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23.エレメンタルプリンセスを目指します!

「探したよ。こんな庭の端の方まで来てたとはね」

そう言うシェアト兄様とアームズ様、2人の姿を確認して、軽くひざを曲げて礼をする。

「お話は終わられましたの?」

問うと、アームズ様は満足げな顔でうなずき、「ああ。ありがとう、シャルリア嬢」とにこやかに答えられた。

シェアト兄様も「シャルは本当に気が利くね」と穏やかに言う。


あ、やっぱりなんか密談してたんだ。

ノルディスを連れ出したのは正解か。

そう思ってちらっとノルディスを見ると、彼は今気づいたとばかりの顔をして、アームズ様と兄様、そして私を見比べていた。


「それより、エレメンタルプリンセスを目指すとはね。いいね!心意気が大事だよ」

嬉しそうなアームズ様。

「シャル、君なら出来るとは思うけど、かなり大変だよ?無理して体壊したりしないかい?」

少し心配そうなシェアト兄様。

対照的な2人の反応に、思わずくすくすと笑ってしまう。

「ノルディス様にも無謀だって言われましたわ」

「ノルディス様・・・」

横で小さくその名前の主がつぶやくが、あたりまえでしょうに。

対外的には身分差があるのだから、人前で呼び捨てになんかしませんってば。

「でも、無理ではないと思うのです。私の努力次第ですわね」

だってゲームでは出来たはずだし、というのは心の声。

入院していたのもあって、2週目からも攻略を見ずに『エレプリ』をプレイしていたし、実際エレメンタルプリンセスにはなれないまま死んじゃったわけだけど、有希はクリアしていたはずなので、絶対そのルートはあるはずなんだよね。


うんうんとうなずいていたアームズ様が、からかうような顔をして、ノルディスを見た。

「無謀、とは厳しいこと言うね。シャルリア嬢はエレメンタルプリンセスにはふさわしくないとでも?」

「別に、そういうつもりではありません」

ノルディスはむすっとした顔で言い返す。

アームズ様も、ノルディスをからかいすぎなんだよね、きっと。

多分それは、彼なりの愛情表現なんだろうけど。

前世では兄弟姉妹に恵まれず、今世ではシェアト兄様のわかりやすい愛情を向けられている私が言うのもなんだけど、ノルディスにはそれを理解するにはまだ幼すぎるのかもしれないな。

とはいえ、ノルディスもアームズ様のことが嫌いなわけでは決してない。

嫌いなら、「兄上の婚約者候補なら!」なんて、私にお説教するわけないもの。


「ノルディス殿。シャルはこう見えてとても優秀な子なんですよ」

兄様がニコニコしながら、ノルディスに圧をかける。やめてあげて兄様。

ノルディスがあわあわしてるじゃないの。

「まあ、兄様!こう見えてってどういう意味ですの!」

軽く拗ねたふりでそう兄様に言うと、「ははっ、ごめんごめん」と笑いながら返ってきた。

やっぱりシェアト兄様、軽くシスコン入ってるよね。

わかりやすい愛情の手本だなあ、なんて思っていると、ノルディスが持ち直したようにメガネをくいっと上げて言った。

「シャル、いえシャルリア殿がどうこうというわけではなく、私たちの世代にはマリーアンジュ王女様がいらっしゃいますから」

「ああ」

「そうだね」

ノルディスの言葉に、兄2人も納得したようにうなずく。

そういえば、と思いついて聞いてみる。

「アームズ様とノルディス様は、マリーアンジュ王女様に謁見なさったことがおありなんですか?」

「私はあるよ。噂にたがわずお美しく、まるで地上に降りてきた天使のようだったよ」

アームズ様は王女の姿を思い出したのか、どことなくうっとりとした表情でそう言った。

反対にノルディスは冷静なまま首を振る。

「私はまだない。多分、初めてお会いするのは芽吹きの宴ではないだろうか」


芽吹きの宴。

春1の月に王都にて開催される行事で、フランズベルト王国ではかなり大きめの催しになる。

新年の始まりと春の訪れを祝う式典であり、平民たちの間でもその日は祝日ということで大規模な祭りが開催される。屋台が出たり、大道芸人が来たりと賑やかだ。

貴族の間での芽吹きの宴はそれよりももっとフォーマルな意味合いが強く、朝の王族への謁見から始まる。

国内のほぼすべての貴族が一堂に会し、国王からお言葉を頂くのだ。

その後、式典は昼の園遊会と夜の舞踏会の2部に分かれて開催されるのだが、昼の園遊会の主役は翌年から学院へ入学する貴族の子女たちだ。

1年後の学院入学に先立ち、我が家にはこのような子女がおりますよといった紹介と顔合わせが行われる。社交界へのプレデビューといったところか。

王都在住の高位貴族ならともかく、うちのような王都からは少し離れた伯爵領やもっと遠く離れた男爵領などに普段住んでいる貴族は、子供が産まれた時に王族に挨拶に来る程度なのだ。

だから、どの家系にどのような子女がいるのかは噂レベルでしか知らない者が多く、この園遊会で初めて顔を合わすということになるのであった。


「そうですわね。私も、芽吹きの宴にてお目にかかることになりそうです」

当然私もノルディスと同じ年なので、参加することになる。

お茶会とかそういう軽いのですら経験ないのだけど、大丈夫なのかな?

そもそも、マリーアンジュ様が主役だろうから、誰も私のこととか気にしないよね。

それに、国内の全貴族が来るならかなりの大人数になるだろうから、大人しくしてたら目立たないだろうし。


・・・まって。国内の全貴族?1年後の学院入学者?

急にあることに思い当って、息を飲む。


ゼファス様に、会える。

その時がついに、やってくるのだ。

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