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6-4

6-4


『バトルフィニッシュ! ウィナー:叢雲!』


 合成音声が華々しく勝ち名乗りを挙げると同時に、いつも通りのリザルト画面を表示し始めた。


「……勝った?」


「ええ、私の勝ちよ。それにしてもやるじゃない、あんな作戦を考え付くなんて」


「叢雲ちゃん……」


「ま、少しは見直してあげるわ? 感謝なさい……って、ちょっ!」


「うわあぁぁん! 勝った! 勝ったよぉぉ!」


「はな、離れなさい! ちょっと! 苦しいわよ!」


 感極まった吹雪は映像が消えて真っ白になりつつあるバトルフィールドへと身体を乗り出して叢雲へと抱きつく。そんな吹雪の顔を手にした天之羽々斬で叩く叢雲だが、微妙に嫌そうではないのは気のせいか。


「……ふぅ、負けちゃったわね。皐月」


「うむ、完敗だ」


 バトルフィールドの端に腰かける直子と、中央付近で大の字に寝転んでいる皐月。二人は負けたにも関わらず、どこか清々しい表情だった。


「お疲れ様、会長~。どうでした、うちのルーキーは~?」


「愛宕さん……ええ、私達が思ってたよりも彼女はずっと強かったわ。これなら本当に大会優勝できるのかもね」


「できるのかも、じゃなくてするんです~! 私達は本気で優勝目指してるんですからね~?」


「はいはい、分かってるわよ。まぁ、なんにしてもこれで先生の()使()()は完了、成果は上々ね」


「あら? どういう事かしら~?」


「ああ、ごめんなさい。こっちの話よ」


 訝しむ真理を余所に、直子はもう一度吹雪と叢雲の方を見やる。かなり本気で戦ったつもりだが、こうも彼女らの意志の強さを見せられては何も言う事はない。


「あ、あの生徒会長!」


「……何かしら、神代さん」


 手のひらに叢雲をちょこんと乗せた吹雪が直子の下へと駆けてくる。その顔は何かを言いたげだが、なかなかどう話していいのか分からないといった表情だ。


「えっと、あの……私はまだまだ初心者で素人です。叢雲ちゃんは確かに強いけど、マスターである私は足を引っ張るばかりで……えと、その」


「ええ、あなたの強い意志は確かめさせてもらったわ。そこで私から提案があるのだけれど、いいかしら?」


「て、提案……?」


「簡単な話よ。私達があなたと叢雲さんに近接戦闘の訓練をつけてあげるわ。愛宕さんも実力は折り紙付きだけど、接近戦なら私達の方が上よ。いいわよね、皐月?」


「うむ、拙者も望むところだ」


「えぇ!?」


「何よ、上から目線で気にくわないわね」


「ちょ、ちょっと叢雲ちゃん!」


「私も生徒会や受験勉強があるからいつもって訳にはいかないけれど、週一か二くらいなら時間が取れるわ。……ふふ、期待してるわ」


「が……頑張りましゅ!」


「あんた、大事な所で噛むんじゃないわよ……」


「あの、生徒会長さん」


「あら、あなたは……」


「一年の葛城美空です。もしよろしければ私達にも近接戦闘のノウハウを教えていただけませんか?」


「ヴェルグちゃんです。以後よろしく」


 恭しい態度で美空は手のひらに乗せたフレイスヴェルグと一緒にお辞儀をする。


「ふふ、良いわ。この際、一人だろうが二人だろうが、三人だろうが構わないわ。いくらでも掛かってきなさい」


「あの~? それってもしかして私とアルテミスも含まれてません~?」


「何言ってるの、愛宕さん。むしろあなたに一番時間を割かないといけないかもしれないのよ? そもそもアルテミスは射撃戦に特化させ過ぎて……」


「あ~! 聞こえない、何も聞こえないわ~! アルテミスのカスタマイズは今のままでいいの~!」


 両手で耳を塞いでイヤイヤと逃げ出す真理。それを見て思わず笑みがこぼれる吹雪たち。


「叢雲ちゃん、私、諦めないからね。これからもよろしく!」


「分かってるのなら良いわ。それに今度また弱音を吐いたら、お尻を叩いて今の言葉を思い出させるんだから」


「うん、お願い!」


「ふん……せいぜい頑張りなさいよ」


 改めて吹雪は叢雲の前に人差し指を向ける。その意図を察した叢雲は右手でしっかりと()()を交わす。


 生徒会長という心強い後ろ盾を得た吹雪たち。少しずつ、周囲の理解も得て前に進むBDG部。




 すっかり桜の花びらが散り、青々とした若葉が広がる木々。部室の外はすっかり夕焼けの赤に染まっていた。





 * * *




「では、そのようにお願いするデス」


「ええ、よろしくてよ。しかし練習試合といえど、ワタクシは一切の手抜きをしないつもりですので悪しからず」


「もちろんデス。それどころかボコボコのバキバキにするくらいの勢いで戦ってほしいデスよ」


「は、はぁ……」


 電話越しの会話。先生が話している相手とは誰なのか。そして練習試合とはどういう事なのだろうか。




「それじゃあ後日デス……ふぅ、色々と根回しも大変デス。おっとそろそろ生徒会長と吹雪のバトルが終わった頃デスかね? 本当に()()()は大変デスよ……」


 ガチャリと受話器を置いた先生は、小さくシンプルなデザインの腕時計で時間を確認し疲労のため息を吐く。


「さて、後はあいつらの戦闘データを纏めて統計化、それから説明しやすいように可視化しなくちゃならんデスね。ハァー! 肩が凝ってくるデス!」


 職員室の一角、先生に割り当てられた事務机で先生はゴリゴリと両肩を回す。傍目には明日の授業の用意でもしているかのようだが、実際にはBDG部関連の事ばかりしている。給料泥棒ここに極まれり。


(ま、私にできる事といえばこれくらいデスからねー)


 先生は机の上に置いてあったお気に入りのエナジードリンクを景気よく飲み干し、自前のノートパソコンへと齧りつく。吹雪たちは吹雪たちの、先生は先生の出来ることをそれぞれこなしていく。




 吹雪と叢雲の頑張りは、確実に周囲を動かしていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] みんなドール持ってるー! さりげなくどこからともなくドールが出てくるあたり普及率の高さをうかがえますが、ドールを持ってる人が引かれあっているという理論も成り立ちます! 会長の登場で、まさか…
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