第13話【 密室の祝宴 】
『Y:こことよく似たスレッドが
あるらしい。……』
『Z:へぇ~、
……。まぁ、あるだろうねぇ』
『Y:批判もあるらしいよ』
『Q:どんな?』
『Y:「人の破滅を肴にした祝宴を、
毎夜のように繰り広げてる」って……』
『X:言わせておけばいい』
『Q:そうよ。そういう人たちは、
自分は被害者じゃないから、
分からないのよ』
招待された4人しかアクセスできない
暗号化された非公開スレッドは、
今夜も怪しい熱気に包まれていた。
『Q:逮捕されたガキ、連行される時に
「俺は被害者だー!」って叫んでたのが
最高にダサかったですねwww』
『Z:被害者なわけがないでしょうに。
楽して他人から奪おうと企み、
返り討ちに遭っただけの『害虫』です』
『Y:ほんとそれです(笑)。
警察の事情聴取でも
『犯人がドアを叩いて
脅迫してきて生きた心地がしなかった』
って、被害者がアピールしてるの
見ました。
それでソイツの罪状、
しっかり重くなりますよwww』
『X:ガハハハ! !!』
『Q:完璧ですね!
執行猶予なしの実刑で
刑務所に叩き込まれればいい!』
画面の前で缶チューハイを煽る
Yの口元は、歪んだ笑みで歪んでいた。
世間一般のオープンなネット掲示板なら、
「さすがに不謹慎だ」
「通報した方がいい」などと
訳知り顔の偽善者が湧いてくる。
だが、ここは違う。
理不尽に人生を荒らされた者だけが集う、
完全非公開の密室スレッドだ。
誰の目も気にする必要はない。
善人ぶった説教もいらない。
『Z:ところで皆さん。
今日、警察庁が発表した
「トクリュウ一斉摘発」の最新データは
見ましたか?』
『X:見た見た!
実行役の逮捕者、過去最高更新だってな!』
『Q:SNSで「即日即金」
「簡単な運びの仕事」
に釣られたバカどもが、
次々に警察の罠網に引っかかって
逮捕されてるらしいですね』
『Y:指示役に身分証握られて
「家族に危害を加える」って脅されて、
泣く泣く泥棒に入った〜とか
供述してるらしいですよ(笑)』
『X:脅されたら
他人の家に強盗に入っていいと
思ってんのがおめでたすぎるwww
警察行けよ警察www』
『Z:自分の頭で考える知能すらないから、
闇バイトなんぞに応募するのです。
そして捕まれば「騙された」と泣く。
救いようのない愚者たちです』
『Q:でも、そのバカどもが
自滅してくれるおかげで、
毎晩こうして最高に
美味い酒が飲めるんですから、
感謝しないといけませんねwww』
『Y:違いないwww
感謝の乾杯いきましょう!』
『X:バカどもの人生終了に、カンパーイ!!』
『Z:乾杯。彼らの惨めな服役に祝杯を』
画面の上で踊る絵文字と「www」の文字列。
自分たちは何も悪いことはしていない。
真面目に働き、法を守り、理不尽な害悪に耐えてきた。
だからこそ、
ルールを破って勝手に落ちていく
愚か者たちを、
この誰も知らない秘密の部屋から見下ろし、
笑い飛ばす権利があるのだ。
暗い部屋の中で、
液晶の青青とした光に照らされた4人の顔。
今夜も完全非公開の密室で、
悪党の破滅を肴にした祝宴が、
どこまでも愉快に続いていく。




