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第六話 最初の任務


 「ここは俺たちで、片付けるぞ!」


 ツルギ達の前に立ち塞がるのは、『ボンバーベアー』と呼ばれる魔獣。緊急任務として、ボンバーベアーの討伐を与えられたツルギ達は戦闘体制に入る。



 「アレイシス! あの爆弾、当たったら即死なんだよな!?」


 「ああ、見た感じ、間違い無いだろう。そして、あの威力と範囲だ……建物の倒壊も危惧しなければならない」


 アレイシスが的確に情報を共有する。そして目の前の状況から取るべき行動をツルギは考える。


 (当たったら即死。そして建物の倒壊もありうる。周辺の人達の安全の確保が優先か……)


 (いや、そうじゃない! 今は、あいつをどう攻略するか……。じゃないと、俺らも負けて、全滅だ)


 周囲の人々の警戒と身の安全は大事だが、戦闘において、優先すべきは、危害を加えるものの討伐。仮にあの魔獣を生かしておくと、人々を逃がす隙にさらに被害が拡大してしまうかもしれない。その判断でツルギはボンバーベアーの討伐を最優先とした。


 (とりあえず、戦う前に俺らがどのくらいの戦力をもっているか確かめないとな)


 「みんな、最初に確認したいんだが、なんでもいい! 自分の技は持ってるか!?」


 ツルギは仲間の技の所持を確認する。自らはまだ所持していないため、あまり戦力にならない。その為、仲間に頼る必要がある。


 「僕は、まだ未完成ではあるが何個か技は持っている」


 アレイシスは、まだ完成されてはないが技を何個か所持している。


 「俺は、剣は持ってるんだけどな…実は、これといって技は持ってねぇ」


 「私も、フォースきゅんと同じ! まあ私の場合は、武器も持ってないけどね…」


 一方でフォーティンスとカナリアは技は使えない。しかもカナリアは武器すら持っていない為、戦えるかすらもわからない。


 (俺とフォースはある程度戦える。戦力は…アレイシスのみ。なら、まずはこの方法で勝ち筋を掴む!)


 そしてツルギは思いついた自分なりの最適解を仲間に伝える。


 「みんな、とりあえずあの熊野郎の能力を知ることが最優先だ。そこで、前衛一人と、それに続いて、残り二人の役割で相手に攻撃を仕掛ける」


 「なるほどな、それで、その役割っつうのはどうするんだ?」


 「前衛は、この中で一番戦力になるであろう、アレイシスに任せたい。そして、俺とフォースは後に続いて攻撃だ」


 ツルギは前衛を唯一技を持っているアレイシスに任せ、自分とフォーティンスはアレイシスの後ろから攻撃する作戦を提示した。しかし、ツルギは思い悩むところもあった。


 「アレイシス、この役割はとても重要だ。前衛がこけちまうと、この作戦は多分失敗する……」


 この作戦において、前衛は一番重要である。そんな役割をアレイシスが受けてくれるのか、ツルギはいささか心配であった。


 「でも、前衛は、唯一技を持ってるアレイシスにしかできない。やってくれるか?」


 ツルギは真剣な眼差しでアレイシスを見る。そしてそれに応えるように、


 「もちろんだ。僕にしかできないことなら、よろこんで前衛を張ろう」


 と、アレイシスは自分の胸に拳を当て決意の意思を表した。それにツルギは安心して、表情が柔らかくなった。


 (どうやら、心配してた俺がバカだったみたいだな)


 「カナリアは、周辺住民をできるだけ遠くに避難させてくれ!」


 「わ、わかった!」


 カナリアは走り出した。どんどん遠くなっていくツルギ達に「死なないでね」と言い残して――。



 「よし、じゃあ作戦通りに、な」


 「ああ、わかってらぁ」


 「最初の任務だ、絶対乗り越えよう」


 三人はボンバーベアーと対峙する。両者とも、一歩も引かない。


 そして、前衛アレイシスが一歩前に出る。アレイシスとボンバーベアーはお互いにしばらく睨み合い、沈黙が続いた。まるで嵐の前の静かさのようだ。



 ――次の刹那、ボンバーベアーが手を振りかざして、咆哮をあげた。


 バシュッ!


