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第25話:輝く都の、腐った帳簿。――陛下、この祈りの声、すべて「利息の悲鳴」ですわ。

「……っ。陛下、鼻を押さえて。……この都、空気に『死』が混じっていますわ」


 門をくぐった瞬間の高揚感は、一瞬で吐き気に書き換えられました。

 視界に広がるのは、白銀の装飾が施された壮麗な街並み。透き通るような水が流れる水路と、絶えず鳴り響く聖歌。

 ですが、わたくしの『錆びた鉄のペン』は、そのすべてからドス黒い「負債のノイズ」を検知して、折れんばかりに震えています。


「……ああ。……死神と呼ばれた私でさえ、この澱んだ空気には辟易する。……ヴィクトリア、あれを見ろ。……住民たちの顔を」


 カエルス陛下が指差した先。

 熱心に祈りを捧げ、白亜の塔に向かって跪く民衆たち。……ですが、その肌は土気色に沈み、瞳からは生気が失われていました。

 彼らは「幸せだ」と口にしながら、その実、魂の芯まで枯れ果てている。


「……クロエ。……街中に設置された、あの『祈祷増幅器アンプ』……。……鑑定を」


「……お嬢様。……既に完了しております。……あれは魔力の増幅装置ではありません。……対象者の『感情の昂ぶり』をトリガーにして、寿命を直接吸い上げる“高速生命力徴収機”ですわ。……聖教国は、この都を維持するために、信徒の命を燃料コストとして燃やし続けております」


「……っ、そこまでして、この虚飾を維持したいのか……!」


 カエルス陛下が、怒りに任せて剣の柄を叩きました。

 その時、広場の中央にある巨大な黄金の天秤……『神の審判台』と呼ばれる装置の前に、数名の高位司祭たちが立ちはだかりました。


「不届き者め! 聖なる祈りの場を、穢れた言葉で汚すとは! この都の輝きこそが、神が我らに与えたもうた救済の証……!」


「救済、ですかしら? ……司祭様。……わたくしの帳簿には、これを『不法な生命搾取』と記載しておりますの」


 わたくしは馬車を降り、迷いなくその黄金の天秤へと歩み寄りました。

 司祭たちが慌てて魔術の壁を張ろうとしますが、わたくしのペンの前では、そんなものは「未入力の空白」も同然ですわ。


監査開始オーディット――。……対象:聖都広域エネルギー管理システム『神の天秤』。……鑑定価格、マイナス一兆ゴルド。……理由は、支払不可能な『命の負債』の累積による倒産状態ですわ」


 わたくしは、ペンを天秤の基部に、力任せに突き立てました。

 キィィィィンッ……!

 耳を劈くような、何万人もの悲鳴を凝縮したような異音が、都中に響き渡りました。


「な……っ、何をする!? 天秤を、神の理を傷つけるな!」


ルール? ……あら。……あなた方が勝手に書き換えた、自分たちに都合の良い『借金の規約』のことかしら? ……司祭様。……現在、この装置が吸い上げている命の量は、規定の八倍。……その余剰分がどこへ流れているのか、わたくしのペンがすべて追跡トレースしておりますわよ」


 わたくしがペンを捻ると、天秤から黄金の液体のような光が溢れ出しました。

 ……いいえ、光ではありません。それは、人々の生命力が澱み、腐り果てた『負債の膿』。


「……陛下。……この膿の先、地下の最深部に、バチカン様が隠している『真の帳簿』がございますわ。……そこには、神々との契約を超えた、この世界を破滅させるための“禁忌の借用書”が眠っております」


「……行こう、ヴィクトリア。……この腐った都の皮を、一枚残らず剥ぎ取ってやる」


 カエルス陛下が、漆黒の魔力を爆発させ、天秤ごと司祭たちを吹き飛ばしました。

 黄金の街並みが、物理的に崩れていく。

 その下に隠されていたのは、幾千ものパイプが血管のようにのたうち回る、機械仕掛けの地獄。


「精算のお時間ですわ。……司祭様。……あなた方が今まで『奇跡』と呼んでいたものの、本当の代償……。……今から一秒残らず、あなた方の命で補填・・していただきますわね」


 天秤が停止したことで、街の輝きが急速に失われていきます。

 ですが、それと引き換えに、住民たちの顔にわずかな血色が戻り始めました。


「おのれ……おのれ、ヴィクトリア! 地下の『大聖堂』へ来い! そこで貴様は知るだろう! この世界の“真の債務者”が誰であるかをッ!」


 地下から響く、バチカンの呪詛のような声。

 わたくしは、ペンを握り直し、深淵へと続く階段を見据えました。


「……ふふ。……世界の債務者? ……面白いですわね。……どんな相手だろうと、わたくしのペンから逃げられる『数字』など、存在しませんわ」


 カエルス陛下と視線を交わす。

 そこにあるのは、もう契約などではない。――運命を共に清算する、共犯者の絆。


 さあ、地獄の帳簿、最後の一頁ページを捲りに行きましょうか。

「この祈りの声、すべて利息の悲鳴ですわ」


聖都の輝きを「生命力の搾取」として解体するヴィクトリア様。

信仰の仮面を剥ぎ取った後に現れた、機械仕掛けの地獄の光景、いかがでしたでしょうか。


次話、ついに地下最深部の『大聖堂』へ!

そこで待つバチカンと、彼が守る「世界そのものの負債」。

執行官ヴィクトリアが下す、史上最大の『破産宣告』をどうぞお楽しみに。


「聖都の裏側のエグさが最高にそそる!」

「天秤をペンで壊すの、スカッとした!」

と少しでも感じていただけたら、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで、わたくしの「最終監査」の支援をお願いいたしますわ。


利息以上の「絶望と救済」を、物語のクライマックスでお約束いたします。

それでは、真の精算の時間です。

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