10ー2
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「わ、わ、見てみんな! なんか凄いチームがいるよ! 海賊?!」
「……! あれはチーム・ブラッドパイレーツです、吹雪さん!」
「ぶ、ブラッドパイレーツ?!」
「聞いたことがあるわ〜! その名を表すような荒々しいバトルが得意なチームよ〜!」
いかにも女海賊という出で立ちの三人のマスター。彼女らのドールも、激しい気性を感じさせる海賊をモチーフにした武装を纏っている。
「カトラスナイフを操るメアリ、ピストル使いのアン、そしてリーダーのアルビダが持つ巨大な大砲はどんな敵も血祭りにあげると言われています」
「ちょ、ちょっと恐いチームだね……あっ、目が合っちゃった!」
「向こうにはチーム・バーニングがいるわ〜! あの子達は確か二代目ね〜」
真理が指差す方向にはこれまた剣呑な雰囲気を纏ったチームが。
「チーム・バーニングはメンバー全員が火炎や爆発物の使い手です。その圧倒的な火力は並大抵のドールでは耐えられず消し炭になってしまうとか……!」
「な、なんだかとっても熱そうなチームだね……!」
「……そして、あのチームがこの予選で一番の強敵かもね〜?」
吹雪と美空はどのチームの事だろうと辺りを見渡すが、見覚えのある三人を見つけ納得する。
「チーム・ロイヤルメイドナイツ! 麗華さんたちだ!」
遠くからでもその綺羅びやかなオーラがひしひしと伝わってくる三人組。こころなしか、周囲のチームもそのオーラに当てられ微妙に距離を取っている気がする。
「あの人たち、相変わらず空気がゴージャスってますね……」
「あはは……でも、みんな強そう! これはみなぎってきました!」
「そうね〜、やっぱり有名なチームばかりで少し気後れしちゃうわ〜」
「え……もしかして、ブッキー?」
「ふぁ?」
突然昔のあだ名を呼ばれた吹雪。その呼び方をするのは彼女の知る限り、一人しかいないはず。
「え、え?! シューちゃんなの?!」
「久しぶりだね、ブッキー。もう何年ぶりかしら? というより、いつこっちに戻ってきたの?」
吹雪が振り向くとそこには彼女と同い年くらいの少女がいた。どうやら吹雪とは知り合いのようだが、どうも学校のクラスメイトではないようだ。二人は偶然の再会だからか、美空と真理のことを忘れて近況報告しだしてしまう。
「あの、吹雪さん。そちらの方は?」
「あ、ごめんごめん! えっとね、こちらはシューちゃん……じゃなくて、秋華ちゃん! 小学校の時の同級生なんだ!」
シューちゃんと吹雪が呼ぶ少女。黒い髪を肩まで伸ばし、どこか凛々しい顔立ち。背は吹雪より少し高く、全体的に大人びた雰囲気を醸し出していた。
「はじめまして、八雲秋華といいます。お二人は吹雪のチームの……?」
「こちらこそよろしくね~! 私は愛宕真理、でこっちが」
「葛城美空です。私達はチーム・ブロッサムメイツのメンバーです。ここにいるという事は秋華さんも?」
「あ、そうです。私も予選大会に……って、もしかしてブッキーもBDGやってたの? 知らなかったわ。いつから始めたのよ」
「うん、それがね、恥ずかしながら4月の入学式の日にね~!」
「へぇ、つい最近じゃないの。それで大会出場とはなかなか豪胆ね。まぁでも、ブッキーらしいわ。ところで、あなたのドールはその子?」
秋華の視線は叢雲へと注がれる。それに気付いた叢雲はすっくと立ち上がり腕を組んだ。
「あんた、コイツの昔馴染らしいわね。だからといって手加減なんか出来ないから覚悟しておきなさい?」
「……へぇ、なかなか言うドールだね? 仕草も滑らかで……これはバトルが楽しみだわ。まぁ私も手加減しないから、負けてもブッキー泣かないでよね?」
「もう、昔みたいに泣き虫じゃないよ! でもシューちゃんのチームと戦うのは楽しみ!」
「ふふん? 私のチームは強いよ? なんてったって、優勝を狙ってるんだから」
「なら、改めて私達はライバルだね! 私達も優勝目指して頑張ってきたんだから!」
何故か秋華はそれまでとうって変わって険しい顔になる。
「ちょっと……それ本気で言ってる?」
「え? ……シューちゃん?」
「他のメンバーは知らないけれど、ブッキーはBDGを始めてまだ二ヶ月ちょっとしか経ってないんでしょ? 確かにそのドールは強そうだけれど……だからといって簡単に優勝を口にしないでくれる?」
「わ、私は……!」
「ちょっと! 何なのよあんた! 黙って聞いてりゃ好き放題に言ってくれちゃって!」
秋華の物言いにカチンときた叢雲が威勢よく噛み付く。だが、秋華はそれを何ともない風に受け流すだけだ。
「私は当然の事を言っているつもり。少なくとも、ここにいる他のチームも同じ事を言うはず。それだけ皆、沢山の時間を費やして強さに磨きを掛けてきたんだもの。それがたった二ヶ月のブッキーに言われたら、馬鹿にされたと感じるのも無理はないよ」
「ちょっとごめんなさいね〜? チームの私が言うのもなんだけど……」
「……真理センパイ、大丈夫です」
見かねた真理がフォローに入ろうとするが、それを吹雪は手で制する。その表情はこれまでの言われっぱなしだった彼女とは違う、己の信念を貫き通す覚悟を持った顔だ。
「シューちゃん、確かに私はまだまだ初心者でひよっこだよ。でもね、叢雲ちゃんはとっても強いし、真理センパイと美空はもの凄く頼りになる仲間なんだ。それに負けないよう、私は頑張って特訓してきたんだ」
「…………」
「そりゃあね、私も無茶な事を言っている自覚はあるよ? それでも私にはこの大会で優勝しなくちゃいけない理由があるんだよ」
「まぁいいけどね。口ではなんとでも言えるし……その理由が何かは私は知らないけれど、ブッキーが頑張り屋なのはあの頃と変わらないみたい……」
秋華はため息を一つ吐く。そして再び吹雪へと向き直る。
「いいよ。元から手加減するつもりは無いけれど、この予選大会でブッキーの強さを試してあげる」
「フン、そんな大仰な事を言っちゃって……あんたが負けたときの言い訳を考えておきなさいな!」
どちらかというと叢雲の方が負け惜しみに聞こえるセリフを流しつつ秋華はその場を後にする。
「……ま、あんなの気にしなくていいわ。あいつと、あいつのドールは私がコテンパンに叩きのめしてやるんだから」
「……うん、ありがとうね、叢雲ちゃん」
「フン……」




