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第23話:神罰の強制解雇。――維持費の出ない騎士団など、ただの「重たい粗大ゴミ」ですわ。

「――神の名の元に、滅びを! 不浄なる令嬢と、死神の王を討てッ!」


 バチカンの絶叫が引き金となり、白銀の甲冑が地を蹴った。

 神罰騎士団。その数は五十。一人が一個師団に匹敵すると謳われる彼らの突撃は、帝都の石畳を震わせ、大気を引き裂く。


「……陛下。一分いちぷんほど、お時間をいただけますかしら?」


 わたくしは、目前に迫る剣のきらめきを扇で遮ることもせず、隣に立つカエルス陛下に問いかけました。

 陛下は漆黒の魔力を纏った剣を抜き放ち、不敵な笑みを浮かべています。


「いいだろう。……一分と言わず、一秒で塵にしてやってもいいが?」


「いいえ。……暴力で解決しては、彼らの『資産価値』がもったいないですもの」


 わたくしは懐から『錆びた鉄のペン』を取り出し、宙に舞う騎士たちの中心へとペン先を向けました。


「監査、並びに――“資産凍結アセット・フリーズ”を開始しますわ」


 騎士たちの持つ白銀の剣が、神聖な光を放ちながらわたくしの喉元に届こうとした、その瞬間。


「――っ、魔力が……抜けていく……!?」


 先頭を走っていた騎士が、喘ぐような声を上げ、その場に崩れ落ちました。

 一人、また一人。

 無敵を誇った神罰騎士団が、まるで電池の切れた玩具のように、その動きを止めていきます。


「な……何を……何をしたぁ! 我が騎士団は、神の恩寵によって動いているのだぞ!」


 断罪台の上で、バチカンが狂ったように叫びました。


「あら、バチカン様。お忘れかしら? 彼らの鎧や剣に魔力を供給している『聖教国の中央サーバー』……。……そこへ繋がる魔力のパイプラインは、たった今、わたくしの新通貨アストレアのネットワークに『強制買収バイアウト』されましたの」


 わたくしはペンをくるりと回し、無様に床を這いずる騎士たちを指しました。


「彼らが消費している魔力は、一分あたり金貨十枚相当。……わたくしの計算によれば、聖教国の現在の残高では、あと三秒分しか支払えませんわよ? ……あ、今、三秒経ちましたわね」


 カチッ、と。

 わたくしのペンが空中で音を立てた瞬間、騎士団の白銀の鎧から完全に光が消えました。

 魔力による重量軽減を失った数千トンの特殊合金が、騎士たちの体に重くのしかかります。


「ぐ、ああああッ!? お、重い……! 動けん、鎧が……脱げない……!」


「精算のお時間ですわ。……陛下、あの方たちはもう、ただの『梱包された鉄屑』に過ぎません。……お好きになさって?」


「……クク、面白い。……剣を交える価値すらないか」


 カエルス陛下が、漆黒の剣を一振り。

 放たれた衝撃波が、動けない騎士たちをボウリングのピンのように弾き飛ばし、広場の隅へと積み上げました。

 一分。

 わたくしの宣言通り、最強の軍団は「処理待ちの在庫」へと成り下がったのです。


 わたくしは、呆然と立ち尽くすバチカンへと視線を戻しました。


「さて、筆頭審問官様。……騎士団の維持費すら払えない組織に、わたくしを裁く権利があるとでも? ……あ、そうそう。……あなたが今立っているその断罪台。……この広場の占有許可証をわたくしが今しがた買い取りましたので。――不法占拠につき、即刻退去を命じますわ」


「ひっ……!? き、貴様……貴様は、悪魔だ……! 数字で世界を、神を冒涜する悪魔め……!」


 バチカンは、震える手で懐の魔導具を起動させました。

 空間が歪み、転移の光が彼を包み込みます。


「……逃げるな、ヴィクトリア! 『聖都』へ来い! そこには、貴様のような小娘の手には負えない、真の神の理が……裁きが待っているぞ……!」


 捨て台詞と共に、バチカンの姿が消え去りました。

 後に残ったのは、積み上げられた鉄屑(騎士)と、静まり返った帝都の群衆。


 わたくしは、ペンを懐にしまい、カエルス陛下の腕へとそっと手を添えました。


「……陛下。……お客様が、お帰りの際にお支払いを忘れていったようですわ」


「……ああ。……ならば、こちらから徴収に伺うしかないな。……聖教国の本拠地まで、執行官殿の『出張監査』といこうか」


「ええ。……楽しみですわ。……神様が隠している裏帳簿の最後の頁、わたくしのペンで真っ赤に塗りつぶして差し上げます」


 帝都に、新しい時代の勝鬨が上がります。

 ですが、わたくしの目には、北の空に浮かぶ不気味な「巨大な負債」の影がはっきりと見えておりました。


 さあ、次は聖都の『全資産差押』ですわよ。

「兵を動かす前に、予算の確認をなさるべきでしたわね」


最強の騎士団を「ただの鉄屑」に変えてしまう、ヴィクトリア様の徹底的な合理主義。

暴力が数字に屈する瞬間ほど、心地よいものはございませんわ。


次話、舞台はいよいよ聖教国の心臓部、聖都へ!

そこには、神々すら手出しできない「禁忌の負債」が眠っている……!?

ヴィクトリア様とカエルス陛下が、聖都の城門で突きつける「史上最大の請求書」をどうぞお楽しみに。


「動けなくなった騎士団の無様さが最高!」

「出張監査というパワーワードに痺れる!」

と少しでもワクワクしていただけたら、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで、わたくしの「出張費」の支援をお願いいたしますわ。


投資していただいた分は、聖都崩壊のカタルシスでたっぷり配当させていただきます。

それでは、北の果てまで、精算の旅を続けましょう。

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