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第26話:大聖堂の強制執行。――神様、その「世界」という担保、本日をもって没収いたしますわ。

地下へと続く階段は、降りるほどに温度を失い、代わりに「金属」と「血液」が混ざったような不快な臭いが強まっていきました。

 辿り着いた最深部。そこにあったのは、想像していた大聖堂の静謐せいひつなどではなく、幾千万もの羊皮紙が血管のようにのたうち回る、巨大な「記録の魔導心臓」でした。


「……ようやく来たか。……呪われた執行官、そして死神の器よ」


 心臓の脈動に合わせて光り輝く、バチカンの姿。

 彼はもはや人の形を保っておらず、半ば装置と融合し、その全身から「神罰」と呼ばれる白銀の稲妻をほとばしらせていました。


「見よ。……これが世界の真実だ。……人類が生きるために必要なマナは、すべてこの『天界の銀行』からの融資によって賄われている。……返済が滞れば、世界は闇に還るのだ! 貴様がしようとしていることは、世界そのものの心中しんじゅうだぞ!」


「あら、バチカン様。……心中、ですかしら? ……わたくしの目には、単なる『悪質な不良債権の隠蔽』にしか見えませんけれど」


 わたくしは、カエルス陛下が放つ漆黒の防壁に守られながら、悠然と歩みを進めました。

 陛下の剣が、迫りくる白銀の稲妻を次々と「精算(切り裂き)」していきます。


「……ヴィクトリア。……この心臓から聞こえる音が、私を苛んでいた『不眠の正体』か」


「ええ、陛下。……世界中の『支払い漏れ』を、あなたの命で補填させようとする最低のシステムですわ。……さて、監査を終わらせましょうか」


 わたくしは懐から『錆びた鉄のペン』を取り出し、それを心臓の「主契約ライン」へと突き立てました。

 ドクン……!

 世界が揺れるような地響きが轟き、心臓から膨大な「数字の奔流」がわたくしの脳内へ流れ込んできます。


「……っ、……ふふ、……これは酷い。……バチカン様。……あなた方、神との契約書を『改竄かいざん』していらっしゃいますわね?」


「何を……っ、何を言っている!」


「三千年前の『創世記契約』。……人類が支払うべき金利は、年利でわずか〇・〇一%。……ですが、この心臓が実際に徴収しているのは、その一万倍以上。……つまり、差額の九十九%は、神へ届く前にこの聖教国の『裏口座』へと還流かんりゅうされていますわ」


 わたくしのペン先から、漆黒のインクが溢れ出し、白銀の心臓を侵食し始めます。

 

「神の名を借りて、世界から命を掠め取っていたのは……。……神ではなく、あなた方『管理者』の強欲だったのです。――これこそが、最大の不法行為ですわね」


『――警告。……契約の瑕疵かしを検知。……管理者権限を凍結します。……清算を開始してください』


 心臓から響く、無機質な「ことわり」の声。

 バチカンの顔が、驚愕と絶望に染まりました。


「な……馬鹿な! 神の理が、一人の小娘の言葉に応えるなど……!」


「数字に貴賤はございませんわ。……嘘を吐くのは人間だけで、ロジックは常に誠実ですもの。……さて、バチカン様。……あなたの『命の残高』、既にマイナスに振り切っておりますわよ?」


 わたくしは、ペンをぐいと捻りました。

 

「――“強制執行フォアクロージャー”。……対象:聖教国中央心臓、およびバチカンの全存在権。……不当利得の返還として、すべてを帝国へ、そして世界へと『差し押さえ』させていただきますわ」


「ぎ、あああああぁぁぁぁぁッ!!」


 バチカンの体が、黒い数式によって喰い破られ、光の粒子となって霧散していきました。

 彼が最後に見たのは、自分が神と信じていた装置が、わたくしのペン一本で「競売物件」へと書き換えられる絶望の光景でした。


 やがて。

 脈動を止めた心臓は、毒気を抜かれたように穏やかな、青い輝きへと変化しました。

 地下に満ちていた「負債の臭い」が消え、代わりに春の風のような清々しさが吹き抜けます。


「……終わったのだな、ヴィクトリア」


 カエルス陛下が、剣を鞘に納め、わたくしの腰を優しく抱き寄せました。

 その瞳から、永遠に消えることのなかった「死の予感」が完全に消え去っていました。


「ええ、陛下。……これで、この世界の『不透明な借金』はすべて清算されましたわ。……明日からは、誰もが自分の命を、誰にも盗まれずに使い切れるようになります」


「……ああ。……そして、私もようやく……本当の意味で、貴公との『未来』を計算できそうだ」


 カエルス陛下が、わたくしの額にそっと唇を寄せました。

 それは契約の完了報告ではなく……もっと甘く、もっと永い、新しい人生の「前受金(さき出し)」のようでした。


「……あ、陛下。……その行為、福利計算で十倍の対価を請求させていただきますわよ?」


「……フ。……構わない。……私の残りの一生を、すべて貴公への『利息』として捧げよう」


 崩れ落ちる聖都の地下。

 わたくしたちは、もはや神も負債も存在しない、新しい日の出へと向かって歩き出しました。


 ……ですが。

 わたくしの手に残った『錆びたペン』が、最後の一瞬、東の方角――大陸最大の経済都市に向かって、不気味に熱を帯びたのを。

 わたくしは見逃しませんでしたわ。


 精算は、まだ終わりません。

 次は……大陸商業連盟の『女帝』、あなたの財布を底から抜いて差し上げますわ。

「神様、その世界という担保、本日をもって没収いたしますわ」


……ふふ。神の心臓すら「競売物件」として処理してしまうヴィクトリア様。

世界を救う方法は、英雄の剣ではなく、一人の令嬢の「監査」だった……これこそが、わたくしの描きたかったカタルシスですわ。


次話、ついに物語は大陸全土を巻き込む『経済最終決戦』へ!

聖教国を失った商業連盟が、最後の悪あがきとして仕掛ける「全大陸・市場封鎖」。

ヴィクトリア様とカエルス陛下が、世界を救うために「世界を買収する」驚愕の作戦とは?


「神を破産させるヴィクトリア様、かっこよすぎて震えた!」

「カエルス陛下との甘い会話、もっとちょうだい!」

と少しでも感じていただけたら、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで、わたくしへの「精算(評価)」をお願いいたしますわ。


あなたの応援が、ヴィクトリア様の次なる「最強の武器」に変わります。

それでは、大陸再編の最終章、ご一緒いたしましょう。

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