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6-2

6-2


「わぁ、生徒会長さんもバトルドール・ガールズやってるんですね!」


「ええ、それなりの実力を自負しているわ」


「……へぇ、確かになかなかやりそうな気配を感じるわ」


 皐月という名のドールはその場で丁寧にお辞儀をする。黒い髪は長く、腰まであるポニーテール。大き目な淡い紫色のリボンで結っているのがワンポイントらしい。キリッとした表情は凛々しい雰囲気で、どことなくマスターである直子に似ている気がする。素体が違うのだろうか、叢雲よりも一回り背が高く、すらっと伸びた手足はまるで美しい彫刻のようだ。


 フレイスヴェルグやアルテミスと同じ基本的なバトルスーツを着ており、小豆色をメインに黒色で縁取られたカラーリングをしている。全体的に武人然とした見た目と性格のようで、さらには腰に日本刀のようなものを下げていた。


「ますたー。拙者にはとんと話が見えないのだが……」


「そうね、最初から話せば長くなるのだけれど……要点に絞って説明すると、あなたと叢雲さんが戦うのよ」


「委細承知。して、決闘の時と場は?」


「説明が雑じゃないですか?! そして皐月ちゃんもそれで理解したの?!」


 吹雪のツッコミは華麗にスルーされ、直子は淡々と仕切っていく。彼女はこう見えて一度決めたら突き進むタイプなのかもしれない。


「バトルフィールドはBDG部のものを借りましょう。時間はこれからでも問題ないわね? 部長さんには私から話すわ。さて、他に質問は?」


「決闘と言ったわね。つまり、(叢雲)アンタ(皐月)の一対一ってわけね?」


「そうよ。ああまで言ってみせたのだもの、私と皐月に勝てないようじゃ大会優勝はおろか、予選も勝ち進めないわ」


「上等じゃないの、コテンパンにノシてやるんだから!」


「ふむ、その意気や良し。拙者も全力でお相手致そう」


「えっと、私はまだ了承してな……」


「あんた!? 私の決定に文句あるのかしら!?」


「いえ、何でも!」





 * * *





「あらあら、そういう訳だったのね~」


「私が日誌を届けている間に、そんな事が……」


 場所は移ってBDG部部室。バトルフィールドは既に設定が完了し、丁度ホログラムが構築されている途中だ。


「うぅ、なんでこんな事に……」


「ちょっと、しっかりなさいな! アンタはそこで私がアイツをボコボコにする所でも眺めてなさいな!」


 血気盛んな叢雲は新品の武装を纏い、六角形のエントリーデッキに仁王立ちしている。その視線の先には皐月と直子が。


 皐月は既に武装を纏っており準備完了している。予想通りというかなんというか、バトルスーツの上に和装……袴と小袖を着ており、その上から簡素な装甲が取り付けられていた。各パーツは和風な意匠でまとめられており、いかにも武者っぽいイメージのドールだ。


「ああ言ってるけど? 皐月?」


「ふ……弱い犬ほどよく吠えるという……」


 腕組みをしたまま余裕の表情を浮かべる皐月。対して、その言葉を聞いた叢雲は――――


「……ッ?! 何よ何よ、何なのよ! ムキー!」


「む、叢雲ちゃーん! 落ち着いてー!」


 完全に小物ムーヴをかますのであった……。




「さて、フィールドの準備が出来たわね〜? それじゃあ吹雪ちゃん、会長〜、用意はいいかしら〜」


「私と皐月はいつでもいいわ」


「常在戦場。拙者はいつでも戦闘可能だ」


「わ、私も大丈夫です!」


「ふん、相手が生徒会長だか何だか知らないけど、叩きのめしてやるわ!」


『セッティングコンプリート』


『ゲットレディ……3……』


『2……』


『1……』


『バトルドール、ゴー!』


 真っ白だったバトルフィールドは緻密な映像描画によって様々に変化する。今回の設定では赤い荒野のようだ。


「……あら、正々堂々ってやつかしら?」


 フィールドに降り立った叢雲は少しばかり離れた場所に立つ皐月を見やる。あまり隠れれるようなオブジェクトもなく地形の起伏も乏しいこの荒野フィールドでは相手を視認しやすく、戦闘開始と同時に激しい攻撃が始まるのが常だ。


