10-14 報告
「何が起こっているの?」
両親は困惑したようで、説明を求めた。僕は説明した。
「先ほど目の前に現れた女性がまさにパラレルワールドの自分なんだけど、そのパラレルワールドとこの世界を行き来できるのがこの装置で、この装置のボタンを押すと、」
僕はそういってボタンを押した。すると向こうの世界についた。凪ちゃんと千織、そして両親が一緒に食事をしているところを目にした。僕はもう1回ボタンを押して元の世界に戻った。
「一瞬目の前から消えてたと思うけど、これが僕が2つの世界を入れ替わるための道具」
両親は実感できたかは別として、自分が何をいっているかを否が応でも理解せざるを得なかったようだ。
「信じ切れてはないけど、まぁ言いたいことはわかった」
父はそういっていた。客観的には不可解な現象を見せられたとしても、それでも納得できないのが人間というものだろう。ビールを飲んでいると、凪ちゃんがこっちの世界に戻ってきたようだ。
「改めて説明させてください。私はパラレルワールド、こことは違う世界で生まれた凪です。説明すると長くなるのですが、私は凪くんと部分的に記憶を共有しています。子供の頃から、なぜか知り得ないはずのことを彼が知っていたということはありませんでしたか?」
凪ちゃんはそういった。そういえば、言っていないはずのことを知っていたということが幼少期からあった気がすると話していた。凪ちゃんは続ける。
「その部分的に記憶を共有しているという性質のせいで、2つの世界が混戦しつつあるということを時空のおっさんの世界で聞きました。その混線のせいで、世界が不安定化しているらしいです。不安定化を防ぐためには、どちらかの世界の凪がいなくならなければならない、とのことです」
両親は困惑しているようだ。僕から話し始める。
「もちろん、僕も2つの世界を存続できないのかということを時空のおっさん世界を管理する人から聞いたけど、その結果として、どうも難しいようだった。それで僕とこの子のどっちかが世界を捨てなければいけないということで、いろいろ話した結果こっちの世界を捨てることにした、ってわけ」
父も母も理解できていないようだ。自分は、肉体的に死亡したという扱いになるということを打ち明けた。両親はびっくりしていたが、信じられないようで、怒ったり悲しんだりということは見てとれなかった。
「ごめんね」
父はそう言った。母も申し訳ないと言っていた。僕も本当に申し訳ないと伝えた。もう選択は済んでいるので引き留めても無理だと諦めているかのようだった。
「伝えたかったことは伝えられました」
凪ちゃんはそういった。両親はそれでも仕方ないと思っているようだ。彼女が元の世界に帰る。両親は泣いてはいないようだった。




