15.兄2人の密談 (シェアト視点)
投稿したつもりになってました・・・。遅れてすみません。
シャルリアとノルディス殿が出て行った後、あっけにとられているアームズを尻目に、メイドに紅茶のお代わりをお願いする。
新しい紅茶がカップに注がれたところで、僕は人払いを命じた。
部屋の隅に控えていたヨアンも一礼して、下がっていく。
「・・・いや、まいったな」
感心したようにつぶやいたアームズに、笑みがこぼれる。
うん、間違いない。ちゃんとシャルリアはわかって出て行ったのだ。
僕とアームズが内密の話をしたがっているということに。
「ふふっ、僕の妹は優秀だろう?」
「まったくだ。お前の言うとおりだな」
アームズは降参したとばかりに肩をすくめると、ニヤリと笑った。
「気に入った。俺の嫁にもらうかな」
「はあ?冗談言うなよ、シャルはどこにもやらないよ」
軽く睨むと、アームズはおいおい、と首を振る。
「そっちこそ冗談言うなよ。出来のいい貴族令嬢は、よい縁談を得ることによってその家の繁栄と安寧をもたらすというのは常識じゃないか」
「そんな常識はフロンターレ領にはありませーん」
「・・・お前なあ」
やいのやいのと子供みたいなやり取りをしばらくした後で、もういいだろうとばかりにアームズが片手を上げた。
先ほどまでとは打って変わって鋭い目つきでこちらを見る。
「で?わかったことは?」
「うん」
僕は視線を落として手を軽く組むと、少し前のめりになって答えた。
「やはり、ここしばらく王太子様はどこにもお姿を現されていないようだよ。少なくとも、学院を卒業なさって以降は全くとも言っていいほどだ」
「確かか?」
「うん。かなり広い範囲の人間に聞き込みが出来たと思う」
「ふむ・・・お前がそう言うなら確かだろう」
アームズは腕を組み、ソファに身を預けた。
僕も黙ったまま、紅茶に口を付けた。
僕とアームズは、ある使命を受けている。
それも、アームズの父であるダリウム・ハーディエンス宰相閣下の依頼で。
息子であるアームズが父に協力するのは当然ともいえるが、僕が宰相閣下に協力するのは二つの理由がある。
一つはアームズの親友で、彼が何よりも僕を信頼してくれているということ。
そしてもう一つは、僕が「隠密行動に長けている」ということだ。
自分で言うのもなんだが、僕は父と母のそれぞれ良いところを得て、それなりに整った容姿をしていると思う。
だが、なぜか目立たないのだ。
小さいころからそうだった。
普通に家の中をうろうろしているつもりなのに、いつの間にか探されていて「ここにおられたのですか!」と驚かれたり。
うっかり庭の片隅で昼寝をしてしまったら、夕飯まで誰にも気づいてもらえずに風邪をひいてしまったり。
シャルリアとかくれんぼをすると、決まって僕が見つからないとシャルリアが泣き出すので慌てて出ていく羽目になったり。
そういう時、強く自己主張すればよかったのかもしれないけど、なんとなくまあいいかなで済ませてたらすっかり身をひそめるのが得意になってしまった。
そうなると今度はだんだん面白くなってきて、学院へ入学すると同時にあちこちふらふらしながら情報を集めるのが趣味になってきたのだ。
学院には大勢の生徒がいる。
貴族社会の縮小版と言ってもいい。そこには、打算も嫉妬も渦巻いている。
賢い者は、すでにポーカーフェイスを身につけ、真意を悟られないように笑顔と柔らかい物腰で乗り切っている。
でもまだ大人になり切れていないのが大多数だ。親から漏れ聞いた内緒話や噂話を、うっかり漏らしてもらう者も多々いるのだ。
そういうのを伝え聞いたり、うまく誘導して聞き出したりしながら集めていく。
ま、自分でもあまりいい趣味だとは思わないけどね。
いずれ領主となったその時には、集めた情報を切り札に使うことも厭わない。
そうして僕は父と母と大切なシャルリアを守っていくつもりだ。
ちなみにアームズは僕がそうやってふらふらしているのを不審に思っていたらしい。
彼は宰相の長男だけあって幼い頃から何度も危ない目にあったようで、人の気配に敏感だ。その高性能な感覚に僕は引っかかったらしく、油断のならない相手だと警戒していたとか。
しばらく観察するうちにどうやら害はなさそうだと思って話しかけてきてくれたのが、仲良くなった本当のきっかけだ。
僕もアームズの明るさと屈託のなさ、その裏にある宰相の息子という重圧に耐えうる芯の強さを気に入って、僕たちはやがて身分を越えた親友となった。
シャルリアに言ったお爺様云々というのは、建前だ。
本当は僕のことをアームズから聞き、興味を持ったらしい宰相閣下から「親戚なのだから一度家に連れてこい」と息子に命令があったのだ。
そこで初めて僕たちは自分たちに血の繋がりがあることを知り、大いに驚いたのだ。
「とにかく」
アームズが組んでた腕を解き、頭を人差し指でトントンと叩く。
「王太子様のお姿はこの1年ほど誰も見ていない。そしてそのことは誰も話題にしてないし気にしていない様子、ということだな」
「だね・・・大したことない情報で、ごめん。宰相閣下に申し訳ないよ」
「いや、別にかまわないだろ」
アームズはソファに身体を投げ出して、ため息交じりで言う。
「どうせ、そこまで俺達には期待してないよ、父上は。何のためにそんな情報が必要なのかもわからないし」
それに、と続けて
「ま、多分理由は教えてもらえないままだろうよ。ノルディス辺りは知ってるかもだけどな」
そう言って自嘲じみた薄ら笑いをしてみせた。
優秀な弟への妬み、父の期待に応えられない自分のふがいなさ、宰相の息子なのだからという周囲の目からの負担。
彼の抱えるものが理解できるだけに、僕は何も言えず、ただ黙って親友の肩を叩いた。
実は理亜のプレイしていたゲーム画面の背景のあちこちにも、神出鬼没なシェアトの姿が写っていたという裏設定がありますw




