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24.兄様たちの剣術模擬戦

ゼファス様に会える。


そのことに思い当ったとたん、息の仕方を忘れてしまったみたいだ。

無意識のうちに呼吸を止めてしまっていたようで、あ、まずいと思った時にはふらっと身体を揺らしてしまっていた。

「シャル!」

横にいたノルディスが咄嗟に支えてくれたため倒れなかったものの、酸欠状態のためか頭がくらくらするのでその場でへたり込んでしまった。


「シャル、大丈夫か!」

地面に両手を付けたまま顔を上げると、青い顔をしたシェアト兄様が私に向かって両手を差し出していた。

その左手に私の右手を乗せると、「だ、いじょうぶ、です」とどうにか声を出す。


吸ってー・・・吐いてー・・・

吸ってー・・・吐いてー・・・


息を整えてから兄様の手を借りてゆっくり起き上がると、3人とも動揺した顔でこちらを見ていた。

あ、後ろにはハーディエンス家の護衛さんまで寄ってきている。

めちゃくちゃ恥ずかしい。

推しに会えると興奮した挙句、酸欠になったとか頭悪すぎる。


「ふぅ、すみませんでした。軽い立ちくらみです」

えへへと笑って答えると、兄2人はほっとしたように息をつき、ノルディスは眉をひそめた。

「さっきの、魔術のせいじゃないか?だから言ったのだ、きちんとした方法を学んだ上で適切な指導者の下で・・・」

「魔術だって?!シャル、魔術を使ったのかい?」

ノルディスのお説教を、兄様の声が遮る。グッジョブ、兄様。

「ノルディス様に無理言って見せていただいたのですよ。それを面白そうだと思って、マネしたら発動しちゃったんです」

「見ただけで出来たのかい?」

少し驚きを含んだ声でアームズ様が訊ねる。

「はい」

「ノルディス、何を見せたんだ?」

「基本の・・・ファイアとウォーターです」

アームズ様は感心したように「ほう」とつぶやき、シェアト兄様はなんだかちょっと誇らしげな顔になった。

「さすがシャルだね。本当に君は優秀だよ」

そう言って頭をなでてくれた兄様は、直後に少し怖い顔になる。

「だけどね。ノルディス殿が言っていたように、きちんとしたやり方を学んでから使うべきだ。使い方ひとつで危ないことにもなるのだよ、魔術は。だからこれからはこんな無茶はしないと約束してほしい」

「・・・はい」

発動しないと思ったノルディスのお説教を兄様からされちゃったけど、そこは素直にうなずいておいた。

「ノルディス様から、魔術の本を借りる約束をしたのです。今後はまず本を読んで基礎を学ぶことから始めますわ!」

それでも魔術を予習するのはやめないよという気持ちで言うと、兄様は苦笑してうなずいてくれた。

「向上心があるのはいいね。ますますエレメンタルプリンセスらしくなってきたじゃないか」

からかうように言うアームズ様に、「もちろん。目指してますから」とすまして答えてみせた。


そろそろ邸に戻ろうか、というシェアト兄様の誘いにうなずきかけて思い出す。

そうそう!兄様方が2人そろったので、おねだりしたいことがあったのだ!

「シェアト兄様!アームズ様!お願いがあるのですが!」

「・・・シャルのお願い・・・」

複雑な顔をしないでください、お兄様。そんな無茶なことじゃない・・・はずです。

「私、魔術だけじゃなくて、剣術も見たいんです!少し、見せてもらうわけにいきませんか?」

「それは、2人で模擬戦でもして欲しいってこと?」

アームズ様の問いには、はい!と答える。

「だってさ。どうする、シェアト?」

「模擬戦は学院から禁じられているだろう」

「まあ、少しぐらいならいいんじゃないか?こうやって」

と、アームズ様は先ほど私たちが木切れを拾い集めた場所から、少し長い枝を2本取ってくる。

1本をシェアト兄様に渡しながら「お遊びだって言い訳できる程度だろ、こんな棒切れじゃ」

と笑った。

兄様も仕方ない、と肩をすくめると、私とノルディスには少し離れるように言った。

私たちはそれに大人しくしたがって、少し離れたところにあるベンチに腰かけて、兄様方の模擬戦を見学することにした。


2人はそれぞれ護衛から胸当てのようなものを借り、身に着ける。

まあ、棒切れとはいえ、まともに突かれたらちょっとケガしちゃいそうだものね。

「じゃ、始めるか」

アームズ様の声と同時に、2人ともが棒を目の前に真っ直ぐに立てて目と目を合わせ、一礼。

おぉぉ~なんだかかっこいい!

「騎士の礼だ。これから試合をする相手に敬意を表して行う」

横からはノルディスの解説。なかなか贅沢な環境だ。


礼が終わると同時に、兄様がトンっと右足で軽くステップしたかと思うとひらりと飛んだ。

そしてそのまま、頭上からアームズ様に向かって棒を振り下ろす。

「っつ!」

咄嗟に後ろに飛び退り、兄様をかわすアームズ様。


「おぉ、ジャンプ斬り!それを避けてのバックステップ!」

「ジャンプ・・・なに?」


初撃を避けられたことで、次の反撃に備えたのか兄様が距離を取る。

そこへアームズ様が棒を構えて突っ込み、兄様の横腹を狙う!

兄様が体制を崩しながらも、それを自分の棒で受け流す。


「横切りからのパリィ!兄様上手い!」

「・・・パリィ?」


体制が崩れているのを逆手に取ってか、アームズ様の胸元を狙って一打突く。

おもわずのけぞったアームズ様の足元を狙い、兄様が棒を振るった!

バキッ!

見事にアームズ様のブーツに当たった棒は、音を立ててあっさりと割れてしまった。


「・・・やられたな」

「これで、15勝14敗だな」

ふふふ、と笑うシェアト兄様に、アームズ様が言い募る。

「それは違う。14勝14敗、1引き分けだろ」

「まだ言うのかい、君は。あの時は引き分けではなく、明らかに僕が・・・」


なんだか言い合っている2人だけど、私は初めて見る剣術に大興奮だった。

そりゃあ前世でも剣道とか柔道とかの試合は見たことあるけど、私には無縁だったし。

こんな風に体全体を使って剣(棒だけど)で戦うというのは、いかにもファンタジーなゲームの中の物というイメージなのだ!


「突きから足払いのコンボ攻撃か。これに魔術も加えると、スキル回しを考える余地は無限に広がりそう!」

うきうきしながらそう言うと、さっきから私のつぶやきにいちいち突っ込んでいたノルディスが、やれやれと首を振った。


「本当に君の言うことがさっぱり理解できない」

さっきからそればっかり!

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