インターミッション【そしてクライマックスへ】
非公開の『嘲笑する被害者たち』は、
解説動画やニュースのまとめサイトにも
取り上げられず、ネットの暗がりに
ひっそりと存在し続けていた。
誰が管理しているわけでもない。
ただ、
同じ痛みを抱えた者たちが深夜に集まり、
ニュースで流れるトクリュウの末端――
闇バイトの実行役たちの
無様な逮捕劇を酒の肴にする。
『Z:最近は
「高額即金」の求人に飛びついて、
指示役に身分証の写真を握られ、
後戻りできなくなって
泣く泣く犯行に及んだ……
という供述が増えましたね』
『X:自業自得だろ。
身分証を他人に渡したらどうなるか、
小学生でも分かるわ』
『Q:脅されて仕方なくやりました、
って言えば許されると思ってるところが
浅はかですよね』
『Y:断ったら
家に押しかけられるからやりました〜って
言ってるけど、
警察に駆け込めば保護してもらえるのにね。
要するに、警察に行く勇気もないチキンが、
他人の家に押し入る度胸だけはある
ってのが笑える』
『X:ガハハ! まさにそれな!』
彼らの会話には、一切の迷いも容赦もない。
世間が
「闇バイトに手を出してしまう若者の貧困」や
「巧妙な洗脳手口」などと
ニュースで分析していようが関係ない。
被害を受けた側からすれば、
理由が何であれ
他人の生活を脅かした時点で
全員アウトなのだ。
『Z:……ですが、最近は
警察の摘発スピードも上がっていますね。
指示役まで辿り着くケースも
増えてきたようです』
『Q:末端が捕まるのは
スカッとしますけど、
上の奴らも早く全員捕まればいいのに』
『Y:まあ、上の奴らが捕まるまでの間、
俺たちは下っ端のバカどもが
自滅していくのを
高みの見物させてもらいましょうよ。
今夜も冷えた酒が美味い』
『X:おう!
明日はどんなバカが捕まるかな!』
ルールを破った者が当然の罰を受け、
社会から退場していく姿を冷ややかに見送る。
この祝宴は、彼らにとって
かつて自分たちが受けた
理不尽を耐え抜くための、
唯一の安全装置だった。
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