↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一度見た魔法とスキルを【鑑定】したら、すべて習得できました  作者: 阿鼻恭介
第8章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

210/230

第8章 第210話 地図にない村

「地図に載ってない村……三つあった」


 戻ってきたフィーナの言葉に、ユウトはすぐ表情を変えた。


「黒い霧の匂いがしたのは?」


「一番北の村。ほんの少しだけ。でも、普通の煙じゃないよ」


 フィーナの耳が緊張したように立っている。


「風向きも変だった。村の方から流れてきたんじゃなくて、村の中でずっと残ってる感じ」


「分かった。案内してくれ」


「うん!」


 六人は王都の通信係へ行き先を伝え、後続として治療師、避難用馬車、食料を要請した。


 今はもう、《アカシックレコード》だけで全部を抱える必要はない。


 先に危険を確認し、必要な情報を送り、後を任せる。


 それも世界連合を作った意味だった。


 ***


 馬で半刻ほど走り、街道を外れる。


 そこからは道と呼ぶには細すぎる獣道だった。


「こっち!」


 先頭を走るフィーナだけが迷わない。


 やがて小さな丘を越えると、十数軒の家が集まる集落が見えた。


「止まって」


 フィーナが突然、片手を上げた。


「どうした?」


「動物の匂いがしない」


 ユウトも周囲を見回す。


 鶏小屋。


 家畜小屋。


 森も近い。


 それなのに、鳥の鳴き声すらほとんど聞こえない。


「それと……あそこ」


 フィーナが鼻をひくつかせ、村外れを指す。


 小さな石造りの祠だった。


「黒い匂いが一番濃い」


 ユウトは村全体へ【鑑定】を使う。


【状態】

神力干渉反応あり


【濃度】

低度〜中度


【影響範囲】

集落内


【詳細】

一部情報は神格干渉により閲覧不能


 それ以上は出ない。


「発生源までは分からない」


「じゃあ、フィーナの鼻が正解ですね」


 エリシアが祠へ視線を向けた。


「まず住民を確認しましょう」


 村へ入った直後だった。


「危ない!」


 セレスが声を上げる。


 納屋の屋根から火が上がっていた。


 しかし、すぐ横にいる男は逃げようともせず、穏やかに笑っている。


「燃えてますよ!」


「ええ。でも……大丈夫でしょう」


 異常だった。


「拙者が住民を離す!」


 アイリスが駆け出す。


「レティシア、延焼を止められるか?」


「任せな!」


 レティシアは水路の堰へ向かう。


「エリシア、火の粉を!」


「結界を張ります」


 ユウトは火事を仲間へ任せ、自分は村人を【鑑定】した。


【状態】

神力干渉・軽度


【症状】

不安抑制

危険認識低下

自己判断力低下


「やっぱり……」


 火はほどなく消えた。


 だが、その最中。


「祠に行かなくちゃ」


 一人の老婆が突然歩き出した。


「待ってください」


「祠へ行けば、大丈夫だから」


 止めようとした青年を押し退ける。


 別の男まで同じ方向へ歩き始めた。


「行かせてくれ。祈れば、何も怖くなくなる」


 アイリスが二人の前へ回る。


「申し訳ないが、今は通すわけには参らぬ」


「邪魔するな!」


 男が殴りかかる。


 アイリスは腕を傷つけることなく受け流し、そのまま地面へ押さえた。


「許されよ。だが、今のそなたは正常な判断ができておらぬ」


 村人を任せ、ユウトたちは祠へ向かった。


 石台の中央には、黒く濁った魔石が埋め込まれている。


「【鑑定】」


【名称】

村落祈願用魔石


【本来機能】

豊作祈願

村落守護


【現在状態】

外部神力による汚染


【追加構造】

神力受信術式

精神干渉術式


【注意】

破壊時、蓄積された神力が漏出する可能性あり


 レティシアが石台を叩く。


「固定具まで昔のままだ。魔石だけ後から弄られてるな」


 エリシアも魔力の流れを調べる。


