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10-16 母の仕事


 母親の会社は従業員が1000名程度の企業らしい。全国にいくつかの支部があるらしく、母親は父親と話して転勤を受け入れたため、母の都合で幼少期は2年に1度程度転勤していたとのことだ。


「転勤についてどう思ってた?」


 母はそう聞いた。仲良くなるという行為を繰り返すことは子供ながらに大変だったが、小学生特有の明るさのようなものですぐ仲良くなれたのでそこまで苦ではなかったと伝えた。


「でも、引っ越したいというわけでもないし、引っ越さないで済むならそれに越したことはないかな」


 僕はそういった。苦ではないというだけで、決して大変でなかったわけではなかったということだ。


「やっぱり主夫は珍しいと思うけど、それについて何か変に思ったことはある?」


 僕はそう伝えた。珍しいと知ったのは中学生になった後だった。また変だとは思ったことがない。僕はそう思っていることを素直に伝えた。


「なるほどね」


 父親はそういった。自分は話を戻し、母親に何をしているのかを聞いてみた。


「自分は今会社でエンジニアとして働いているんだけど、企業として企業に画像認識AIを売り込むBtoBのソフトウェア開発的なことをやってる。最近ChatGPTが出てきてから、AI系の会社に対する注目も上がってきてるかな」


 母はそう言った。母親は学生時代にエンジニアリングに興味を持っていたようで、昔はディジタル画像処理をやっていて、今ではAI系の研究開発を行っているようだった。


「AIってどこまで行くと思う?」


 自分は母親に聞いてみる。


「わからないけど、コードを作るとか、自動運転とか、だいたい人間が技術的にできることはAIにもできるようになると思う。それでも、『責任を取る』だとかスポーツ・芸術など権威性の強いものの代替は難しいんじゃないかなぁ」


 母はそう言った。母親は、わかりやすい例を挙げるけど、昔絵を描いたことがあるから、どう思うか聞いてほしいと言って1枚の絵画が写された写真を見せてくれた。そこには、富士山と思われる山の周りに、月と思われるオブジェクトが複数描かれていた。月と月の間は独特の彩色で光?が描かれている絵だった。


 綺麗だとは思うがどうしても月が複数あることは変だと思う。独特の彩色の光も不気味だ。自分はこのことを伝えた。


「実はこれゴッホが描いた絵なんだけど、私が描いたというと印象変わるでしょ? このような絵画の芸術における権威性はAIでも置き換えられないんじゃないかと思ってる」


 母親はそういった。言われてからゴッホの絵を見てみると、確かに同じような彩色の絵が多いように思う。

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