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『さぁ、とうとうこの時がやってきました』
照明の落ちた会場に、バト子ちゃんの音声が響き渡る。観客は皆、一様に静まり返っており、しかしその熱気はハッキリと目に見えるかのようだ。
『果たして誰がこの対戦カードとなるかを予想したでしょう? 数々の激戦が繰り広げられた予選大会、その中で最も強豪揃いと言われた会場で雌雄を決した2つのチーム……!』
バト子ちゃんが左手を挙げる。するとスポットライトが三人のマスターと、三人のドールを照らし出す。
『チーム……ブロッサムメイツ! 突如としてこのBDG界に現れた新星! 結成されたのはごく最近の事だそうですが、その実力は折り紙付き! 多くの強敵相手に一歩も退かず、それどころか何度も相手を圧倒し、我々を熱狂させてくれました!』
会場のあちこちに設置されているディスプレイと同調するように、空中の立体ホログラムに叢雲たちの映像が映し出される。
『それではブロッサムメイツのドールを紹介致しましょう! まずはこの娘、古参の武者巫女……叢雲! 青い巫女服を纏った凛々しいその姿とは裏腹に、その剣術は一級品! 以前までは大剣をメインウエポンとしていましたが、現在は新たに長刀を装備しています!』
映像の中の叢雲は過去のバトルからシーンを抽出されているらしく、この本戦大会の映像も使われているようだった。天之叢雲剣を巧みに振るう叢雲は正に武者巫女の名に相応しいだろう。
『装備は剣のみですが、彼女の強さは二つあります! 一つは十種雲形という各種スキル群! その名の通り十種類の異なる必殺技を駆使して戦闘を有利に進めます! そしてもう一つ……それは彼女が第一世代のドールであるということ!』
バトルドールはその仕様と使われている技術によって大きく世代分けされている。フレイスヴェルグやアルテミス、殆ど現役のドールは第三世代に分類されるが、叢雲は最初期の第一世代型である。
『第一世代といってもただ古いだけではありません! バトルドールのAIは日々の生活やバトルを繰り返すことで多様な経験値を獲得するのは皆さんご存知かと思いますが、それはつまり第一世代の彼女はそれだけ多くの経験値を積み上げているのですよ! 特に、接近戦においては有利に働きます!』
それを裏付けるかのように、叢雲は他のドールと比べて非常に感情豊か、そして戦闘でもその経験値を活かした立ち回りを演じている。バト子ちゃんも言っている通り、接近戦ではこの経験値の差が如実に現れるとも言われているため、その意味では叢雲は他のドールよりも頭一つ抜きん出ているだろう。
『さて、お次のドールは……その冷静な判断はすべてを見通している! 漆黒の翼、フレイスヴェルグ!』
フレイスヴェルグの特徴はなんといっても、その大型ウイングとスラスターを使った飛行能力だろう。ディスプレイには大空を悠々と飛んでいる彼女が映し出された。
『最近になって飛行型のドールは増えだしましたが、フレイスヴェルグほど自在に空を翔けるドールはそういないでしょう! 古来より、戦場は高所、つまり空を抑えた方が勝つとされています。その点で彼女ほど制空権を握るのに相応しいドールはいません! まさにチームの司令塔とも言える存在!』
飛行能力と合わせて駆使されるフレイスヴェルグの能力、それは卓越した分析能力だ。BDGにおいては補助的な位置づけであったり、遠距離攻撃の補正などあまり重要視されていないが、彼女のそれは戦場全体を見渡すほどだ。
『彼女が操るのは二種類のドローン、偵察用の「ミーミルの眼」、そして攻撃用の「バルドル」と「ヘズ」です! これらのドローンと高性能センサーで敵の位置や行動を完璧に予測し、そして追い詰めてゆく! 相手チームからすれば恐るべきドールです!』
火力であったり、機動力、または重装甲を誇るドールは数多く存在する。しかしフレイスヴェルグにかかれば、それらのドールもたちまち弱点を見抜かれ、行動を予測されてしまうだろう。柔よく剛を制す、単なる力だけではフレイスヴェルグを倒すことは出来ないのだ。
『ブロッサムメイツ三人目のドールはこの娘! その火力は歩く武器庫! その装甲はまさに鉄壁! 可憐な戦車娘、アルテミス!』
ド派手な爆発と共に映像に現れたのはアルテミス。装甲のアースカラーといくつもの爆炎、そして輝くような金色の髪はまさに戦場の女神のようだ。
『アルテミスの特徴はなんといっても、絵に描いたような大火力重装甲! あらゆるものを破壊する数々の兵器と、どんな攻撃をも受け止めてしまう装甲! 生半可な攻撃では彼女を止めることは出来ないぞ!』
アルテミスの全身には様々な武装が施されている。メインウエポンは狙撃銃からアーチェリーに変形するビーム兵器、オリオン・ボウ。腰や背部コンテナ、脚部にはマイクロミサイルが搭載されており、両肩にはそれぞれ迎撃用マシンガン、キャノン砲が装備されている。
『しかし、その重武装は重量増加というマイナス要素もあります! ですが機敏な動きが出来なかった彼女ですが、追加装備として脚部にホバー機構を新たに取り入れることでその機動力を大幅に上昇させました! これにより迅速な作戦展開が行えるようになり、より一層の活躍を見せてくれます!』
本戦大会用に真理が製作したのは移動用ホバーパーツだ。先生がかつて所持していたドールの武装を転用したもので、実際のホバークラフトと同様の原理でドールを滑走させる。これにより重武装系ドールの弱点とも言える機動力の低さを克服しているのだ。
『彼女たち、ブロッサムメイツは近接戦闘、中距離支援、遠距離砲撃とバランスの取れたチーム構成が魅力的ですね! オーソドックスではあるものの、それだけに様々なチームを相手に柔軟な作戦が取れますし、ブロッサムメイツの対応力の高さには目をみはるものがあります!』
バトルドールのチームは三人一組、その中で得意な武装と距離を統一させる特化型、もしくは分散させるバランス型に大きく分けられる。BDG公式の統計ではバランス型のチームが多いとのことだが、それはやはり様々なチームと対戦するにあたって対応力を重視するチームが多いからとされる。
そういった背景もあるのだが、ブロッサムメイツの場合は少々異なるのかもしれない。
異なる個性、異なる性格、異なる思考。全く違う三者三様、ともすれば一つに纏まることすら難しいはず。しかし、彼女たちはこうしてチームとなった。チームとなっていった。
最初はただの部活動として。次に、学校を救うために。そして、今は優勝するために。
同じでなくていい。それぞれが、それぞれに出来ることをするまで。そうやって、ここまで戦ってきたのだ。
ならば、ブロッサムメイツのチーム構成は必然であり、これが最適解なのである。三人のマスターと、三人のドールが、それぞれ自分自身の花を咲かせるのがブロッサムメイツなのだ。




