9-17 幼少期の好み
「自分も小学生の頃鉄道が好きだったけど、確かに今思い出そうとしても何も覚えてないな」
僕は思ったことを言ってみる。大村も昔は通りかかる鉄道を見て車両名だとか路線番号名などいうことができたが、今は何も覚えていないと言っていた。一方、本郷はそう言うのに興味を持たずに育ってきたようだった。
「私も小学校の頃好きだったけど、ほんとに全部忘れてるかも」
凪ちゃんもそういった。
「女子で鉄道好きだった子いなかったから、話が合う女子いなかった覚えがある。今でも多分レアだよね」
確かに女子で鉄道好きは男子に比べると少ないイメージがある。実際数でいうと現状は少ないのが事実だろうが、少ないことが当然だとも思えない。なぜ鉄道女子って少ないんだろうねと僕は聞いてみる。凪ちゃんは言った。
「それ私も気になって調べたことあるんだけど、1つは社会的な刷り込みとか『鉄道は男の子向け』と言ったバイアスだとか、そう言ったものが『鉄道=男子のおもちゃ』っていう価値観を作り上げているところがあるらしいって聞いたことがある」
それは自分も聞いたことがあるし、理屈として納得できる話だ。大村も本郷も真面目に聞いているようだった。そこに凪ちゃんが付け加えた。
「でもそれだけで説明できるかと言われると怪しくて、人間の社会の影響が全くないチンパンジーだったかボノボだったかの動物におもちゃを与えても、オスの動物が好んだおもちゃは『人間社会でも男子のおもちゃ』とみなされている電車とか恐竜のおもちゃで、メスの動物が好んだおもちゃは『人間社会でも女子のおもちゃ』とみなされているぬいぐるみとか人形だったと言う傾向が得られたと言う話を聞いたことがあるんだよね。後続の研究では反論されてたりして明確かと言われると怪しいんだけど、私的にもそういう先天的な差があってもおかしくはないと思ってる」
凪ちゃんは確かこんな感じのことを言った。実際に調べてみると、アブストラクトを流し読みした範囲ではそのようなことが書いてあったと思う。
「私みたいに女子でも電車に興味を持ったりすることもあるだろうし、逆に男子がぬいぐるみに興味を持つこともあるだろうから、傾向と個人の好みは分離した方がいいと思ってるけどね」
凪ちゃんはそういった。僕はぬいぐるみに興味を持ったことはないが、傾向から外れることを根拠にするべきではないと言うのは同意だ。
「凪ちゃんと凪で同じ魂というなら、同じような性格とか好みになっていそうなものだけど、その辺が違うのが不思議だよね」
本郷はそういった。実際、魂が同じだとしても肉体的に異なる以上思考回路の差が出てもおかしくないように感じる。テストステロンなどのホルモン量が2人で同じだとは思えない。
僕はそんなことを考えながら空を見上げた。星がいくつか輝いている。オリオン座も見えた。僕はなぜか泣きそうになってしまった。




