラリ検索……該当チームアリ。デザートストームとヴェルグちゃんは分析」
「ブツブツ喋ってぇッ!」
ストームワンは後方に跳躍しながら手にしたアサルトライフルをフレイスヴェルグに掃射する。ダダダ、と数発のライフル弾が飛来するがフレイスヴェルグはワンテンポ早く回避行動に移っていた。
「個々のドールは平均的な性能なものの、素晴らしいチームワークと的確な戦況分析で勝利を重ねる堅実なチーム。ここは無理に戦う必要がないとヴェルグちゃんは判断する。マスター、どうしよう?」
腰のスラスターを左右に吹かし、ひらひらと銃撃を躱していく。ストームワンも敵を撃破するというよりも、弾幕を張って近づけさせないようにしているのが伺える。
『ヴェルグ、一旦引いてちょうだい。デザートストームが相手なら単独で相手をするのは危険』
「おっけー把握。ああいう正統派なドールと真正面からぶつかるのは得策ではない。離脱する」
そう言うとフレイスヴェルグは両手のマシンピストルを何度か連射、その後コンテナから煙幕弾を放つ。あっという間にその場は真っ白な煙に包まれてしまい、ストームワンの視界はすっかり奪われてしまった。
「何も見えない……センサーにも反応しないとは、この一瞬で空へと逃げたのか」
アサルトライフルの銃口を視線の先に、素早く周囲を警戒するがどうも逃げられた事を察する。いや、見逃された、という方が正しいか。
「マスター、ここは早急に避難しよう。ストームスリーを回収するから、どこかいい隠れ場所を検討しておいてくれ」
「う、うん! ストームワン、気をつけてね!」
ストームワンは周囲を改めて見渡す。煙幕が晴れたそこは、ミサイルや砲撃の余波によって辺り一帯はまるで爆撃にでもあったかのような惨劇に変わっていた。そして彼女はふぅとため息を一つ漏らす。火力が自慢のチームは数あれど、単機でここまで特化させたドールも珍しい。
「無名の割には手強い相手だ……。いつかバトルロイヤルではなく、通常のチーム戦で戦ってみたいな」
誰に言うでもなく、ポツリと零れたセリフは風に流れていく。しかしすぐに本来の真面目な表情に戻り、大きなダメージを負っているはずのストームスリーを探しにいくのであった。




