8ー3
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「最初のうちはね、バトルドール・ガールズ部の先輩と後輩でね、楽しくバトルしてたのよ。でも、私とアルテミスの勝率が増えてくると麗……鳳凰院さんから勝負の申し込みが、その、しつこくなっちゃって……」
真理はその原因が、学年が下である自分が勝ち続けることに対して麗華が苛立ってしまったのではないかと推測したらしい。それからはなるべく彼女とのバトルを断り続け、次第に部活動にも顔を出しにくくなっていったのだという。
「鳳凰院さんはああいう人だから、私に勝つことへ拘っていたみたいなの。それで学園にいる間はずっと私に付き纏って勝負しろってずっと……」
そんな学校生活に耐えられず、とうとう真理は高校は別の学校にすることに決めたのだという。
「そんな……真理さんに落ち度は何一つないじゃないですか!」
「あの、先輩はわざと負けてあげようとは思わなかったんですか? それで解決しそうな気も……」
「そうね、美空ちゃんの言うとおり手を抜こうとした事もあったわ。でも、鳳凰院さんはそれを見抜いちゃうのよね。真面目に、本気で戦わないと許さないって……」
「だからといって、本気で戦えば麗華さんを余計に怒らせちゃう……」
「そう、当時の私はそういう事に疲れちゃったのよ。幸い、高校からはなんとか立ち直れたし、桜ヶ丘のBDG部は良い先輩ばっかりだったからバトルドール・ガールズは嫌いにならなかったのよ」
そこまで言って、真理はため息を一つ吐く。
「吹雪ちゃん、美空ちゃん、ごめんね。今なら鳳凰院さんと戦っても大丈夫だと思ってたんだけど、私はやっぱりあの頃のことが忘れられないみたい……」
「真理……」
心配そうに真理を見上げるアルテミス。しかし、叢雲はそんな二人を見て何やら腹立たしげに口を開いた。
「あぁーもうっ! 聞いてればこっちが苛ついてくるわね! アルテミスのマスター! アンタたちはただ敵から逃げ回ってるだけじゃない!」
「ちょっと叢雲ちゃん?!」
「強い方が勝つ! 当たり前の事でしょ?! それを変に遠慮しちゃって、それでアンタは良いと思ってるの?!」
「……何が言いたいのかしら、叢雲ちゃんは?」
「あの鳳凰院麗華って女、私も気に入らないけれど……少なくともバトルに関してはここにいる誰よりも真面目に取り組んでいると思うわ。じゃないとこの私を一撃でここまで追い詰めるなんてありえないもの」
「……それは……」
「あのマスターとドールの信頼は恐らく本物だし、バトルに懸ける熱意は本物よ。それをアンタ達は相手に恨まれるだとか怒らせたくないっていう事ばかり気にして……情けないったらありゃあしないわ!」
「叢雲さん! それ以上真理を侮辱するのはこのアルテミスが許しません!」
叢雲と真理の間に立つアルテミス。しかし叢雲はそんな彼女を真っ直ぐな視線で射抜く。
「アルテミス、アンタはそれでいいの? 自分のマスターが勝負から逃げ続けるような奴で。少なくとも、私はまっぴら御免よ。その点で言えば私の仮マスターや鳳凰院麗華の方がよっぽどマシね」
「叢雲さん……!」
「待って、アルテミス」
思わず手にしたオリオン・ボウを叢雲に突きつけようとしたアルテミスを、真理は静かに止める。
「叢雲ちゃんの言いたい事は解るつもり。でもこれは私の問題よ、それ以上は……」
「それ以上は口を出さないで、かしら? ふざけんじゃないわよ!」
叢雲の一喝に、真理は少し肩を震わせてしまう。
「何が私の問題よ、今のこの状況を見てみなさいな! 今は私達チーム全体の問題になってるでしょ?!」
「……!」
「アンタ個人の事はどうだっていいわよ! こんな所で躓いてたら、大会優勝なんて夢のまた夢だわ! いい加減に目を覚ましなさいな!」
言いたい事は全て吐き出したのか、満足したような表情でその場に座り込む叢雲。吹雪やアルテミスはどう真理に声を掛けていいのか分からず、困惑しきっている。
「……そうね、叢雲ちゃんの言うとおり、ね。練習試合だとしても……いえ、だからこそ真剣に取り組まないと駄目よね」
真理はそれまでの迷いを吹っ切るかのように、自分に言い聞かせるように呟く。
「真理センパイ……」
「ごめんね、吹雪ちゃん、美空ちゃん。叢雲ちゃんに、ヴェルグちゃんも。それからアルテミス……あなたには一番心配を掛けちゃったわね」
「そんな、私は真理のドールなんだから気にしないでください!」
「私達はチーム・ブロッサムメイツ……私達の目標は東日本大会の優勝……そして学校の廃校阻止。こんな所で止まってられないわね〜!」
いつものにっこり笑顔を取り戻した真理。そのおっとりした雰囲気の中にも確固たる信念を宿し、その眼差しは力強く輝いていた。
「いつもの真理センパイに戻った! やったね!」
「ちょっとアンタ、そんなにはしゃがないの。こっちが不利なのは変わらないのよ?」
叢雲の指摘も最もであり、現状ではグローリアの突進攻撃をどうにかしなければブロッサムメイツに勝てる見込みは無い。
「……そこで私とヴェルグが作戦を立てました。概要を説明します」
「マスターとヴェルグちゃんは頑張った。これもチームの為。えっへん」
先程から無言だった二人は何をしていたのかと思えば、周囲の索敵及び得られた敵の情報から打開策を練っていたらしい。
「まず、グローリアさんへの対処ですが…………」
* * *
「あら、そちらから出てきてくれるとは……」
民家が立ち並ぶ集落。その中央付近でグローリアとアルテミスが対峙する。
「他のお客様方はどちらへ行かれたのでしょう? いくら私でもそうそう見逃す筈は無いのですが」
「……決着をつけましょう、グローリアさん。あなたもそれがお望みなんですよね?」
ニヤリと微笑んだグローリアは一気に駆け出し、アルテミスへと間合いを詰める。盾を前面に構えつつ、チャージランスを突きだすことで攻撃と防御を両立させている。
対するアルテミスは全身のミサイルコンテナのハッチを開き、一斉に発射させる。無数のミサイルがグローリアだけでなく周囲の民家を巻き込みながら爆発していった。
「相変わらず凄まじい火力です! 何度、その圧倒的な攻撃の前に沈んだか覚えていませんわ!」
「私の記憶では75勝46敗、15引き分けです! グローリアさん!」
「いいえ、私の47勝74敗15引き分けです!」
「しっかりと覚えてるんじゃないですか!」
次々とミサイルが着弾していき、さしものグローリアはその速度を緩めてしまう。そしてそれを狙っていたと言わんばかりにアルテミスは叫んだ。
「ヴェルグちゃんさん! 今です!」
突如、崩れかけの民家から何かが上空へと舞い上がる。それは漆黒の翼を開いたフレイスヴェルグ……と叢雲だった。




