8-4 揺らぎ
レイの話し方や表情などは僕が元いた世界と変わっていない。今話しているだけだと完全にはわからないが、おそらく性格についても変わっていないのだろう。自分はそんなことを考えなが運ばれてきたものを飲んだ。
「ちなみにそっちの世界から持ってきた携帯で検索とかできるんですか?」
レイはふと気になったようでそう聞いてきた。自分は検索はできるが何か書き込んだり、メールを送信したりはできないと伝えた。凪ちゃんも同じような現象が起きているようだった。
レイ的には圏外になっていないだけで驚きのようだ。正直自分もそう思う。
「なんで検索はできるのに、書き込みとかはできないんだろうね」
自分はそういう。世界が違うというだけでは色々説明できない事象のように感じる。過度に干渉することはできないということなのか、とでも自分を納得させないと納得できない話だ。
「ゲラゲラ医者の話って知ってます? あの話の中では確か圏外になってましたよね」
レイはそう聞いた。ゲラゲラ医者とは、2012年に書き込まれた不気味な話だ。簡単にいうと、マンションの中庭から異世界に飛ばされた語り手が、謎の施設に4ヶ月ほど監禁され、その間多くの奇妙な体験をするが、最終的にゲラゲラと笑う医者のような存在に助けてもらって元の世界に帰るという話だ。その異世界は、知っている文字なのにその羅列が意味不明だという奇妙な世界である。携帯電話を持っていた彼は、異世界では圏外になっていたらしい。
個人的な体験で言うとその話との類似点はあまり、というか全く感じていない。圏外になっていないのは、基本的に同じような世界だからと言うことなのだろうと思っている。
「ちなみに凪ちゃんはゲラゲラ医者って知ってるの?」
自分は彼女に聞いてみる。彼女は中学生の頃レイに教えてもらって読んだ記憶があると言っていた。僕はレイと話している間に、ゲラゲラ医者の話をお互い知っていることを知って仲良くなった記憶がある。性別だけではなく、細かい部分は少なからず異なっているように感じる。
自分は元気そうにしているレイをみて泣きそうになってしまった。こっちの世界の方がいいのかもしれない。実際元いた世界を捨てる覚悟ができているわけではないが、自分は割と本気でそう思うようになっていた。
自分は後日凪ちゃんに僕の世界でのレイがどうなったか調べてみると伝えた。
「今彼女さんいるんですか?」
レイはそう聞いてきた。自分は今はいないと伝えた。レイと別れてから恋愛する機会もきっかけもないのが現状だ。仲良い女子すらほとんどいない。
「なるほどね」
彼女はそう相槌を打ってくれた。冷静に考えてみると、していないとなると、今の自分(大学2年生)と同学年ということになる。細かい差異の原因も気になるところだ。自分に責任はないだろうが、原因である可能性を否定できない。レイに申し訳ないことを自分がしたとは思っていないが、結果として申し訳ないと思うような未来になってしまったというのは事実かもしれない。
食事が運ばれてくる。正確な名前は忘れたが、チーズとサラダを和えたような料理だった。自分はそれを食べて、少し落ち込んでいたテンションを上げた。




