表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/129

8ー5

8ー5


「十種雲形! 巻雲(けんうん)!」


 天之羽々斬から放出された青白い斬撃は大地を切り裂き、その向こうにいるオーシャンを追い詰める。


「くぅううっ!」


「どうしたの?! あのグローリアってやつはこれ位、真正面から立ち向かうわよ!」


 オーシャンは手にした細身の片手剣を振るい、どうにか斬撃状のビームを切り裂く事に成功する。だが、次の瞬間にはその背後に叢雲が迫っていた。


「やあぁぁッ!」


 天之羽々斬を袈裟斬りに振り下ろし、それを地面に跳んでなんとか回避したオーシャン。本来、彼女の剣術は高いレベルでかなりの戦闘経験を積んでいると思われる。その証拠に叢雲のほんの僅かな隙を狙い、細身の剣を突きだすオーシャン。その恐るべき速度は並のドールでは反応すら出来ずに貫かれてしまうだろう。


「この私と張り合うには十年早かったようね!」


 そう、それが()のドールであったならば。


 重量のある大剣をなんとも軽やかに操り、叢雲はオーシャンの剣を弾き飛ばす。空中でクルクルと回転し、そして地面へと突き刺さった。


「わ、私が負けるわけには……!」


 オーシャンは苦し紛れにドリルツインテの片方を上げ、エネルギーを集中させる。ダメージを負った叢雲を倒すには十分過ぎるビーム砲。しかし、この至近距離ではその余波でオーシャンも大ダメージ……いや、自滅する可能性すらあった。


(さか)しいッ! 十種雲形・層雲(そううん)!」


 叢雲が天之羽々斬を身体の前に掲げると、青白い円形のフィールドが展開していく。それは叢雲を覆い隠すほどの直径となり、オーシャンの放ったビームを防いでいく。


 十種雲形・層雲とは強力なエネルギーフィールドを張ることでバリアの役目を果たす。その代わりエネルギー消費が大きいという欠点はあるが、大抵の攻撃は完璧に相殺するか、あるいは減衰させてしまうほどだ。


 すっかり天之羽々斬に蓄積されていたエネルギーを使い果たすと同時にオーシャンのビームも途切れる。そして。


「アンタの剣速は確かに速いわ。でもね、つい最近アンタより()()()()()()()を相手に勝ってるの。私」


 一閃。


 天之羽々斬は音もなくオーシャンの身体に強烈な斬撃を与え、即座にバトルフィールドに搭載されたコンピュータはダメージ判定を行う。


「そん……な、申し訳……ありません……お嬢様」


 オーシャンは撃破判定となり、一時的に身体の制御を失ってしまった。


「やったね叢雲ちゃん! 流石は私のドールだよっ!」


「誰がアンタのものよ。ま、褒める分にはいくらでも構わないわ」






 * * *





「……驚きました。コロッサスとオーシャンが敗れるなんて……あの二人は私と麗華お嬢様で鍛えていたつもりなのですが」


「叢雲さんもヴェルグちゃんさんも、優秀なドールです!」


 狙撃銃モードのオリオン・ボウから細いレーザーのようなビームが発射される。それをグローリアは長細い盾で受け止めた。そして一気に突進し、その機動力を以ってアルテミスを吹き飛ばした。


 アルテミスとグローリア。互いの装甲は既にボロボロとなっており、武装も激しく損耗している。


 アルテミスはミサイルを全弾撃ち尽くし、ガトリングとキャノン砲の弾薬はあと僅か。もちろん予備パーツに登録してある弾薬は全て使い果たした。オリオン・ボウはまだエネルギーが残っているが、無駄遣いは出来ない。


 分厚い装甲は何度もグローリアの突進を受けてあちこちを穿たれ、いくつかは衝撃で吹き飛んでしまっている。しかし持ち前の重装甲のお陰で大したダメージは負っていない。




 グローリアも武装と言えるのはあの長大なチャージランスのみで、それもかなり傷んでしまっている。恐らくコストの関係で飛び道具の類は装備していないようで、この様子では予備パーツ枠のコストも全て使っているのだろう。


