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16.ノルディスとの和解?

今頃、兄様たちの密談、捗っているかしら?

何のお話なんだろ・・・好きな方の攻略情報とか?お年頃だしね!



「・・・おい」



それとも試験のお話?

2人とも優秀そうだもの。あれ、でも試験って終わったばっかりなんだっけ?



「・・・見せたいものとはなんだ?」



あ、休暇中の遊びの話とかかな?

お忍びで平民の格好をして、街歩きとか・・・そういうやつ?



「・・・いい加減に手を離してくれないか」



はぁ、と後ろから聞こえた大きなため息にふっと意識が戻る。

振り返ると、むすっとした顔でノルディスが突っ立っていた。

そこでようやく、この庭園の一角まで彼の手を引いて連れてきたことを思い出した。


「ごごごご、ごめんなさい!」

ぱっと慌てて手を離すと、「まったく君は」ともう一度ため息をつかれた。

「さっきから本当に何なんだ。いきなりぶつかってくるし、いきなり走り出すし。それでも伯爵家の令嬢なのか?!」


おぅ・・・またお説教だわ。

このお説教癖はほんとゲームと一緒だなあ。


それにしても、と正面に立つノルディスを見つめる。

私の知っている(ゲーム内の)ノルディスより、当たり前だけど小さい。身長もあまり変わらないし、体もひょろっとしている。

ちょうど学院へ通い始めるころが男の子の成長期に当たるせいか、現在の印象はかなり幼くなる。


でも、性格はもう出来上がってるんだな。

お説教癖も、こうやって誰にでも真っ直ぐなところも、そして・・・多分、兄との微妙な関係も。


「どうして、その、見るんだ」

「え?」

急にそわそわしだしたノルディスに聞き返す。

落ち着かないように首の後ろをさすりながら、目線を外して彼は問いかけてきた。

「さっきから、私のことを、その、じっと見ているじゃないか。その、君は僕を綺麗と言ってくれたが僕は男で、むしろ君の方が、いや、その・・・わ、私は何を言ってるんだ・・・」


ノルディスってば一人称がバラバラになってるよ。そういえば彼の一人称って「私」だったっけ。

最近、私とかって言いだしたのかな?お年頃だねえ。


なんか口の中でもごもご言っているノルディスに対し、改めてきちんと礼をする。

「失礼いたしました。同世代の殿方にお会いするのは初めてで、私もどのような対応が正しいかわからなかったのです。ご不快な思いをさせてしまったのなら申し訳ありません」

「え・・・」

「正しい伯爵令嬢の在り方をご存じであるのなら、ぜひご指導いただけましたらありがたいと存じますわ。私、貴族令嬢の友人がおりませんの」

たたみかけると、ノルディスはぐっと詰まったように顎を引いた。


うーん、ちょっと嫌味っぽくなったかな?本心ではあるんだけど。

隣の領地まで1日~2日、みたいなとこに住んでいると、なかなか他の領の貴族の方々と交流することがないんだよね。

幼い頃の遊び相手は、もっぱら使用人の子供たちだったし、その子たちは少し大きくなると立場の違いを意識するのでずーっと仲良しというわけにはいかないのだ。

少し年上でよく遊んでくれていたニーナがそのまま私付きのメイドになっているが、何度お願いしても態度はなかなか崩してくれない。時々一緒にお茶しながら、おしゃべりしてくれる程度だ。

もちろん領民には同世代の少女たちもたくさんいて、父様と母様の人望か、視察についていくと積極的に話しかけてくれるし、領都で人気の駄菓子をくれたり、逆にこちらからお土産として領主家料理人マーカス特製のクッキーを持参したり、それなりに交流はしてる。

けれど相手は平民だし、彼女たちにとって私は「ご領主のお嬢様」なので、対等な友達というかそういうのとはまた違うのだ。

だからこそ学院が存在するというのもあるのだろう。私のような他領の貴族とあまり接点のない者も、交流を深めることが出来るのだから。


ノルディスは少し困ったように逡巡していたが、やがて大きく息をつくと、まっすぐこちらを見つめてきた。

「その・・・私だって正しい貴族令嬢の在り方などよくわかっていないのだ。ただ、その、君のやり方は私が今まで出会ってきた方々とは違うから、慣れないのだ。こちらこそ、不快にさせたのなら申し訳ない」


・・・・・・!

思ってもいなかった反応。

なんだ、ノルディス、結構いい奴じゃないか。

ゲームではなかなか仲良くなれなくて、嫌味ばっかり言われてたから警戒しすぎたかな。


「いいえ、ノルディス様!不快などとは全然思ってませんわ!」

私は思わず満面の笑みを浮かべて、ぎゅっとノルディスの手を取る。

「ちょ、また、手・・・」

「どうか、私と友達になってくださいな!」

「手・・・え?」

「友達、ですわ。アームズ様とシェアト兄様のように」

「兄上たちのように・・・いや、しかし私たちは同性ではないのだから・・・」

「まあ!」

私はさっきまで自分でも思っていたことを棚に上げて畳みかける。

「同性ではなかったら、友情は育ちませんの?そんなことはありませんよね?宰相様も奥方様以外の方と全くお話になっていないわけでもないでしょう?」

「う、まあ、そうだな、父上のもとには男女問わずいろんな方がいらっしゃるが」

「でしょう?!ね、たとえ同性でなくても仲良くなれるんですのよ!」

お父様のこと、尊敬してるもんね、ノルディスは。そこを突いてみたところ。

「そう、だな。確かに。わかった、では友達になろう」

思った通り彼は、私の勢いに気圧されたかのようにうなずいた。


「じゃあ、ノルディス、私のことはシャルって呼んでね!」

「私の名を呼び捨て?!それはハーディエンス家に不敬・・・いや、不敬じゃないのか・・・シェアト殿も兄上に対しては親しい話し方だし・・・しかし私も女性に対してそのような愛称で呼ぶのは・・・いやしかし・・・」

ノルディスはまたもやぶつぶつと口の中でつぶやいているけど、気にしない。


やったー!!友達、ゲットだぜ!

異世界で初めてのお友達、しかも攻略対象!

友情モード、なんてものはなかった(多分)と思うけど、好感度って恋愛じゃなくてもいいよね?!


これでまた、エレメンタル・プリンセスに一歩近づいたよ!!

完全にゲーム脳な残念主人公です。


次話よりしばらくノルディス視点になります。

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