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と、突然会場の照明が落ち、辺りは暗くなる。同時にあちこちのスピーカーからはBGMが流れ始め、天井からは吊り下げ式の巨大ディスプレイが降りてくる。
「みんなー! バトルドール・ガールズは好きか~?!?!」
可愛らしい声がスピーカーによって増幅される。そして観客らはそれに次々と答え、会場は一気に歓声へと包まれてしまった。
「私は大好きだァー! ハイ、どうもありがとうございました! 私はこの予選の司会進行を務めさせていただきます、公式マスコットキャラクターのバト子ちゃんでーす!」
巨大ディスプレイに映し出されたのはいかにもアニメ調な少女のキャラクター、バト子ちゃんだ。彼女はいわゆるヴァーチャルモデルであり、ドールと同じく自律思考するAIキャラだ。公式ホームページやSNSなどで人間同様の会話をしたり、こうしたイベントなどに参加し人気を確立している。
「このバトルロイヤルを勝ち抜き、見事本戦へと勝ち抜けるチームは2つのみ! 果たしてどのチームが勝ち残るのか?! どのドールが最後までこのバトルフィールドに立っていられるのか?! それではBDG公式主催、東日本大会予選の開催をここに宣言致します!」
派手なエフェクトとともに会場の照明が付き、観客の興奮は最高潮に達する。すると中央の巨大バトルフィールドが明滅しだし、今回の特設フィールドが姿を現しだした。
「え~、改めてルール確認ですっ! この予選大会は三人一組のチーム対抗でバトルロイヤル戦を行ってもらいます。ドールのHPがゼロになるかフィールド外へと出たら撃破判定され、チーム全員が撃破されれば失格となります。そうしてチームの数を減らしていき、最後の二チームになるまで戦いは続いていきます!」
そうしているうちに、バトルフィールドは巨大なツギハギの姿になっていく。あるところは草原が広がり、またあるところは都市が、また別のところは大きな湖が出現していた。
広大な面積と多様なチーム戦を盛り上げるため、予選大会のフィールドはこのようにいくつもの特性を持ったステージを組み合わせたものとなっている。機動力に自信のあるチームは遮蔽物の少ないステージで、市街戦が得意なチームは入り組んだステージというように、それぞれの戦い方を活かせるのだ。
「それからエリア制限があるのでマスターとドールはご注意を! バトル開始から三十分後、特定のエリアは立入禁止となり、そのエリアに留まっていると大きなスリップダメージを受けてしまいます。なのでマスターはエリア制限のお知らせを受けたらドールにその場を離れるように指示してくださいね~!」
エリア制限というルールは通常のバトルには存在しない。今回のような広大なフィールドでのバトルロイヤルでは戦闘が進むに連れドール同士の遭遇率が下がり、また各チームは不意打ちを避けるために消極的になりがちだ。それを防ぐため、一定時間ごとにランダムで立ち入れるエリアを制限し移動を促すことで戦闘を活発化させるのだ。熟練者ともなるとただ敵ドールを倒すだけでなく、そういった先々の展開を予想した立ち回りにも秀でてくるという。
「バトルロイヤルは長期戦になりやすいですね、しかしこのフィールドには補給や回復ポイントなどは一切ありません! 自前の予備コストに指定しておいた分の弾薬やエネルギーパックしか使えないので無駄弾は極力しないようにしましょー! ……さて、そろそろフィールドのセッティングも完了しそうです。それでは各チームはドールをエントリーデッキにセットした後、自陣ブースへと移ってくださーい!」
バトルフィールドから少し離れた場所にはゲームセンターに置いてあるような大型筐体が設置されている。広大なフィールドに大人数で同時に戦うため、今回はこのチーム別に用意されたブースからドールへと指示を出すのだ。
バト子ちゃんの指示に従い、各チームはそれぞれ自分のドールをフィールドのエントリーデッキへとセットする。ブロッサムメイツもそれに倣い、叢雲たちをセット完了後にブースへと入っていく。中は三人分の椅子とディスプレイが備え付けられていた。
「わ、ヘッドセットもありますよ! なんか本格的だなぁー!」
「さ、吹雪ちゃん座りましょ〜」
「……すごい、ドールの一人称視点や三人称視点に切り替えられますよ、このディスプレイ」
美空は早速機器を弄っているらしく、様々な機能を試している。この視点変更機能もその一つだ。
バトルフィールドのあらゆる箇所に設置された各種センサーとフィールド上空を周回しているカメラドローンが収集した映像データをリアルタイムで処理し、ゲーム画面のようなドールの三人称視点を擬似的に再現できるディスプレイは、今回のように離れた場所からの指示を出すのにうってつけだ。また、ドール自身のアイ・カメラからの視覚情報をそのまま映し出すこともでき、他にもフィールド全体を俯瞰することも出来る。その時の状況に応じて切り替えられるというわけだ。
「叢雲ちゃん、聞こえる? そっちの準備はいい?」
「ええ、バッチリ聞こえるわ。早く始まらないかしら?」
「こちらヴェルグちゃん。マスターどうぞ」
「こちら美空。ヴェルグ、初手は作戦どおりにお願いね」
「アルテミス~? 弾薬は限られてるから気をつけてね~?」
「了解です真理! 全弾命中させれば問題ありません!」
吹雪と叢雲、美空とフレイスヴェルグ、真理とアルテミスは互いに頷く。他のチームも準備が完了したようで、フィールド上空のディスプレイはバトル開始のカウントダウンを始めている。今か今かと焦れる気持ちと、これから始まる戦いに高揚する精神、そしてその先にある本戦出場への渇望が湧き上がる。それは全てのチーム、全てのマスターとドールがその胸に抱くものだ。
『それではカウントダウンを始めます! 10、9、8……』
バト子ちゃんのカウントダウンが開始され、会場は一気に静まり返る。まさに嵐の前の静けさ、というやつだ。
マスターとドールは徐々に迫りくるその時をじっと待つ。
『6、5、4……』
スタートダッシュを決めようとする者、冷静に戦況を確認しようとする者、はたまた漁夫の利を得ようと画策する者。
戦い方は何でもいい。バトルフィールドに最後まで立っていれば。
『2、1……バトルドール・レディゴー!』
そして予選大会の始まりが告げられた。




