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4ー2

4ー2


「それなら私でもそのお(・)ん(・)ら(・)い(・)ん(・)す(・)く(・)ー(・)る(・)とやらにするわよ」


「叢雲ちゃん……」


「だってそうでしょ? わざわざ学校と自宅を行き来する時間が勿体ないし、そもそもの話、自宅で勉強が出来る環境があるのに学校へ行く必要性ってあるのかしら?」


「…………それは」


「う〜ん、なかなか核心を突いてくるわね〜」


 叢雲の言葉に、美空と真理は即答できずにいる。彼女らは旧来通り小学校、中学校と通ってきたため、学校へ通うという事が当たり前なのだ。それゆえに叢雲の言った学校へ通うことへの必然性や利点など、考えたこともない。


「……あるよ!」


「吹雪さん……」


「吹雪ちゃん……」


「確かに……勉強は家でもどこでも出来るよ! でも……でも! 学校が無かったら、私は美空や真理センパイと出会うことは無かったんだよ! もちろん、叢雲ちゃんとだって!」


「それはあくまで副次的なものでしょ? 友人を作りたいのなら他にもコミュニティはあるわ。ネット上でも、リアルでも」


「それは違うよ、叢雲ちゃん! 学校はね、特別な場所なんだよ! 沢山の人達がいて、何年も同じ校舎で勉強したり部活したり、放課後にスイーツ食べに行ったりカラオケ行ったり! そういう学校だけでしか出来ないこともあるんだよ!?」


「それはまぁ……そうね。一理あるけど」


「私はね、オンラインスクールでも友達を作ろうとしたんだけどね……授業が終わるとみんな、すぐにログアウトしちゃうの。そりゃあね、みんな勉強が目的だもん。それでも何人かの人とお友達にはなれたの……でも」


「でも、どうしたのよ。それで良かったんじゃないの?」


「でもね、思(・)い(・)出(・)は作れないんだよ? 部活もないし、休み時間もない。放課後にどこかで待ち合わせてお買い物なんてのも無いし、そもそもすっごく遠い所に住んでることもあるから、簡単に会えないし……。便利なのは良く分かるんだけど、学校とはやっぱり違ったんだ!」


「……吹雪の言う通り、オンラインスクールにはそういう短所も指摘されてるデス。本来の学校とは、一定の集団生活を通じて多様な人間性の獲得もその本質にあるデスから」


「それに……ね、この学校は私にとって特(・)別(・)なんだ」


「特別?」


「そう。お母さんがね……ここの卒業生なんだって。私が小さい頃はこの辺りに住んでたんだけど、元々はお母さんの地元だったんだ。ずっとオンラインスクールだった私はそれを聞いて、通うならこの学校!って決めてたんだ……。あうぅ、ごめん、これは私個人の問題だったね」


 思いの丈を全て吐き出してスッキリした気持ちと、色んな事を喋ってしまったというちょっぴり恥ずかしい気持ちがまぜこぜになった吹雪は顔を赤らめながらモジモジしだす。


 しかし、吹雪の言葉に美空と真理は必死さと、彼女が伝えたいことを理解する。三人がBDG部で出会ってからまだ日は浅いが、それでもこの学校へ通う事や一緒に部活をしたり、下校の途中でコンビニに寄ったり、そういう何気ない事が大事なのだと感じる。


「……いいえ、そんな事はないわよ! それは吹雪ちゃんの大事な気持ちで、素直な思いに間違いはないわ〜!」


「そう、ですね。オンラインスクールは確かに便利かもしれませんが、だからといってこの学校が廃校になってしまうのは私も嫌です」


「美空……真理先輩……!」


「何か私達でも出来る事はないかしら〜? 署名活動とかが鉄板かしらね~?」


「ネット上で署名運動を展開できるサービスもある。昔ながらの街頭や駅前で紙に書いて貰う方法もあるが、こちらの方が効率的とヴェルグちゃんは判断する」


「うーん、でもそれだと署名を集めるには認知度が低いですね……現状、アピールポイントが無い地方の高校を存続させるためにはもっと、何か魅力や強みが欲しい所です」


「強み……例えばどんなのが良いのかな?」


 吹雪は腕組みしながら考え込む。学校における強みとは何か? しかし、小中学校とほとんどオンラインスクールだった彼女には今一つピンとこない。


「そうね~、例えば有名大学なんかへの進学率が高かったり、いわゆる学力が高ければ生徒も集まりやすいでしょうし~、分かりやすいアピールポイントよね~」


「じゃあ今から猛勉強!」


「しても遅いデスよ。それに学力改革はそれこそ何年も掛けて少しずつ取り組んでいくもんデス」


「部活動で優秀な成績や成果を挙げると、新聞やニュースに取り上げられることもありますが……」


「ウチの学校って、何か部活動に力を入れてるの?」


「残念ながら、良くて県立大会レベルの実力デス。運動系にしても文化系にしても、優秀な生徒と指導者、そして優れた環境がいなくてはなかなか成果と呼べるレベルに到達するのは難しいのが現状デスね」


