7-2 狭間の世界
「そっちでも人間関係が近いのが驚きだよね」
僕はそういった。彼女もそれに同意しているようだった。
2人でそん話をしながらカフェにいると,突然周りが暗くなった。すぐに明るくなったが、その瞬間にカフェは静まり返っていた。気づいたら空が緑色で、周りには自分と凪ちゃんとミステリアスな雰囲気の女性しかいなくなっている。自分は凪ちゃんと目を合わせた。ミステリアスな雰囲気の女性は話す。
「心配しないでください。私はあなた方の味方……と言いたい、というか実際そうなのですが、正直これからいうことを聞いてもそう思ってもらえるかはわかりません。決して危害を加えたいわけではないので、そのつもりで聞いてください」
女性はいやにもって回ったような話し方をしていた。女性は話しつづける。
「あなた方は本来、2つの世界に存在してはいけない存在です。男子の方の凪くんは本来、生まれてくる前に亡くなっているはずでした」
自分は親から「死産になる予定だったものの奇跡的に生まれてきた」と聞かされていた理由を理解した。女性はまた話す。
「この世界はご存知の通り、世界と世界の間にある世界です。この世界には、2つの世界で対になっている存在、いわば魂を共有する存在同士が引かれてやってくることがあります。全ての人は2つの世界に魂を持っていますが、その魂間で記憶や意識の共有はできません。しかし、あなた方はバグのせいでそれができてしまっており、そのせいで世界間の繋がりがおかしなことになってしまっています。このような人は数十億の魂の中に1つくらいの割合であると言われています」
僕たちは顔を見合わせた。かなり珍しいが世界の人口を考えれば自分だけではないだろう。日本にも似たような人がいるのかもしれない。世界の数が無数にあるのならば、同じような体験をしている人も無数にいるだろう。
「この空間はその世界の間を修復するための空間です。今までも何回かきた事があるでしょう? この空間で、あなたがた……いえ、『あなた』は1人になってもらいます」
凪ちゃんは、それはどちらかの記憶がもう片方に移るということですか、と話す。女性は、そうです、と言っていた。どうやらどちらかが世界を捨てなければならないらしい。
「じゃあ、どちらかに合体した後、選ばれなかった世界の自分はどうなるんですか?」
僕はふと思ったことを聞く。彼女はため息をついて話した。
「……あまり伝えたくありませんが……」
彼女はそう言って一呼吸した。急に体が寒くなるのを感じた。彼女は話す。
「もし悪い予感が浮かんだのであれば、それで正解です」
僕は彼女の魔の取り方や言い方で全てを理解した。そして僕は周りを見渡した。凪ちゃんは脳が理解を拒んだかのようにフリーズしていた。僕たちが落ち着いたタイミングを見計らって女性は話す。
「今ここで選択しろというのは苦しいかもしれません。どっちの世界にするかよく考えた上で選択してください。これを周りに誰もいないところで押すと2つの世界を移動できるので、上手く使ってください。他人は使えないので紛失しても問題はありませんが、紛失しないようにしてください。2週間後またここに集まってもらいますので、その時までに2人でどうするか話し合っておいてください」
我々の困惑を理解し、それに配慮しようとしている意識は感じる話し方だ。そう言って女性は僕たちに右手で収まる大きさの鉛筆のような形状のものを渡してくれた。