 しかし、どういう事か皐月は腕組みをしたままその場に立ち尽くしているだけだった。


「……ふ、正々堂々は確かに拙者が望む戦いだ。しかし、それ以上に我がますたーは貴様の実力を図りたいらしくてな」


「全く、誰に向かってものを言ってるのかしらね……? いいわ、剣を抜きなさい」


 ゆっくりと背中に背負った大剣、天之羽々斬を抜き放つ叢雲。それを合図に、皐月も腰に差した刀を一息に抜いて応えた。


「この刀、菖蒲(あやめ)は我がますたーが丹念に研いだ一品だ。そこらの市販品とは切れ味(攻撃力)が違うぞ?」


「御託はいいわ。見たところ、アンタも私と同じ戦闘スタイル(接近戦が得意)のようだし……剣と剣を合わせれば分かるわよね?」


 言い終わるや否や、叢雲は地面を蹴り一気に接近する。対する皐月も同様に地面を蹴り、互いの距離が一瞬にして縮まった。




 ――ギィイン!――




 鋭い金属音が鳴り響き、僅かな火花が飛び散る。叢雲の大剣は見た目よりも素早く振るわれ、皐月の刀は見た目よりも力強い。両者の目が見開かれ、一合打ち合わせただけでおよその実力を悟ったのだろう。


「ほほう! これはなかなかやる!」


「アンタ、変な喋りは伊達じゃないってことね!」


 続けて叢雲が上段から力を込めて振り下ろす。それを刀の腹で巧みに滑らせつつ受け流す皐月。お互いに致命の一撃を狙ってはいるものの、なかなかその機会が訪れない。






「……これはお互いに実力が伯仲している、というやつですね」


「叢雲ちゃん、凄いわ〜! 会長とあの子(皐月)は白兵戦がとっても強いんだけど、全然負けてないわ〜!」


 真理が判断するに、叢雲は大剣のリーチと一撃の重さで勝ってはいるが、皐月の刀は素早く鋭い太刀筋がバランスの良い攻守を生み出している。


 つまり叢雲が勝つには皐月の刀を力でねじ伏せ、皐月が勝つには叢雲の一撃を避けつつ隙をじっくり待つことだろう。


「真理先輩、生徒会長をご存知なんですか?」


「えぇ、会長とはたまにバトってるのよ〜。アルテミスの対近接戦の訓練とかに付き合ってもらってたの」


「なるほど、それで……」


「前からBDG部にお誘いしてたんだけどね〜、ずっと断られてたのよ。生徒会長になってからは色々と忙しそうだったし、会長もちょうどいい息抜きになるんじゃないかしら〜?」




「あわわ、叢雲ちゃん! 一旦下がって!」


「くっ! 簡単に言ってくれちゃって!」


 叢雲が携えた天之羽々斬は一撃が重く、まともに喰らえば例えアルテミスの重装甲でもひとたまりもない。だがその反面、剣戟のモーションが大きく小回りが利きにくいという欠点もある。皐月と直子はそこを的確に見抜いていたのだ。


「フッ! どうだ、懐に潜り込まれるとその大剣では戦いにくいだろう!」


「いいわ、皐月! そのまま同じ距離を保って!」


 刀をコンパクトに振るう皐月は叢雲の間合いの中に入り続ける。叢雲同様に身軽な装甲を纏っている皐月の動きは素早く、マスターである直子の指示通りピッタリと叢雲に張り付いていた。


 叢雲が左に跳べば皐月も左に跳び、叢雲が右に回避すれば皐月も右に追う展開となっている。そのため叢雲は先ほどから防戦一方で、なかなか反撃に移ることが出来ずにいた。




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