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嘲笑する被害者たち〜トクリュウの末端が逮捕されるたび、ネットの底で静かに酒を汲み交わす者たち〜  作者: 風風風


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第9話【 彼等の不用心が、危機を招く 】

月曜日の深夜。


テレビのニュース番組が、

トクリュウに関する特別報道を流していた。


『――警察庁の発表によりますと、

一連の匿名・

流動型犯罪グループによる事件の

年間摘発件数は過去最多となり、

その約9割がSNS等で集められた

「実行役」であることが分かりました――』


画面に映し出されるのは、

全国各地で手錠をかけられ、

護送車へ押し込まれていく若者たちの

連続映像だ。


うなだれる男、

カメラを避けるように服で顔を覆う男、

警察官に抱えられながら

脚をガタガタと震わせている男。


Yは画面を見ながら、キーボードを叩いた。


『Y:今日の特別番組見ました?

約9割が使い捨ての実行役だってさ』


『X:見た見た!

9割がトカゲのしっぽ(笑)。

残りの1割の指示役に上手いこと使われて、

逮捕されて人生終了か。

哀れすぎて笑いも出んわ』


『Q:ニュースでやってましたけど、

逮捕されたガキの親がインタビューで

「うちの子がそんなことをするなんて……」

って泣いてましたよ』


『Z:……親の顔が見てみたいとは

このことですね。

子供がどんな人間と付き合い、

どんな金稼ぎをしているかも把握せず、

事件を起こしてから泣く。

コンビニをやっていた頃も、

そんな親を嫌というほど見ました』


『Y:結局さ、類は友を呼ぶっていうか、

浅はかな親から浅はかな子供が生まれて、

その子供が

「楽して稼げる」って言葉に騙されて

闇バイトに走るわけだよね』


スレッドの勢いは止まらない。


これまで何十件、何百件と流れてきた

逮捕ニュースの数だけ、

彼らの「冷笑」は研ぎ澄まされてきた。


『X:今日捕まった20代のやつなんか、

闇バイトで強盗に入って手に入れた金が

「提示された額の10分の1」だったらしいぞ

www』


『Q:えっ、マ?

命がけで強盗に入って数万円?www』


『X:そう!  指示役に

「報酬は後で振り込む」って言われて、

数万円渡されて

「残りは後日」って言われた直後に

警察にパクられたってwww』


『Y:ギャハハハ!

差し引きゼロどころか、

マイナス前科付きじゃんwww』


『Z:本当に……失笑するしかありませんね。

指示役からすれば、数万円で

自分の代わりに強盗をやってくれる

便利なロボットを買ったようなものです』


『Q:で、ロボットが壊れ(捕まり)たら、

またSNSで新しいロボットを補充するだけ、

と。

どこまでも使い捨てですね』


『Y:ゴクロウサマwww

刑務所で数年間、

タダ働きして反省(笑)してきてください

www』


画面の上を流れていく

無数の「www」と乾杯の言葉。


Yは缶チューハイを飲み干し、

背もたれに深く体を預けた。


今夜もまた、世の中の「害悪」が一人、

社会から隔離された。


自分たちの生活を脅かし、

平気でルールを破る連中が、

己の愚かさゆえに罠にハマり、

自滅していく。


自分たちは何もしていない。

ただ、法を守り、真面目に生き、

理不尽に耐えてきた。


だからこそ、

この「悪党の自滅劇」を鑑賞し、

冷笑する資格がある。


「……あー、今日も飯が美味い」


Yは呟き、

空になった缶をゴミ箱に投げ入れた。


この安全で、冷たくて、居心地の良い場所。


自分たち

『嘲笑する被害者たち』が集う場所で、

明日もまた、

新しい愚か者の末路を笑い飛ばすのだ。


彼等の不用心が、危機を招く。

それはまだ、

彼らが知る由もないことだった。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

本日、12:30 に、第10話を投稿します。

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