ずっとここにいてほしい
まだ夜明け前で、窓の外は暗い。
立ち上がって、そっと窓から外の通りを見ると、
宿屋の前を掃除しているアストリッドの姿が見えて、
胸がドキンと刺すように痛くなる。
――ずっと、ずっとここにいてほしい。
――でも、親父に変装して過ごしたままでいいとは思えない。
(アスティは本気で、宿屋を大事にして、
ずっとここで頑張ろうとしてるんや。
それがアスティの希望なんやから、それでええやん……)
ふとアストリッドが、視線に気づいたように、診療所を見上げる。
カイは、慌てて窓を離れようとして戸棚にぶつかり、思い切り足をひねって床にひっくり返った。
「いったぁぁぁぁ!!!あああああ!!!もう!!!」
戸棚から落ちて散らばった中にある裁縫箱を見たカイは、
床に転がったままソロソロと手を伸ばして、待ち針を突っついた。
「はぁぁ……とりあえず、ヨハネスに兎は取られんようにしとこ……」
これまでのお話▼
◆『元公爵令嬢の小さな宿屋―年下の町医者が、客でもないのに今日も会いに来ます』
https://ncode.syosetu.com/n8605mt/
★注目度ランキング(完結済)45位に入りました!
◆続・元公爵令嬢の小さな宿屋―陶器市で年下の町医者と手をつなぎました
https://ncode.syosetu.com/n0955mu/
お気に入りのキャラクター・場面がありましたら★評価・感想一言でも頂けるととても嬉しいです!




