表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/129

第六話「相手が生徒会長だか何だか知らないけど、叩きのめしてやるわ!」

第六話


 キーンコーンカーンコーン…………


 ゴールデンウイークも間近な4月の終わり。徐々に日も長くなり、授業が終わった頃は夕方といってもまだまだ明るい。


「さ、美空! 早く部室に行こう!」


「吹雪さんは先に行ってて下さい。私は日直なので今日の日誌を担任の先生に渡してから部室に向かいますので」


「あ、そうだっけ。うん、分かった!」


 勢いよく教室を飛び出す吹雪を見送る美空。ここ最近は授業が終わると同時にすぐBDG部の部室に直行するのが習慣となっている。




「ふんふ〜ん♪」


 陽気に鼻歌を歌いながら部室棟へ繋がる廊下を歩く吹雪。いつもと変わらない日常、風景。


 と、突然そこに一人の生徒が立ちはだかってきた。


「……あなたが神代さんね?」


「ふぇ? あ、はい。そうですが……あの、どちら様でしょうか?」


 持ち前の明るさでクラスメイトとはすっかり仲良くなった吹雪だが、目の前の女生徒は見覚えがない……いや、そういえばどこかで見た顔かな?と必死に記憶の糸を辿る。だがしかし、リボンタイの色から彼女が三年生なのは間違いないなく、入学したばかりの吹雪には他学年に知り合いはほとんどいないはずだった。


 第一印象は謹厳実直、品行方正。きちんと整えられた黒髪はショートボブ、前髪は正確に真ん中で分けられ地味なヘアピンで留められている。吹雪と同じブレザーを着ているはずなのだが、向こうのほうがビシッとしている気がする。


 少し気が強そうな瞳は髪と同じ深い黒。今どき珍しく化粧っ気が少しも無いが、元の顔立ちが整っているせいかあまり見劣りしない。むしろ美人な部類だ。リムレスの眼鏡は知的な雰囲気を醸し出しつつ、シャープな印象を受ける。


 真理より少しばかり背が高く、スラッとした身体付きは陸上競技でもやっているのだろうか。


「失礼。私は成実直子(なるみなおこ)。この学校の生徒会長をやらせてもらっているわ」


「ああ、生徒会長さん! どうりで見た覚えがあったんだ!」


「……入学式で挨拶をしたのだから当たり前よ。ま、それは良いわ。神代さん、あなたに少しばかり話があるの」


「???」





 * * *





(はぁ、これが()()生徒会室……なんか普通の事務室っぽいなぁ)


 吹雪は生徒会長である直子に生徒会室まで連れられた。初めて見る生徒会室というものは漫画やアニメのものとは異なり、普通の準備教室に事務机や書類棚がいくつか置かれた、とても簡素なものだった。


 その中でも一番奥、おそらく生徒会長の席であろう椅子……少し古い、よくある事務用の回転椅子に直子は腰掛けた。


「そんなに生徒会室が珍しい?」


「あ! いえ、なんか普通だなぁ……って」


「ウチは普通の公立高校。なんでか皆、アニメみたいな豪華な生徒会室を想像するのよね……不思議だわ」


「あ、あははは……」


 そんな事は全く無いのだが一瞬、心の声を聞かれたのかと思った吹雪は思わずドキリとする。そして彼女の様子からこれまでにも同じような反応をされた事があるのだろうか。


「さて、神代吹雪さん。あなたを生徒会室にまで呼んだのは他でもありません。あなたにいくつか質問したい事があります。素直に答えて下さいね?」


「お、お手柔らかにお願いします!」


「そんなに(かしこ)まらなくても……」


 直子の固い雰囲気につい緊張してしまう吹雪。ガチガチにお辞儀をされては直子でなくとも困惑してしまう。


「まず、神代さんは例の噂を知っているかしら?」


「例の?」


「この学校……桜ヶ丘第一高校が廃校になるかもしれないという噂よ」


「ああ、うん! 知ってる知ってる! ……あ、いえ、知ってます」


「コホン……そう、やはり噂は一年生にも広まっているようね。これは少しばかり、由々しき事態ね」


「えと、どういう事なんですか?」


 直子は椅子に座ったまま、向かいに立っている吹雪をじっと見る。鋭く射抜くかのような視線に思わずゴクリと唾を呑み込んでしまう吹雪。


「文科省と各自治体が推進している学校の統廃合に関する計画はまだまだ検討段階らしいの。確かに、ウチの学校は候補に挙がっているらしいのだけれど、あくまで確証の無い噂レベルなのよ」


「はぁ……」


「私が言いたい事はね、そんな噂に踊らされて学校の評判を落として欲しくないのよ。分かる?」


「そ、そんな……私は何も悪いことをしてませんよ?!」


 その瞬間、直子の瞳と眼鏡のレンズがキラリと光る。この時を待っていたと言わんばかりだ。


「あなたが所属している部活動……BDG部。風の便りによると、今度の公式大会で優勝を目指して頑張っているんですってね? そして学校の知名度を全国的に上げつつ、BDG強豪校としての地位を確立することで廃校対象から外れようとしている、と」


「ふぇ? まぁ、そうですけど」


「悪い事は言わないわ、大会出場は諦めなさい。あなたと、あなたのドールがどれくらいの実力の持ち主かは知らないけれど、簡単に優勝出来るほどヌルくはないわ。むしろ、無様な戦いをして余計に学校の評判が落ちるかもしれないわね」


「えぇっ?!」


 思わず吹雪は机に身を乗り出す。強く叩きすぎたせいか、事務机に置いてあったペン立てや書類入れがガタリと音を立てる。


「そんな事ありません! た、確かに私はまだまだ初心者ですけど……美空や真理センパイ、先生が協力してくれてるんです! 私達は絶対に優勝して、この学校を廃校にはさせません!」


「この学校を想ってくれるのは素直に生徒会長として、そして一人の生徒として嬉しいわ。でも、それとこれとは別の話よ。それに初心者って言った? それで優勝を目指すですって? 冗談も程々にして」


「うぅ……! 私はともかく、叢雲ちゃんはすっごく強いんです! 叢雲ちゃんと一緒なら必ず……!」


「まったく……うるさくて眠れやしないわ……あら? いつもの部室じゃないわね」


 と、吹雪のスクールバッグから叢雲がもぞもぞと這い出てきた。どうやら吹雪が叫んだ叢雲という単語に反応してスリープモードが解除されてしまったようだ。


「……! なるほど、その子があなたのドールってわけね?」


「ちょっと、何なのよコイツ。人の事をジロジロと眺めちゃって」


 直子はバッグから事務机にぴょいと飛び移った叢雲を頭の先からつま先まで値踏みするかのようにじっくりと眺める。


「あ、この人は生徒会長さんの……」


「初めまして、桜が丘第一高校の生徒会長を務めている成実直子よ。叢雲……さんでいいのかしら?」


「ふん、名前なんてどうでもいいわ。それよりアンタ、さっき聞き捨てならないことを言ったわね!」


「あら、なんの事かしら?」


 ズビシと人差し指を向ける叢雲。それを不敵な笑顔で返す直子。


「とぼけても無駄よ! この私の実力も知らないで大会優勝が無理とはとんだお笑い(ぐさ)ね!」


「…………」


「いい? コイツ(吹雪)はどうしようもなく頼りなくて仕方のない子だけど、私がそれを補って有り余るほど強いから問題ないの。部外者は黙ってて頂戴な」


「む、叢雲ちゃん! あんまり失礼なことを言っちゃ……!」


「なら、実力を試させてもらいましょうか?」


「「へ?」」


 同時にマヌケな声を出してしまう吹雪と叢雲。しかしそんな事を気にせず直子は自身のバッグから何かを取り出して机の上に置いた。それは吹雪がよく見知ったドール専用のケースであり、その中からは一体のドールが現れたではないか。


「起きて、皐月。紹介するわ、この子が私のドール。名前は皐月よ」


「…………私が皐月だ。以後、お見知りおきを」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