「受信部分は、あの町で見た構造を簡略化したものに近いです。小さな祠でも使えるよう組み直されています」


「……これを各地へ置けるってことか」


 セレスの顔が曇る。


「村の人たちは、ずっとこれへ祈っていたのでしょうね」


 豊作を願い。


 家族の無事を願い。


 昔から頼ってきた祠。


 その祈りの場所そのものが、いつの間にか心を奪う入口へ変えられていた。


「本来の機能は残す」


 ユウトは魔石の術式を追った。


「干渉術式と外部接続だけ切り離そう」


「私が接続部分を固定します」


 エリシアが結界を展開する。


「石台はこちらで開ける。無理に魔石を引き抜くなよ」


 レティシアが固定具を慎重に外す。


「解除後の住民は私が診ます」


 セレスも準備する。


 役割が決まった。


 ユウトとエリシアが外部から伸びる神力の糸を分離する。


 レティシアが物理的な固定を外し、術式への余計な負荷を防ぐ。


 そして。


「切る」


 黒い光が一瞬だけ膨らんだ。


 村の方から、何人もの悲鳴が聞こえた。


「反動です!」


 セレスが駆け出す。


 ユウトは魔石を確認する。


【外部神力接続】

解除


【精神干渉術式】

停止


【本来機能】

維持


「供給は止まった!」


 だが、終わりではない。


 村へ戻ると、先ほど笑っていた男が頭を抱えていた。


「俺……火が……燃えてたのに……」


 別の女は泣き崩れている。


「怖い……急に、全部怖くなって……」


「大丈夫です。無理に落ち着こうとしなくていいですよ」


 セレスが一人ずつ診ていく。


「祠からの新しい干渉は止まりました。でも、すぐ全員が元通りになるわけではありません」


 影響の強い者には精神安定。


 軽い者には休息と見守り。


 本人の意思を確認してから、必要に応じて個別解除。


 第7章で経験した方法を、そのまま使う。


 ***


 後続の治療師と馬車が到着する頃には、村人の混乱も少しずつ収まり始めていた。


 村長が深く頭を下げる。


「こんな小さな村まで、助けに来てくださるとは……」


「俺たちも、今日までこの村を知りませんでした」


 ユウトは正直に答えた。


「だから、知らなかったこと自体はもう変えられません」


 そして、フィーナを見る。


「でも、見つけたなら次からは外さないようにできます」


「この近く、他にも地図にない村があるよ」


 フィーナが言う。


「森の奥だけで暮らしてる人たちとか、季節で場所を変える獣人の集落もある」


「なら各国へ共有しよう」


 ユウトは通信魔道具を開いた。


「未登録集落の再調査を提案する。役所だけじゃなく、冒険者ギルドと商業ギルド、それから現地を知ってる人たちにも協力してもらった方がいい」


 地図を作るのは役人の仕事だ。


 けれど。


 地図に載せるべき人を見つけるのは、役人だけではできない。


 通信を送ろうとした、その時。


 先に王都から緊急連絡が入った。


『各国で同様の汚染魔石を確認』


 ユウトの手が止まる。


『小規模神殿、村落祠、古い祭壇――現在確認できただけで百七十か所を超えています』


「そんなに……」


 セレスが息を呑む。


『さらに増加中。各国より、解除方法の共有要請が届いています』


 ユウトは黒さを失った祈願用魔石を見る。


 一つずつ自分たちで回っていては、間に合わない。


 ならば。


「分かりました」


 ユウトは通信魔道具を握り直した。


「俺たちがやった手順を、全部まとめます」


 フィーナが顔を上げる。


「みんなに教えるの?」


「ああ」


 ユウトは頷いた。


「俺たちだけが知ってても意味がない」


 ヴォイドが世界中へ手を伸ばしたのなら。


 こちらも。


 世界中へ知識を届ければいい。

お読みいただきありがとうございます。

ブックマークや評価をいただけると励みになります。


そして本日はここまで明日も5話投稿します。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。