 バックパックが変形した馬を模した下半身パーツはあちこちに銃弾やミサイルの破片で穴が開いてしまっている。機動力はいくらか落ちたものの、まだ激しい突進を繰り出せる程度には無事だ。そして精緻な装飾が施された白銀の鎧甲冑によってグローリア本体のダメージは少ない。


 両者、共に五分と五分。


「あの頃より……格段に強くなっている?!」


「それはもちろんですわ。打倒アルテミス様、打倒真理様を標榜しこれまで研鑽を積んで参りましたもの。その成果が発揮できて光栄です」


「それは……どうも!」


 アルテミスは手にしたオリオン・ボウをさらに撃ち込み、そしてグローリアはそれを防ぎ回避する。グローリアはランスで強烈な一撃を放つが、アルテミスの装甲はそれを防ぎきる。先程からこのような一進一退の攻防が続いていた。


 そして、その均衡が崩れたのは突然だった。


「くっ……?!」


 オリオン・ボウのビームを受け続けたグローリアの盾がついに破壊されたのだ。本来は狙撃用に調整された高出力ビームを何度も受け続けたためだ。防御手段を失ったグローリアは焦りからか、思わず表情を崩してしまう。


「グローリア!」


「チャンスよ、アルテミス〜!」


 オリオン・ボウを変形させ、狙撃銃(スナイプ)モードから(ボウ)モードにするアルテミス。エネルギーを凝集した矢を引き絞り、グローリアの足元へと撃ち込んだ。


「その攻撃は……見切っています!」


 強烈なエネルギーを秘めたビームアローは地面に着弾後、大きな爆発を起こしてしまう。その余波でグローリアの脚部パーツは全壊するが、その一瞬前に彼女は上空へと跳躍して脱出していた。


 そして空中でクルリと一回転すると、右手に残ったチャージランスを勢いよく突きだす。落下の勢いを味方につけた一撃でアルテミスへの逆転の手とするつもりなのだ。


「アルテミス様、お覚悟!」


「負けるもんかぁー!」


 エネルギー切れしたオリオン・ボウをその場に投げ、向かってくる穂先に対しアルテミスは一歩も退かなかった。


(逃げない! 私も、真理も、これ以上は逃げない!)


(アルテミス……! あなたの装甲の厚さは私が一番知っているわ~! だから、勝って……!)


 金属と金属が衝突する激しい音がバトルフィールド全域に響き渡る。あまりの衝撃にフィールドの周囲にいたマスターらも、ビリビリとした空気の震えを感じた。


「真理センパイ!」


「真理先輩……!」


 吹雪と美空が心配そうに真理を見つめる。


「お嬢様!」


「麗華お嬢様!」


 眞紀子と麻妃代は自らの主人とそのドールの勝利を信じて疑わない。




 ビシリ、と。金属が破断したような嫌な音がした。


「……私の装甲は……! 真理の特別製ですっ!」


 アルテミスの胸部装甲、その中央に突き刺さったランスの穂先が砕け散る。そのまま飛び込んでくるグローリア目掛けてアルテミスは思い切り拳で殴り付けた。





『バトルフィニッシュ! ウィナー:チーム・ブロッサムメイツ!』


 電子音のブザーと共に、吹雪らの目の前に「YOU WIN!」の表示が光る。そしてリザルト画面が次々とポップアップウィンドウに示されていくなか、フィールドの立体映像が消えていく。


「やりましたね、真理センパイ!」


「みんな、お疲れ様。今回のMVPはアルテミスさんですね」


「オマエら! よくやったデス! チーム・ブロッサムメイツの初試合は白星デス! 今日はお祝いデス! 誰か祝杯開けろデス!」


「先生! 私達はまだ高校生(未成年)ですよ!」


 吹雪と美空は真理の下へ駆けよる。それに続いて先生もトテトテやって来るが、その真理はどこか放心したような表情でぼんやりとフィールドの方を見ていた。


「真理! 真理! やりましたよ、勝ちましたよ!」


「え、ええ……。そうね、アルテミスもよく頑張ったわね~」



 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