↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/165

21.魔術が発動した!

これは転生したのが乙女ゲームの世界だったってのが問題か。

いや、乙女ゲームの中にも、もちろん戦闘なんかがあるものも結構あったんだけど。

それでも『エレプリ』には、確かにほとんどなかった気がする。

イベントとして数回あったぐらい。


乙女ゲームだけではなく、RPGも大好きだった私としては戦闘がないことは不満だったけど・・・それで良かったのかもしれない。


確かにゲームでやる戦闘は面白い。

だけど、実際に自分が命を懸けてやるというのは全然違う。遊びじゃないんだ。

いざ戦闘となった時にゲームのように動けるとは思っていない。

自分が、誰かが、それで傷ついたり命を落としたりしてほしくない。

現実ではやっぱり怖いし、「戦う」ということに対する忌避感もある。

なので、やっぱりこの世界でよかったと思う。


とはいえ、魔術!知ったからには小さなものでもいいから使ってみたいのが、当たり前だ!


「ねえねえ、魔術って私にも出来るものかな?」

私の問いに、ノルディスはふむ、と顎に手を当てて考え込む。

こういう思惑にふける姿ってほんと絵になるよね。さすがインテリイケメン枠のキャラだ。

ニヤニヤしてると、ものすごく嫌な顔をされた。なんで。


「出来ないことはない、と思う。が、危険を伴うこともあるので、やはり最初は適切な指導者か、丁寧に解説してある本を参考に始めるべきだ。私もそうだったので」

「ノルディスは本で勉強したの?」

「ああ」

「じゃ、その本貸してほしい」

「構わないが・・・」

ノルディスは訝しげな表情でこちらを見る。

「理解できるのか?難しい言い回しも多いぞ?」

「んー・・・わからないけど、本は読んでみたい。読むだけでも面白そうだし」

そう言った私に、ちょっと驚いたような顔のノルディス。

「・・・なんでそんな顔するの」

「いや、その・・・本など、読むのか?」

「はあ?」

バカにしてるの?と思ったが、念のため確認したくて聞いてみる。

「ひょっとして、普通の貴族令嬢って本は読まないの?」

「・・・わからないが、少なくとも今まで出会ってきた方々は、本の話などしなかったな」

思い出すように話すノルディスに、そんなものかもな、と軽くうなずく。

「この家の蔵書も、領地経営とかに偏ってるから読みにくいのは読みにくいのよね。だから、家には本がないとか、あっても読まないとかって方々がいてもおかしくはないわね」


ふむふむと1人で納得していると、ノルディスが何か言いたげな感じでこちらを見た。

「どうしたの?」

「ああ、いや・・・その、さっき兄上も言っていたが、一度我が家に来ればいいと思う。本も貸せるし、よかったら王都図書館にも案内するから」

と、彼は口ごもりながらもそう誘ってくれた。


王都図書館?!やっぱりあるんだ!

感動して色々聞いてみたところ、かなり大きな図書館らしい。

本の閲覧や貸し出しには身分証明が必要なのだが、さすがのハーディエンス家は息子レベルでもフリーパス状態なのだとか。

だから、ノルディスと一緒に行けば、きっと色々な本を見れることだろう。

これは一度、ハーディエンス家にお邪魔させてもらわなきゃね!


魔術はしばらくお預けなのかなあ。

そう思いながら、先ほどノルディスが燃やした木切れを見る。

どうだっけな・・・確か、指先をこうやってこする感じ・・・


「ファイア」


つぶやくと同時に、自分の身体から何かがぶわっと立ち上ったのが分かった。

たとえるなら、波のようなうねり。そのうねりが伸ばした手の先からほとばしったかと思うと、木切れから炎がボッと燃え上がった。


「わぁっ!」


驚いて叫ぶと、炎は大きく揺らぎ、徐々に小さくなると消えてしまった。

先ほどのウォーターで湿気ていた木切れから、ぷすぷすと白い煙が立ち上っている。


「・・・・・・今の」

呆然としたままつぶやく。

「今の、魔術、だよね」

「そうだな。・・・まったく無茶をするな、君は」

やれやれと、呆れたように首を振るノルディス。


「・・・す・・・」

「す?」

「すごいよ!ノルディス!魔法使いだよ、私!」

思わず感極まって、隣のノルディスの身体に手をまわして、しがみつく。

「ちょ、え、おい!」

「出来ちゃったー!夢じゃないよねー?!」

「は、はな、離してくれ!」

ノルディスはなんかわめいているけど、そんなことはどうでもいい。

魔法。いや魔術。

まさか本当にこの手から生み出せるなんて・・・!


ゲームの中では、魔法使いが一番好きだった。

ナイトやシーフもかっこいいし、踊り子や弓使いなんかもいい。

だけど、自分の手から生み出される魔法を駆使して敵を倒し、時には回復魔法で味方を癒し、補助魔法で敵のスキルを封じたり味方のスキルを底上げしたり。

そんな万能感あふれる魔法使いに、ずっとずっとなりたかった。

その夢が今、少しだけだけど叶ったのだから。


離せ離せとあんまりうるさいので、ノルディスから離れて自分の手をしげしげと見つめる。

今も、まだ何かが身体の中でぐるぐるしている。

これは精霊の力?一般的に、魔力と呼ばれている力。

普段、魔道具を動かす時は微量すぎて感じないが、こうやって一度感じてしまうとよくわかる。

精霊王から与えられし、不思議な力の流れを。


「ウォーター!」


今度は手を伸ばし、水の魔術を発動してみる。

手の先からあふれ出した魔力が瞬く間に水に変わっていき、ばしゃん!と大きな音を立てて飛び散る。


「これは・・・」

横で、ノルディスがつぶやく。

「僕より魔力が高い・・・?いや、まさか・・・」

それはないでしょ、と言いかけてふと気づく。

ノルディスは確かに土のエレメンタルの加護を強く受けているが、その加護は魔術や剣術といったものにはあまり影響しない。

むしろ、魔術はともかく剣術に関してはノルディスは少し苦手だったはず。

ならば、あまり火のエレメンタルの加護は高くないのでは?


「負けないよ」

「え?」

「ノルディス、私、負けないよ!魔術、もっと勉強して使いこなしてみせる」

そう言って不敵に笑ってみせると、ノルディスは一瞬気圧されたように口を引き結んだ後、「私だって負けない」とつぶやいた。

「じゃあ、私たち、友達でライバルだね!」

そう言って手を差し出すと、ノルディスは少しためらった後でぎゅっと握手してきてくれた。

「そうだな。お互いに頑張ろう」


なんか、学院に入る前から青春スポーツマンガっぽくなってきた!

これぞ青春、これぞ友情だね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。