30.小鳥に名前を付けました!
サブタイトルの通し番号が間違っていたため、訂正しました。
混乱させてしまい申し訳ありません。
アルルが持ってきてくれたキルティングのような布を木箱に敷き、そっと小鳥を横たえる。
そしてその傍に、エスバンが持ってきてくれた布にくるまれた湯たんぽ(この世界にもあることに感動)を置いて、保温する。
「可愛いですね・・・」
アルルがキラキラした目で小鳥を見ている。
いつもクールなのに珍しい!可愛いもの好きとみた。
「あれ、この鳥こんな色だったか?真っ白だと思ってたけど」
エスバンが首をひねる。オーラは見えなかったけど、それに染まったこの羽の色はわかるんだ。どういう仕組みなんだろう?
不思議な異世界、何が起こってもそういうものだと思ってるけど。
「あなたたち、何をやっているのです」
後ろからかけられた言葉に、3人そろってぎょっとして振り返る。
訝しげな顔をしたサマンサが、部屋の入口に立っていた。
「サマンサ、あの、鳥が・・・」
「鳥?」
サマンサは眉をひそめつつ私たちに近寄ると、木箱を覗き込んで「まあ」と小さく声を上げた。
「さっき、庭で木から落ちてきたの」
「そうですか・・・」
「ね、サマンサお願い!様子見てていいでしょ?返して来いとか言わないよね?!」
捨てられた犬猫を拾ってきて、親にお願いする気持ちとはこんな感じだろうか。
経験がないからわからないけど、サマンサに両手を合わせて頼み込む。
サマンサは少し逡巡していたが、はぁ、とため息を一つついた。
「旦那様が不在ですので仕方ありませんね」
「・・・ありがとう!」
「ですが」
サマンサは厳しい顔で続ける。
「きちんとお嬢様が責任をもってお世話をなさいませ。万が一その小鳥が死んでしまったとしても、それは小鳥の運命ですから受け入れなければいけません」
それは当然の話で、私は真面目な顔でサマンサに誓ってみせる。
「死なせない。きちんとお世話するわ」
「わかりました」
そこでようやくサマンサは微笑んでうなずいてくれた。
「私も協力しますわね」
「俺も。何かあったら言えよ」
アルルとエスバンの力強い言葉にありがとう、と返しているとサマンサがパンパンと手を叩いた。
「では、この話はここまでにしましょう。お嬢様は今からお茶会のレッスンを始めます。アルル、準備を」
「はい」
アルルは慌てて出ていき、エスバンも「じゃあな」と片手を上げて仕事へ戻っていった。
「お嬢様も手を洗ってらしてください」
「あ、はい!」
私はちらりと小鳥のオーラを確認する。・・・うん、綺麗な色だ。大丈夫だろう。
さあ、サマンサの地獄のお茶会レッスン開始だ!
「やっぱり地獄だった・・・」
痛ててて、と自分で肩をもむ。
使用人の数が少ない今は、夕飯前の忙しい時間にアルルの手を煩わせるのも申し訳なくてマッサージは断った。
サマンサはとにかく姿勢に厳しい。
母様はどちらかといえば話題や表情などに厳しいが、サマンサは姿勢や所作の美しさにこだわった指摘をしてくる。
でも確かに、うつむいて猫背で茶をすする貴族令嬢とかなんだか嫌だよね。
すっと姿勢を伸ばし、凛とした態度で美しく茶を嗜む姿を目指して頑張ろう。
こわばった身体をほぐすようにストレッチをしていると、不意に視線を感じた。
ん?と思って視線の方を見ると、机に置かれた木箱から小鳥が顔を出していた。
!!!!
か、か、かわいいんだけど!!
くるんとした目に、愛くるしい顔。
前世で可愛すぎると一時期話題になった鳥・・・シマエナガに似ている。
愛嬌のある顔つきが好きで、私もマスコットを持っていた。それにそっくりだ。
飛んじゃう、かな。
ドキドキしながら近寄るが、小鳥はくりくりと目を動かすだけで逃げる様子はない。
そっと右の手の平を上に向けて、小鳥の前に差し出す。
小鳥はちょん、とくちばしで私の手のひらをつついた。
そのとたん。
何か大きな温かいもので身体が包まれたのがわかる。
「えっ?!」
つつかれた手の平から広がる温かい空気。
いや、違う。これはオーラだ。
碧がかったオーラが小鳥から私の手の平へ、手の平から私の身体全体へと流れていく。
流れていく・・・いや、吹き抜けていく?これは風?
風のエレメンタル・・・精霊の力?
不意にそんなイメージが頭の中に浮かぶと、ふわりと目の前の小鳥が羽ばたいた。
そして、とんっと私の手のひらに乗る。
「ピュ」
「え?」
「ピュピュ」
鳴き声?
鳴き声まで可愛いなんて、天使かよ。
私はおそるおそる反対の手を伸ばして、小鳥をそっと撫でる。
小鳥は嫌がる様子もなく、むしろ気持ちよさそうに目を細めている。
「お前、どこから来たの?お母さんは?」
「ピュ」
「いないの?迷子なの?」
「ピュ」
「じゃあ、完全に元気になるまでうちにいる?」
「ピュイ!」
まるで返事をするような鳴き方に、思わず笑ってしまう。
小鳥はわきまえてますとばかりに私の手の平からぴょんと飛び出すと、また木箱の中に戻ってくつろいだように羽を手入れし始めた。
「小鳥も精霊の加護が強いと、頭がいいとかそういうものなのかな・・・」
こちらの言葉を理解しているような態度に首をかしげるが、もちろんよくわからない。
先ほどの私まで包むようなオーラは、間違いなくこの子のもので、かなりの強さだった。
あれが精霊の加護だとすると、この小鳥は風のエレメンタルの強い加護を受けているのだろう。
風のエレメンタルか・・・。
ゼファス様と一緒だな。
きっと、ゼファス様もこの小鳥と同じような綺麗なオーラの持ち主なんだろう。
「あ、そうだ。小鳥さんって呼ぶのもなんだし、名前つけちゃっていいかな」
そう話しかけると、小鳥は首をかしげてこちらを見た。
何がいいかなあ。小鳥だから・・・ことちゃん、とか?
・・・自慢じゃないけど、私は名付けが下手くそだ。
ペットを飼った経験はないのだけど、最近はゲーム内で結構ペットだったりお供だったりがついてくることがあって、それに名前を付けることが出来た。
サモエドという種類の犬には「サモエ」。
ハムスターの夫婦には「ハム夫」と「ハム子」。
チョコボには「choco」。
そう名付けて、有希にはさんざん「安易すぎるだろ!!」って言われたっけなあ。
でも、カッコつけて仰々しい名前を付けたところで、多分みんな呼ばないんだよね。
有希の家にはうさぎが飼われていて、ニンジンから名付けた「キャロッティ」っていう名前があったんだけど、結局家族全員が「うさ」って呼んでいたというね。
まったく、人のこと言えないでしょって話。
と、いうわけで。
「あなたの名前はシマ。シマエナガ・・・じゃないとは思うけど、シマエナガのシマちゃんで!」
シマは気に入ったのか呆れたのか「ピュイ」と一声鳴いてくれた。