「あううぅ……他に何かないのかなぁ……」


「昔のアニメだと、アイドル活動して廃校を回避する作品がある」


「ヴェルグちゃん、そもそも公的なアイドル活動はそれなりのコ(・)ネ(・)とカ(・)ネ(・)が必要デスし、学校側が認めてくれるとは思えないデス。たとえアイチューブで歌ったり踊ったりして簡単にバズるのは天賦の才でもない限り、宝くじで一等前後賞を当てるくらい難しいデス」


「なるほど、社会の仕組みと宝くじを当てるのは難しい。ヴェルグちゃんはまた一つ賢くなった」


 ありきたりな案しか出ず、一同は思わず沈黙が続いてしまう。突然の事ではあるし、彼女らもにしてもいきなり一足飛びに解決するようなアイデアがひらめくとは思っていなかったというのが正直な所だろう。




「……理! 真理! ちょっと聞いてるんですか?!」


 真理の制服を引っ張る誰か。彼女が振り返ると、スクールバッグからもぞもぞと這い出たアルテミスがそこにいた。


「あら、ごめんなさいね~アルテミス。どうしたの?」


「私だけ仲間はずれは嫌です! いったいみんなで何をしているんですかっ!」


 そこへフレイスヴェルグが近づいていき、身振り手振りで事の次第を彼女へ教えてやる。


「アルテミス、実はかくかくしかじか」


「まるまるうまうま! なるほど、事態は把握しました! って、ものすごく大変な事なのでは?」


「そうなんだよ~アルテミスちゃん! 何か良いアイデアない~?!」


 涙目でアルテミスの立つ机の前にしゃがみ込む吹雪。いきなりアップになったクシャクシャ顔に驚きながらもアルテミスは「むむむ」と考える。と、いきなり手をポンと叩く。


「あ、そうだ。大会で優勝すればいいんですよ」


「へ? 何の大会?」


「やだなぁ、吹雪さん。私達はイチ高のバトルドール・ガールズ部ですよ! そんな私達が優勝する大会は一つしかないじゃないですか」


「ア、アルテミス~? まさかそれって……?」


「もちろんですよ、真理っ! 目指せ、BDG東日本大会!」


 姿勢よくズビシ、と虚空を勢いよく指さすアルテミス。その姿は恵まれたプロポーションもあって何かの啓発用ポスターか何かのモデルのようだ。


「……たしかに、BDGの公式大会で優勝、そこまでいかなくても全国クラスまで勝ち抜けばあるいは……?」


「マスター、ヴェルグちゃんはその大会で勝てばいいの?」


「あ、あの~? その東日本大会って……?」


「ああ、吹雪ちゃんは知らないのね。BDGにはいくつか大会があってね~、多くはお店やイベントなんかの非公式大会なんだけど、今度の夏にある東日本大会はその名の通り、東日本から多くの参加者が集まるBDGの最強チームを決める大会なのよ~」


「同じ年に東日本、西日本大会とあって、それぞれ優勝チームは翌年の全国大会にシード参加できるんです。もし、今年中に大きな公式大会へ出るならタイミングからいってもこれしかありませんね」


「そうね~、決勝戦なんかネットでも生中継されるはずだし、学校の名前も大きく取り上げられるかもね~」


「そっか……それじゃあ!」


「ちょっと待つデス、吹雪」


「あう、何なの先生? せっかく調子がついてきたってのに」


 先生は吹雪の前に立ち、真剣な眼差しを向ける。見た目にそぐわないが、彼女なりに年長者として吹雪に接しているという事が分かる。


「お前は最近BDGを始めたばっかりだから分かってないデス。なるほど、アルテミスの言うようにその公式大会で優勝すれば確かに学校の知名度も上がって廃校を回避する手立てになる可能性は高いデス。でも、その優勝がどれほど難しいか分かるデスか?」


「待ってください先生、吹雪さんは……」


「待って、美空ちゃん」


 先生の威圧的な物言いに思わず口を挟もうとする美空。しかし、それを真理は制する。


 ここで先生が確認しておかなければならないと真理は直感的に悟っていたのだ。吹雪が、どれだけ大きな目標へ進むのかという覚(・)悟(・)を。






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