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嘲笑する被害者たち〜トクリュウの末端が逮捕されるたび、ネットの底で静かに酒を汲み交わす者たち〜  作者: 風風風


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12/17

第10話【 『名無し』って、誰? 】

火曜日の深夜1時。


いつものように液晶画面の青白い光が、

Yのワンルームを照らしていた。


『嘲笑する被害者たち』のスレッドには、

すでに多くの書き込みが並んでいる。


今夜のニュースは、

首都圏で起きた闇バイト強盗事件の

続報だった。


指示役から

「現場の鍵は開いている」と嘘をつかれ、

ガラスを割って侵入した瞬間に

警報装置が作動、パニックになって

近所の公園に逃げ込んだところを

現行犯逮捕されたという。


『X:鍵が開いてるわけないだろ(笑)。

どこまでピュアなんだよ

闇バイトのガキどもは』


『Q:公園の便所に隠れてたらしいですね。

警察官に見つかって

泣きながら出てきたとかw』


『Z:防犯システムも警察の動向も考えず、

指示役の言葉ひとつで突っ込む。

まさに走る爆弾……

いや、ただの動く標的ですね』


『Y:便所に隠れて号泣逮捕はダサすぎる

www

刑務所の便所掃除から

やり直してこいって話ですねwww』


画面の上を流れていく嘲笑の文字。


Yは冷えたチューハイを口に含み、

喉を鳴らした。


(やっぱり、この時間が一番落ち着く……)


理不尽に傷つけられ、

世の中に裏切られてきた自分たちが、

ルールを破った愚か者の自滅劇を

高みから見下ろす。


この祝宴こそが、

Yにとって日々の鬱屈を解消する

唯一の救いだった。


しかし、その宴の途中で、


『名無し:ねえ、

さっきから気になってたんだけど……』


『名無し:このスレで話題にしてる

「公園で捕まったガキ」のニュース、

逮捕された場所って

〇〇区の〇〇町あたりじゃね?』


Yは缶を置く手を止めた。


(……え?)


そこは、Yが住んでいるアパートから、

徒歩でわずか十数分ほどの距離にある

地域だった。


『Y:〇〇町? え、それ俺の近所なんだけど』

ていうか、このサイト、俺たちだけの

溜り場だよね?


『X:だよね?

誰か、他の人に教えた?』


誰からも、「教えた」という言葉はなかった。


『X:マジで? Yさんのすぐ近くかよ』


『Q:うわ、リアルで近くに

そんなバカが潜伏してたと思うと

ゾッとしますね』


それきり、『名無し』を名乗る人物からの

書き込みはなかった。


『X:とにかく、ちょっと

気を付けた方がいいかも?』


Yの心臓が、ドクンと嫌な跳ね方をした。


(……〇〇のアパート?)


それは、まさに自分が今住んでいる、

築古い木造アパートの名称だった。


『Z:Yさん……?』


『X:おいおい、偶然だろ?

たまたま同じ名前のアパートが

近所にあるとか』


『Q:ですよね。

指示役が適当に言った逃走経路の場所が、

たまたまYさんのアパートと

同じ名前だっただけですよ』


スレッドの仲間たちが

楽観的なレスを打ち込む。


Yもまた、

冷や汗を拭いながらキーボードに指を走らせた。


『Y:だ、よねwww 焦った〜。

指示役なんて現場の地理も知らんと

適当に言ってるだけだし、単なる偶然――』


©2026 [風風風]. All rights reserved.

本日、19:30 に、第11話を投稿します。

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