14.空気の読める日本人(前世ですが)
日々、少しずつブックマークが増えていることに感謝しております。
読んでいただけてるんだな、と実感しております。ありがとうございます!
ひとしきり笑った後、アームズ様はちょっとだけ顔をひきしめた。
「いや、真面目な話、一度シェアトと一緒にうちへおいでよ。父上は多分いないけど、母上はきっと喜ぶと思うんだ。親戚なわけだしね」
うなずきかけて、ん?と止まる。親戚?ハーディエンス家とうちが?
ぱっとシェアト兄様を見ると、兄様もうなずいている。
そして私に向かって優しい顔で説明してくれた。
「父上が文官家の出身だっていうのは聞いたことがあるだろう?父上の父上・・・前フロンターレ家当主である僕たちのお爺様は、アームズたちのお爺様・・・つまり前宰相様の弟なんだよ」
なんと衝撃の事実!父様の出身である文官家って、天下のハーディエンス家だったの?!
兄様の説明によると、うちのお爺様は前宰相様に負けず劣らず優秀な方だったらしいが、ハーディエンス学院で出会った、フロンターレ家の箱入り娘のお婆様に一目ぼれしたらしい。
侯爵家の次男ということで、学院卒業後は伯爵位をもらって宰相の右腕となって働く予定だったらしいけど、同じ伯爵ならとあっさりフロンターレ家の入り婿として次期領主となったとか。
なかなか情熱的で素敵だなあ、お爺様。
「今でも、学院には有名なロマンスとしてお二方の話が残っているんだよ」
「お二方ともシャルリアが産まれる前に亡くなられたから、お会いしたことはないけどね」
口々に教えてくれる兄様とアームズ様に
「・・・知らなかったです。教えてくださって、ありがとうございます」
そう答えて笑うと、2人は満足そうにうなずいてくれた。
日本でいう『はとこ』になるのかな?従兄弟の子供同士ってことね。
意外に近い関係だったんだ。
そもそもそれを知っていたアームズ様の方からシェアト兄様に学院で声をかけてくださったのがきっかけで、2人は仲良くなったのだとか。
「シャルリアが学院の話を聞きたがっていただろう?アームズは一度うちへ来たいと言っていたから、ちょうどいいかなと思ってね」
と、ニコニコ笑う兄様。
「それに、ノルディスもシャルリア嬢と同じ年齢だからな。今から顔を合わせておくと、学院でも仲良くなれるじゃないか!」
と、なんだか嬉しそうなアームズ様。
うーん。
兄様の話はわかるけど、アームズ様の話はどうかなあ。
確かに同性同士なら学院入学前から顔を合わせておくのも悪くないとは思うけど、異性だし仲良くって言ってもね。
そりゃ身分問わずが学院の不文律だとはいえ、侯爵家のノルディスに伯爵家の私が仲良さそうに接してたら何言われるかわかったもんじゃない。
前世でも、学校で人気のある先輩とお兄さんが友達だという理由で先輩に声かけてもらった同級生が、女の先輩方に吊るしあげられる、なんて出来事もあったんだよね。
とはいえ、頭から否定するわけにもいかないし。
あ、でもエレメンタル・プリンセス目指すにはノルディスの好感度アップは必須なんだよね・・・どうせ入学したらマリーアンジュ様の虜になるんだろうから、今のうちに友好度底上げしておくのも大事か。
そんなことを考えていたら、向かいに座っているノルディスが不機嫌そうな顔で言った。
「兄上。仲良くと申されましても、私とシャルリア殿は異性同士。兄上とシェアト殿のような関係になれるとも思えません。兄上はいつも無茶なことばかりおっしゃる」
・・・さっき私が考えてた通りで、全く同意見ではあるけど。
ちょっとびっくりした。
もっと思慮深い性格かと思ってたけど、結構ずけずけ言うなあ。
ほら、アームズ様がちょっとムッとしている顔つきになった。拗ねちゃったじゃない。
仕方ない、と私は凍る空気に気が付いてませんよ~を装いながら
「同じ学院の生徒として、共にいろいろなことに挑戦し、良い刺激を与えあう存在になれたらいいと思いますわ」
と微笑を浮かべつつ答えてみた。
アームズ様は少し目を見開いた後、機嫌を直されたように笑ってうなずかれた。
その後はノルディスも余計なことを言わなかったので、学院でのお二人の様子や最近の王都での流行りの物など、和やかに会話は続いた。
と、会話が一瞬途切れた時にアームズ様がシェアト兄様に軽く目配せされたのが分かった。
ああ・・・これは何かあるな。
そもそも、たかだか私に会いたいからといって王都から1日かかるフロンターレ領まで、わざわざアームズ様が来られるとは思えない。
多分、兄様か・・・あるいは父様に何か用事があって来られたのだろう。
これでも前世は空気を読むのに長けた日本人ですから。
私はついと立ち上がり、ノルディスに向かって手を伸ばした。
「ノルディス様。友好を深めるためにも、ご一緒にお庭を散歩しませんか?お見せしたいものがあるのです」
「・・・は?」
きょとんとしてこちらを見上げるノルディスの手を取り、強引に立ち上がらせる。
「お、おい、手を・・・」
「お兄様、アームズ様、失礼してよろしいでしょうか?私、ノルディス様と遊んでまいります!」
シェアト兄様は少し戸惑った顔で私を見たものの、すぐにその顔に笑みを浮かべてくれた。
「そうだね、話ばかりで退屈になったかな?行っておいで」
「ありがとうございます!行きましょう、ノルディス様!」
こうして私は、部屋からノルディスだけを連れ出すことに成功したのだった。




