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「真理さん! 少しよろしくて?」
真理の肩がビクリと震える。麗華がバトルフィールドのこちらへ、自身のドールを伴ってやって来た。
「……なんですか? 鳳凰院さん」
「ふふふ……やはり貴女とアルテミスは私が見込んだ通り強かったですわ。あの頃と同じ……いえ、もっと強くなっていますわ」
「え……あ、ありがとう……ございます。あの、私が勝ったことで怒ってないん……ですか~?」
「ワタクシが怒る? それはまた、どうしてですの?」
「あの頃……私に何度もバトルを申し込んできたじゃありませんか~? あれは私が勝ち越しているから……」
「オ、オ~ホッホッホッ! な、何の事かサッパリですわ~!」
「麗華お嬢様?」
「ヒィ?!」
手のひらに乗ったグローリアが麗華の方をジロリと睨み上げる。途端、麗華の目は泳ぎだし明らかに動揺しだしてしまった。
「仕方ありません。お嬢様に代わって不肖、このグローリアが説明いたします。真理様が中等部に在籍してらっしゃった頃、確かにお嬢様と私は真理様とアルテミス様に何度も何度も、それこそストーカーまがいの事をしつつバトルを挑んで参りました。その事に関しては誠に申し訳ございませんでした」
グローリアは深々とお辞儀をして謝意を示す。
「ですが、それもこれも麗華お嬢様がきちんと自身の考えを真理様にお話にならないからこそ……真理様の実力を早くに見抜いたお嬢様は、繰り返しバトルをすることで貴女とアルテミス様を成長させようとお考えでしたのです」
「え……?!」
「あ~……やっぱりそうだったんですね……」
「ちょっと、アルテミス! あなた気付いていたの~?!」
「あ、あははは……いや、何となくですよ? 真理?」
「うぅ……その節は本当に悪かったですわ、真理さん。ワタクシがしつこかったばかりに貴女は庶民の通うみすぼらしい学校に移ってしまって……」
「お嬢様?」
「ヒィ?! あ、いえ、様々な身分の者が通う学校へ移ってしまって……ワタクシ、今回の練習試合のお話が来た時に貴女がまだBDGを続けていると聞いて安心しましたの。ワタクシのせいで止めていないか、バトルが嫌になっていないかと……」
「……なんなの~?! それじゃあ私の考え過ぎだったってこと~?!」
「ま、端的に言ってそういうことになるデスね。愛宕は普段、ぽややんとしている癖に妙な所で気を使うデス」
「そんなぁ~!」
先生に言われて余計に気が抜けたのか、その場にペタンと座り込んでしまう真理。そこへ麗華が手を差し出す。
「真理さん。先生さんから少しはお話聞きましたわ。あなた達は学校の為に頑張っているのですってね? そのために少しでも鍛え上げたいと。その、ワタクシ達でよければ……」
「……分かりました~。だけど覚悟してくださいね? 今度はそっちが嫌になるほどバトルをしてもらうんですから~! ね、麗華さん?」
その手をしっかりと握り、立ち上がる真理。
「あらあら、これは大変ですわね? 麗華お嬢様?」
「真理センパイ! 麗華さん! もう一度、もう一度バトルしましょう!」
「私はグローリアさんのバックパック……あの四脚への変形パターン、凄く興味があって……少し見させてもらってもいいですか?」
そこへ吹雪と美空も加わり、一気に賑やかになっていく。
「皆様、その前にそろそろ昼食のお時間となります」
「皆様、こちらへどうぞ。僭越ながらランチを用意しております」
眞紀子と麻妃代はテキパキと昼食の用意をし始め、その美味しそうな匂いに釣られた先生は用意された椅子に早速ちょこんと座っていた。
「さあさあ皆、早く席に着くデス! 腹が減ってはバトルが出来ぬと言うデスし、ここはそちらさんの厚意に甘えるデス! ドールの面々も今のうちに充電しておくデスよ!」
「グローリアさん、今日はありがとうございました」
「いえ……こちらこそ数々の非礼の件、申し訳ございませんでした、アルテミス様。過去の事とはいえ、あなたと真理様には不愉快な思いをさせてしまった事、誠に反省しております」
「あ、そんな……謝らないでください! 私も……薄々気付いていたのにそれを真理に伝えてませんでしたし」
「そういえば……どうしてその事を真理様に仰らなかったのですか? そうすれば……」
「そうですね……私は真理のつらい顔を見るのが嫌だったんです……本当の事を言えれば良かったのに、真理の思い詰めた顔を見ると全然言いだせなくて……私はその事から顔を背けてたんですね」
当時の事を振り返り、自責の念で表情が曇るアルテミス。だが、そんな彼女をグローリアはニッコリとほほ笑んで励ます。
「それは違いますよ、アルテミス様。あなたは、あなたのマスターの事を最大限に思いやっただけの事です。それに、あの頃の私共の暴走……少しお恥ずかしいですが、当時の真理様では私達の考えを素直に聞き入れてはくれなかったでしょう。人間同士の確執は、ときに時間を置くことで解決するものだと聞いたことがあります」
「そう……なんでしょうかね」
「そうですとも。アルテミス様の選択は結果的に正しかったとこのグローリアは思いますわ。結果良ければ全て良し、との言葉もあります」
「あはは……そうですね、そう思うようにします」
アルテミスが向こうを見やると、真理は楽しそうに食事をしながら麗華とバトルについての議論を交わしている。そう、アルテミスの記憶領域に保存されている、二人が出会った頃のような光景。
「グローリア様、アルテミス様。我々も充電しておきましょう」
「グローリア様、アルテミス様。午後からは引き続きバトルを行いますので」
「分かったわ、コロッサス、オーシャン。さぁ、アルテミス様? こちらへどうぞ」
恭しい仕草でグローリアは無線充電器が置いてある一角へとエスコートする。そちらを見れば既に叢雲とフレイスヴェルグがやたら豪華なソファ型の充電器でくつろいでいた。
「しっかり充電して、この後のバトルも私達が勝ちますよ!」
「あら、残念ながら次こそは我々ロイヤルメイドナイツが勝たせて貰いますわ?」
あえて不敵な笑みを浮かべるグローリア。そしてそれに屈託のない笑顔で返すアルテミス。
真理たち、ブロッサムメイツはまた一つ前進していく。目標である大会優勝は決して簡単な事ではないが、それでも彼女らは進んでいく。かつては無謀と思われた挑戦もいつしか現実味を帯び、ゆっくりと形を成していく。
まずは六月の予選大会。ここが最初の壁であり、ブロッサムメイツの真価が問われることになる戦いでもある。
今回登場した鳳凰院麗華とグローリアは来賀玲さんの原案でお送り致しました。来賀さんはなろうやノベプラで活動しているので、ぜひとも作品をチェックしてみてください。
ノベプラ
https://novelup.plus/user/669888032/story
なろう
https://mypage.syosetu.com/1212311/




