8-6 呼び方
「一応言っておくと、本来は僕が死産となることで2つの世界に同じ魂を持つことを避けようとしていたらしいです。しかしながら、僕は生まれてきてしまいました。出生前診断では女の子と聞かされていたにも関わらず、なぜか男の子として、です」
レイは突拍子もないような話を、1つの話として頭で理解はしてくれているようだ。
「こっちの世界が本来あるべき世界だ、ってことですか?」
レイはそう言った。凪ちゃんはどうやらそうらしいと伝えた。いずれにせよ、現状は揺らいでいる状態だ。アルコールが回っているので正常に判断できないと思う。まだ猶予がないわけではない。帰ってからどうするかまとめておきたい。
なんなら本郷と大村に話を聞いてもらってからでも遅くない。自分はそう思うようになっていた。難しい選択をする際、自分は大きく分けて早めに決めてしまうことと、デッドラインギリギリまで迷うことの2択がほとんどだ。今回の件に関してはどうしても後者を選ばざるを得ない。
自分はこの世界を捨てることになってもいいように、家に帰ったら経緯を大雑把にまとめておくことに決めた。
唐揚げやトマトなど多くの物が届く。凪ちゃんは結構食べる方のようだ。自分より多く食べているように感じる。ただ、体質だからかはわからないが標準体型だ。男子にしては普通だが、女子にしては高い身長を考えると、食習慣が成長に影響を与えているのかもしれない。
「ふと気になったんだけど、凪ちゃんの身長って何センチ?」
彼女は170だと言っていた。自分は169だ。数値だけ見るとほとんど変わらない。
「昔から食べるのが好きだったからなのかもしれないな」
彼女はそういった。体を動かすのも好きな活発タイプだったらしく、水泳などのスポーツを高校に入るまでやっていたということだ。高校に入ってからも、ジムなどでトレーニングをしているらしい。自分も体を動かすことは嫌いではないのだが、スポーツはやってこなかった。
それに対して凪ちゃんの妹は158程度で昔から少食らしい。病弱ではないが細いようで、おとなしいタイプだったとのことだ。自分はふと、性格は環境や教育でも変わるだろうが、生まれ持ってある程度決まっている要素もあるのかなと思いを巡らせた。
そんなことを考えていると、レイは僕に対して聞いた。
「そう言えばなんですが、凪くんが凪を凪ちゃん呼びしてるのはなぜなんですか?」
レイは僕に聞く。僕は、同じ人の名前を呼ぶとき、単純に下の名前呼び捨てで呼ぶと個人的に違和感があるからだと伝えた。ややこしいとかではなく、自分が普段呼ばれている呼び方を人に対して使うのに違和感を有している。
「私は凪呼びでいいって言ったんだけどね」
凪ちゃんはそういった。リアルの自分がほとんど凪と呼ばれているのも原因としてあるのかもしれない。
「凪呼びに違和感あって何かいい案ないか聞いてみたら凪ちゃんってよんで、って言われました」
レイは納得しているようだった。
自分は唐揚げを口にする。自分も凪ちゃんもレイもレモンをかけないタイプだ。話していると(直接ではないにせよ)同じ血を繋がっているのだなと感じることがある。
「僕さ、サラダにもドレッシングかけないタイプなんだよね、唇の横が染みるからなんだけど」
僕はふと思ったことを言ってみる。レイは、凪ちゃんも同じこと言ってましたと言っていた。




