9-19 インタビュー
「確かに玲の字って、だいたい名前でしか使わないもんね」
僕はそういった。熟語だと玲瓏(れいろう;玉が美しい様子や、玉が美しく響く様子)などがあるようだが、日常的には名前以外の用例はないだろう。
「そう考えると、凪っていい名前だよね」
本郷はそう言ってくれた。
「もともと自分の出生前診断では女の子だって聞かされてたらしくて、女子としてありえる名前を色々考えていたらしいけど、実際生まれてきたら男子だったらしくて、考えてた名前リストで男子として自然だったのが凪しかなかったらしい」
僕はそう説明した。凪ちゃんの世界では出生前診断が当たった世界なのかもしれない。
「凪ちゃんに妹がいるのに僕にいないのはなんでなんだろ?」
大村はそう聞いた。
「僕はほぼ死産寸前だった話したっけ?」
大村も本郷も聞いてないと思うと言っていた。僕はその辺の話を説明した。
「聞いた話だから詳しいことはわからないんだけど、僕が生まれる可能性はほとんどなかったらしくて、母体にも一命を取り留められるかも確実ではないほどの大ダメージが入っていたらしいんだよね。奇跡的に僕は生まれてきて、母親も結果的には大丈夫だったらしいんだけど、本来もう1人産もうとしていたのを諦めたって聞かされてる」
僕はそう伝えた。
「生まれてきて、そして母親が無事でよかった」
本郷はそう言ってくれた。僕は、ありがとう、と伝えた。
「私の母親場合はそのような話はなかったようで、特に問題なく妹も生まれてきています」
彼女はそう付け加えた。自分は彼女の世界の方が良いのではないかという方向に揺らいでいた。
話をしているともう22時だ。
「そろそろ解散にする?」
本郷はそう提案した。大村もそう言っていた。
「了解」
僕と凪ちゃんもほぼ同時にそういった。僕たちが飲んでいた飲み物ももうなくなっていたので、ビニール袋に入れてコンビニのゴミ箱に捨てた。
本郷と大村は反対側の電車に乗る。凪ちゃんは元の世界に戻ってから定期で家まで帰ると言っていた。僕は1人で家まで向かって行った。
SNSを見ていると、映画のインタビュワーから連絡が届いていたことに気がついた。送信タイミングは30分前で、駅前で缶飲みしていたタイミングに来ていたようだった。
「いただいた文章を読み終わりました。最後まで読みましたが、まさかあの後にこんなことがあったとは驚きです。ぜひ話を聞かせていただけないでしょうか」
彼はそういった。僕は伝えた。
「インタビュー自体は問題ありませんが、今回は、私の経験や語った内容をベースに、新しいストーリーを創作していただけると嬉しいです。
前回の作品は非常に素晴らしかったので、今回は私の話を一つの素材として、見事な作品に仕上げていただけると幸いです」
彼は、承知しました、と返信してくれた。




