9-18 新しい彼女
「大丈夫?」
自分は意識がどこかに行っていたようだった。
「改めて寒いな」
夜空を仰いでいると建物の間を冷たく強い風が吹き抜けた。十分に厚着をしているはずだが自分は震えてしまう。凪ちゃんは自分に比べるときている服が2枚ほど少ないように感じる。
「寒くないの?」
自分は凪ちゃんに聞いてみる。彼女はまだギリギリ大丈夫だが、これ以上寒くなってくると流石にきついラインまで入ってくるかもしれないと言っていた。
「なるほどね」
僕はそう相槌を打つ。寒いのもあと数ヶ月すれば終わりだ。自分はそう思っていた。
「話変わるけどさ、俺マッチングアプリ始めたって話前したじゃん、実際に出会ったんだよね」
自分は前回会った時、彼がアプリを始めたという話をしていたのをふと思い出した。
「早稲田の同学年のMさんなんだけど、聞く話によると小学校が同じだったらしくて、ランチ行った時その辺の話題で盛り上がった」
彼の話に対して,凪ちゃんは「小学校が同じだったら覚えてるもんじゃないの?」と聞いていた。実は最初は彼もMさんも覚えていなかったようで、話を聞いてみると大学の学年としては同じでも浪人しているため年齢としては1個上のようだった。
「正直、同級生でも100パーセント覚えているかと言われると自信ないけどね。全員の顔が思い浮かぶわけじゃないし」
彼はそう付け加えた。
「写真とかあるの?」
本郷はそういった。大村はカメラロールを操作して、Mさんと彼のツーショットを見せてくれた。
「この右のがMさんね」
彼はそういった。茶色に染まった髪と耳元に見える大きめのピアスが特徴的だった。凪ちゃんも画面を覗き込んでいた。
「知ってる人かと思ったけど、知らない人だった」
凪ちゃんはそういった。彼はなるほどと言っていた。どうやら小学校時代の人に面影が若干あるようだが、名前はMではなかったとのことだった。
「本郷は彼女いるの?」
大村はそう聞いていた。彼はまだいないと言っていた。彼はそこまで彼女を第1優先にしていないらしい。僕も同じ感じだ。
「凪の元カノのレイって本名なんだっけ」
大村はそう聞いていた。僕は本名は渡辺玲で、名前カタカナ表記ではなく「王編に令和の令」であることを伝えた。一方、ラインやインスタグラムなどで実際に名前を呼ぶときはほとんどカタカナで呼ばれることが多いらしい。
「なるほどね」
大村はそうリアクションしていた。
「漢字だとレイって読む名前が多くて、説明がめんどくさいから普段はカタカナを使ってるらしい」
凪ちゃんはそう説明を付け加えた。




