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第29話:女帝の破産と、一枚の譲渡証。――あなたの「プライド」、時価で買い叩かせていただきますわ。

「……趣味が悪いですわね。陛下」


 大陸商業連盟の本拠地、黄金都市『オーラム』の中央広場。わたくしは、見渡す限り金箔で覆われた不自然なほどに眩しい街並みを、冷ややかな目で見下ろしました。

 帝国軍の軍靴が、一ゴルド単位まで磨き上げられた石畳を無遠慮に踏み荒らしていく。

 

「ああ。……ここにある黄金のすべてが、搾取された民の涙でできていると思うと、反吐が出るな」


 カエルス陛下が、漆黒の外套をなびかせながら、わたくしの隣を歩みます。

 周囲には、経済封鎖の失敗を悟り、怯えた表情で立ち尽くす連盟の役人たち。彼らの手にあった「黄金の杖」は、いまや震える木切れも同然でした。


 やがて辿り着いた、連盟本部の大広間。

 そこには、巨大な黄金の玉座に座り、傲慢にこちらを睨みつける美女――女帝セレスティアが待ち構えていました。


「……よくもここまで来たわね、アストレアの“端数はすう”令嬢」


 セレスティアは、その冷徹な美貌を歪め、吐き捨てるように告げました。


「帝国を少しばかり潤わせたからと言って、いい気になるな。……我が連盟は大陸のインフラそのもの。……私を倒せば、明日からこの大陸の物流は完全に死ぬ。……貴女に、その責任リスクが取れるかしら?」


 ……ふふ。リスク、ですかしら?

 わたくしは、扇を閉じ、一歩前へ踏み出しました。


「セレスティア様。……物流が止まる? ……いいえ。――止まるのは、あなたへの『利権の還流』だけですわ」


「何だと……?」


「クロエ。……監査結果の公開オープンを」


 クロエが指を鳴らすと、広間の中央に膨大なホログラムの帳簿が出現しました。

 それは、商業連盟を構成する「七大ギルド」の極秘財務諸表。


「……報告いたします。……本日午前九時をもちまして、商業連盟傘下の穀物、鉄鋼、魔石ギルドを含む全ての構成団体は、帝国通貨アストレアによる『債務引受』に合意いたしました。……つまり、彼らの所有権はもはや、あなたにはございません」


 セレスティアの顔が、見る間に土気色へと変わりました。


「ば、馬鹿な……! ギルドが私を裏切るはずがない! あいつらには十分な配当を――」


「配当? ……あら、セレスティア様。……泥舟の乗組員が求めているのは、豪華な食事ではなく『救命ボート』ですわ。……あなたが帝国を封鎖したせいで、彼らの市場は消滅しかけた。……そこへわたくしが、新通貨による『全額救済ベイルアウト』を持ちかけたのです。――商売人なら、どちらの帳簿を選ぶか、明白ではありませんこと?」


 わたくしは懐から『錆びた鉄のペン』を取り出し、セレスティアが座る「黄金の玉座」を指し示しました。


監査終了オーディット・フィニッシュ。……大陸商業連盟は、本日をもって『不渡り』を出し、破産いたしました。……連盟の全資産、および知的財産権は、アストレア商会が金貨一ゴルドで一括買収・・・・いたしますわ」


「一ゴルド!? ふざけるな! この連盟の価値が、そんな――」


「一ゴルドも付けたのは、わたくしの慈悲ですわ。……本来なら、累積した赤字を差し引けば『ゴミの処分費用』を請求したいところですもの。――さあ、そこを退いていただけますかしら?」


 わたくしがペンを走らせると、セレスティアが纏っていた豪華な法衣から「黄金の刺繍」が剥がれ落ち、彼女が座る玉座に、巨大な“差押さしおさえ”の赤札が貼り付けられました。


「あ……ああぁ……っ!」


 玉座から崩れ落ちる、かつての女帝。

 黄金の街『オーラム』の輝きが、一瞬にして色褪せ、ヴィクトリアという名の「支配者」の下で、誠実な数字の街へと塗り替えられていく。


「……精算、完了ですわ。……セレスティア様。……あなたには、これから一生をかけて、帝国への『賠償労働』に従事していただきます。……あ、そうそう。……旧王国のジュリアン様たちが待っている地下水路、まだ人手が足りないそうですわよ?」


 絶叫し、兵士たちに引きずられていく女帝。

 その背中を見送ることなく、わたくしはカエルス陛下の方を向き、優雅に一礼いたしました。


「陛下。……お待たせいたしました。……大陸の帳簿、すべて白紙クリーンに戻しましたわ」


「……ああ。……見事だった。ヴィクトリア。……これで、誰にも邪魔されずに、私の『個人的な案件』を相談できそうだ」


 カエルス陛下が、わたくしの手を引き、その瞳に熱い輝きを宿して見つめてきました。

 契約の完了。……そして、新しい「生涯契約」の予感。


「……陛下。……わたくしのコンサル料、これからさらに跳ね上がりますわよ?」


「構わない。……私の魂ごと、買い取ってもらうつもりだからな」


 黄金の都に、勝利の鐘が鳴り響きます。

 ですが、わたくしの心拍数は、どの計算式よりも激しく、刻まれ始めておりました。

「あなたの人生、一ゴルドで買収いたしましたわ」


女帝セレスティアの失脚、そして商業連盟の解体。

大陸の富をペン一本で掌握するヴィクトリア様の勇姿、いかがでしたでしょうか。

黄金すらも「ゴミの処分費用」として切り捨てる彼女のロジックこそ、真の王道ですわね。


次話、ついに最終回!

すべてを手に入れた執行官ヴィクトリア。

そんな彼女に、皇帝カエルスが突きつける「最終契約書」の中身とは……?

二人の愛の価値、わたくしが最後までしっかりと鑑定させていただきますわ。


「女帝のプライドがボロボロになるの、最高!」

「ついに次が最後……二人の結末を見届けたい!」

と少しでも感じていただけたら、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで、最後の「投資(応援)」をお願いいたしますわ。


利息以上の「ハッピーエンド」を、最終話でお約束いたします。

それでは、愛の精算まで、あと一歩ですわ。

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