7-1 世界の違い
時空のおっさん映画の公開から2週間後の土曜日。外を散歩していると凪ちゃんに声をかけられた。どうやらこっちの世界にきてくれていたようだ。なぜかここ最近、凪ちゃんがこっちの世界に長時間いても戻されることが減ったようで、彼女は今までよりも長く話ができると言っていた。
僕たちは家の近くのカフェに向かい、話を聞くことにした。
「こっちの世界で私のお金を使うと面倒なことになりそうだから、そっちでもってもらっていい? 今度私の世界にきてくれたとき、私がお金を出すから」
僕はわかったと伝えた。僕はいつも通りコーヒーを注文する。凪ちゃんも無糖のブラックコーヒーが好きなようで、彼女は自分と同じものを注文していた。
「色々聞きたいことがあるんだけど、いい?」
凪ちゃんはそういった。自分としても聞きたいことは無数にある。彼女は聞きたいことがあったら割り込んでもいいよと言ってくれた。そして、彼女は質問を始めた。
「前も聞いたと思うんだけど、そっちには妹はいないんだよね?」
彼女はそういった。僕には妹はいない。母親は最初2人産みたいと思っていたようだが、1人目の僕を産んだときの母体へのダメージが想像以上に大きく、2人目は諦めたと聞かされていた。
「そっちの母親はどうなの? 凪ちゃんは死産寸前だったとか聞いてる?」
「私がほぼ死産確実だったという話は聞かされてないな、妹もだけど」
僕は生まれてくるのが奇跡レベルだったという話も何回か聞かされていた。凪ちゃんの世界ではそうではなかったらしく、無事2人目も出産できたということだった。
「そっちとこっちで名前も同じなのが怖いよね」
僕はそう言った。凪という名前は男子としても女子としても普通の名前だ。
「妹さんの名前なんだっけ」
僕は彼女に聞く。彼女は数字の千に織姫の織で千織だと言っていた。その名前を聞いて思い出したことだが、自分は出生前診断の段階では女子だと聞かされていたようで、考えていた名前も全てが女性名として自然なものだったと言われたことがある。その中に千織もあったとのことだ。
胎児が男子だとわかる前に画数診断などを済ませてしまっていたようで、男子だとわかってすぐ、考えていた名前の中から男性名として最も自然なものとして「凪」という名前に決まったと言われた記憶がある。
凪ちゃんの名前を踏まえると、結局凪になるのは決定事項だったのかもしれない。自分はそう思うようになっていた。
「話はちょっと変わるけど、そっちの親は何しているの?」
家族構成の際についても気になるところだが、凪ちゃんの母親は、こっちの世界と同じように福井県の企業の管理職として働いているらしい。中学校・高校の頃も、こちらの世界と同じように、母親が単身赴任しており、父親に面倒を見てもらっていたようだ。大学進学と同時に父親が家を出て、福井県のスーパーマーケットでパートをしているのも変わらないようだった。




