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9-2 装置


 彼らは混乱しているようだが、凪ちゃんは落ち着いてください、と言って話を始めた。


「先ほども説明しましたが、私はパラレルワールド、すなわちここではない世界で生まれた凪です。凪から話を聞いていたかは分かりませんが、改めて説明させてください」


 凪ちゃんがそう言って事情の説明を始めようとしていると、店員さんがファーストオーダーを聞きにやってきた。彼女は一旦話を中断し、僕たちは最初の飲み物を頼んだ。大村はソフトドリンクを、僕と凪ちゃんと大村はアルコール飲料を頼んでいた。


 店員さんは僕たちの注文を復唱し、承知しましたと言って厨房の方へと戻っていった。


「改めて説明させてください。私とこの世界にはつながる場所みたいなものがあって、そこを私が通ると移動できるようになっています。1月21日にそれを通じてこっちの世界にきていたとき、時空のおっさん世界でタイムリミットが後2週間だと伝えられました。その日にどうするかを決めなければいけない、ということです。どちらかの世界は肉体的には死亡した扱いになってしまうということですね」


 本郷と大村は本気で聞いてはいなさそうだ。自分としても本気で受け取られる内容だとは思っていない。


「その時に渡されたのがこの装置なんですけれども、この装置を押すと2つの世界の間をどこでも移動可能です。先ほど彼がやっていたみたいな感じですね。私たちしか使えないみたいですけど」


 彼女はそう言って世界観を移動する装置について説明した。僕は僕が持っている装置を本郷と大村に渡してみたが、何回押しても何も起きないようだった。自分は彼らにそれを返してもらった。凪ちゃんが持っていた装置でも同じようだった。


「凪ちゃんも押してくれる?」


 凪ちゃんはボタンを押した。すると彼女が目の前から消えた。数秒後再び目の前に現れる。


「信じていただけたでしょうか?」


 凪ちゃんはそういった。彼らは本気で納得しているかはわからないが、1つの可能性として認めてくれたようだ。


「凪の呼び方が気になったんだけど凪ちゃん呼びって何なの?」


 彼はそういった。どうやら僕が彼女をちゃん呼びしているところに違和感があるらしい。自分は単純に同じ名前を呼ぶことに違和感があるので普段呼ばれることがない名前で呼んでいるだけだと伝えた。


「なるほどね」


 凪ちゃんはそう言った。僕が男女関係なくほとんど下の名前で呼ばれていることに対し、凪ちゃんは基本的に苗字あるいは仲良い人だと下の名前で呼ばれることがほとんどのようで、凪ちゃんと呼ばれることはほぼないと言っていた。


「池下さん呼びでいいですか?」


 本郷はそういった。彼女はそれで問題ないと言っていた。


 そんな話をしていると注文していた飲み物が届く。店員さんは、これからは端末で注文してください、と言ってiPadを持ってきていた。僕たちは乾杯した。

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