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嘲笑する被害者たち〜トクリュウの末端が逮捕されるたび、ネットの底で静かに酒を汲み交わす者たち〜  作者: 風風風


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第4話【不条理な怒りは、 静かな達成感へと昇華されていく】

深夜3時。


静まり返った自宅の書斎で、

Zはゆっくりと緑茶を啜っていた。


かつて、この時間帯は彼にとって

「地獄のピークタイム」だった。


脱サラし、

人生のすべてを賭けて

オープンさせたコンビニエンスストア。


だが、数年も経つと

店舗の駐車場は夜な夜な近所の

「悪餓鬼」どもの溜まり場と化した。


ガラス窓にバイクを横付けされ、

地べたに座り込んで煙草を吸い、

清涼飲料水の缶を散らかす。


店内のトイレは汚され、

雑誌は立ち読みで破られ、

レジの隙を突いては

高額なカード類やタバコが万引きされた。


注意すれば

「客に向かってなんだその口

disposable(使い捨て)のおっさん」

と凄まれ、警察を呼んでも

「若い子のやることですから」と

軽微な注意だけで追い返される。


噂が広まり、

一般の客は恐怖して夜間の来店をやめた。


売上は激減し、従業員は恐怖で辞め、

最後は借金だけを残して廃業に追い込まれた。


「……思い出すだけで、胃が痛む」


Zはため息を吐き出し、

パソコンの画面に目を戻した。


ブラウザにはいつもの掲示板。


『嘲笑する被害者たち』のスレッドだ。


『Zさん、まだ起きてますか?』


Yからのレスが入っていた。


『Z:ええ、

少し昔のことを思い出していましてね。

闇バイトで強盗に入るような連中の

「原点」について考えていたところです』


『X:原点、ですか?』


『Z:ええ。

私が店を潰されたあの悪餓鬼どもも、

今思えば

完全にトクリュウの予備軍でした。

罪悪感が欠落していて、

「他人の迷惑」を自分の「快楽」に

変換することしかできない。

そういう奴らがそのまま大人になり、

SNSで

「簡単に稼げる」という甘い言葉に

飛びつくんでしょうね』


『Q:確かに。根底にあるのは

「楽をして他人から奪いたい」という

浅しい欲望だけですからね』


『Y:で、結果がこれ(笑)』


Yがニュースのリンクを貼り付ける。


【「闇バイト」に応募し高齢者宅に侵入 強盗傷害容疑で20代の男3人を逮捕 指示役とはSNSで接触】


『Z:拝見しました。

強盗に入ったはいいものの、

住人に抵抗されてパニックになり、

現場に自分のスマホを落として

逃げたそうですね』


『X:ブッwww

スマホ落とすとかギャグだろwww』


『Q:GPSも通信履歴も残るのに

自爆しに行ったようなものですね。

コントかよ』


『Y:まさに「バカの極み」。

指示役からすれば、

使い捨てのトカゲのしっぽどころか、

勝手に自滅してくれる

生け贄みたいなもんですよ』


Zは画面を見ながら、フッと口元を緩めた。


世間やメディアは、

闇バイトに手を出した若者たちを

「社会の貧困の被害者」だの

「巧妙な手口に騙された無知な若者」だのと

庇うような論調を張ることがある。


だが、現場で

彼らに人生を狂わされたZからすれば、

そんなものは笑止千万だった。


彼らは騙されたのではない。


「努力せずに大金が欲しい」

「自分だけは捕まらない」

という強欲と慢心ゆえに、

自ら進んで犯罪の片棒を担いだのだ。


『Z:彼らは逮捕されて初めて

「自分は騙されていた」

「指示役が怖い」と

泣きつくのでしょうが……

本当に浅はかです。

奪われた被害者の恐怖や、

人生を狂わされた人間の痛みに比べれば、

自業自得という言葉すら甘い』


『X:本当ですよ。

刑務所から出てきても、

前科者として一生裏街道を歩くしかない。

自分で自分の首を絞めたんだ』


『Q:また何年かしたら、

別の事件で逮捕されて

ニュースに出てくるんでしょうね。

「元闇バイト実行役、再犯で逮捕」ってw』


『Y:一生、中と外を出たり入ったり(笑)。

一生終わらんループだな』


『Z:ええ。ですが、

それこそが彼らに相応しい

「お似合いの人生」ですよ』


Zは静かに返信を打ち込み、

冷めたお茶を飲み干した。


自分の店を潰したあの悪餓鬼たちも、

今頃はどこかで闇バイトに手を染め、

警察の手錠をかけられているのかもしれない。


あるいは、

刑務所の冷たい床の上で

自分の愚かさを噛み締めているのかもしれない。


それを確かめる術はない。


だが、

今日もニュースで流れる愚か者たちの

惨めな逮捕劇を見るたび、

Zの胸の奥で燻っていた不条理な怒りは、

静かな達成感へと昇華されていくのだった。

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