9-13 人間原理
「そもそも、なんで有機化合物から構成される物質が意識を持てるのかということも不思議だよね。宇宙は広いのに、生命体は地球でしか発見されていなしい」
凪ちゃんはそういった。言いたいことはわかる気がする。惑星に生命が生まれる確率は10の10の何乗乗(10^(10^n))分の1と聞いたことがあるが、地球という惑星で生命体が発生した以上、どこか遠い惑星でも生命が発生していてもおかしくないように感じる。遠すぎるだけで観測できないというのが現実だと感じている。
「でもそれは人間原理と同じじゃないの?」
大村はいった。
「人間原理?」
僕は聞き返す。凪ちゃんもピンとは来ていないようだった。大村は話し始めた。
「そういう質問って、『どうして地球という惑星は生命に都合よくできているのか?』という質問と同じだと思うんだけど、言っちゃえば『地球という惑星が生命に都合よく』できていなければ、我々は存在しないだろうし、そんなことを考える余地さえなかったわけじゃん」
自分は彼の言いたいことをなんとなく理解した。
「凪のような人間は何十億人に1人とかなんでしょ? それはとんでもなく珍しいけど、それでも0人じゃないし、実際言い方がいいのかわからないけど選ばれてしまったわけじゃん。もし選ばれてなかったら、何十億人に1人なんてそもそも知ることはなかったわけだしね。うまく言えないけど」
彼もうまく言語化できていないようだった。いくら確率的に低くても、0ではない限り引くことはある。地球は「生命を持つ」というくじを引いたし、自分も40億分の1のくじを引いてしまったというだけだということだった。
自分は納得できない気もするが、そう言われればそうという気がしなくもなかった。
こんな話をしているともう21時前近くになっている。店員からラストオーダーの時間だという通知が来た。僕たちは最後の生ビールを、大村はソフトドリンクを頼んでいた。
「この後どこか行く?」
僕は2次会の予定を聞いてみる。凪ちゃんは何も考えていなかったようだが、お金をそっちが持ってくれるなら行くと言っていた。凪ちゃんはお金を多めに持ってもらって申し訳ないとのことで、明日ゲームセンターでも行かないかと誘ってくれた。本郷と大村も、せっかくだからどこか行こうと言ってくれた。
どこに行くかは店を出てから考えることになる。そんなことを考えていると店員さんが注文を持ってきてくれた。とりあえず、運ばれてきたお酒を飲むことにした。