 それと同時にアレイシスが凄まじい勢いで前に飛び出す。


 (前衛を任されたからには、ツルギ達に攻撃の隙を与えなければいけない。ならば、この技を使う!)


 腰に携える剣を引き抜き、一瞬でボンバーベアーとの距離を詰めた。そして、剣を振りかざし――、


 『フルゴーラ!』


 ザシュッ!

 「ギャアアアアアアアアアア!」

 

 ボンバーベアーの腕を、二本一気に切り落とした。風の技だろうか、とてつもない速さだ。これにはツルギも驚きを隠せない。


 「ツルギ、フォース! 今だ、叩き込め!」


 アレイシスが喝を入れてくれたおかげでツルギ達は正気に戻る。


 「フォース、行くぞ!」


 「おうよ!」

 

 そして、ツルギとフォーティンスもボンバーベアーの間合いに入り込む。二人はこれといって技を持っていない。そのため、ひたすら相手の体を削ることしかできない。


 「おらぁ!」

 

 (頼むから、効いてくれよ!)

 

 ツルギがボンバーベアーの胴体に、縦に一太刀入れた。


 「グオオオオオオオオオ!」


 ボンバーベアーが叫び声を上げた。アレイシスの技ほどではないが、効果はあるようだ。

 

 「一応、効いてはいるみたいだな」

 

 「ああ、このまま畳み掛けるぞ!」

 

 ツルギとフォーティンスが威勢よく突撃する。しかし、アレイシスは何か異変を感じとっていた。


 (奴の体が震えている……何か……くる)


 するとボンバーベアーが、なんと体に生えているダイナマイトを勢いよく発射させたのだ。


 「うぉぉ!?」


 これには二人も反応できない。腕がないのに攻撃できるとは予想もしてなかっただろう。

 

 「――ッ! 『フルーク!』」


 ドカーン!


 異変を勘付いていたアレイシスが咄嗟に技を繰り出した。ツルギとフォーティンスの目の前に風の壁を生み出し、なんとか攻撃を防いでみせた。


 「たっ、助かったぜ、アレイシス」


 「ああ、それより、奴だ。さっきの爆発に巻き込まれててくれるといいんだが」


 さっきの爆発で目の前に煙幕が立ち込め、ボンバーベアーの姿が見えなくなった。しかし、気配は去っていない。


 しばらくすると、徐々に煙幕が晴れてきた。


 「みんな、警戒しろ!」


 ツルギが声を張り、再び緊張感が増す。


 「よし、攻撃だっ! ――ッ」


 しかし、目の前にいるボンバーベアーの姿にツルギとその一同は目を疑った。


 「腕が、再生してる!?」


 なんと、アレイシスが切り落としたはずの腕が再生していたのだ。そして、姿形も先ほどとは打って変わって牙が長く、鋭くなり、ドラゴンの角のようなものも生えている。


 (こいつ、再生能力も持ってやがるのか!? でも、さっきとは雰囲気が違う……もしかして)


 「みんな、もしかしてこいつ第二形態なんじゃないか?」


 「だとしたら、面倒くさいったらありゃしねえぜ、おい」


 これが第二形態だとしたら、また次のフェーズがあるのかもしれない。そうなったらやはり面倒だ。


 「とりあえず、戦うしかない。戦って、奴の弱点を見つけ出すんだ」


 アレイシスが皆を奮い立たせる。やはり解決策は相手の弱点を探ること、それしかない。


 「まあ現状、それしか方法はないわな。じゃ、いくぜ、みんな!」


 「おう!」


 そして再びボンバーベアーに突撃する。攻撃方法は変わらず、前衛がアレイシスで、後から残り二人が続く形だ。


 『フルゴーラ!』


 ザシュッ!


 再びアレイシスが攻撃を放つ。そして、ボンバーベアーの腕を再度切り落とす。しかし、


 ボコボコボコ!


 ボンバーベアーの腕が一瞬のうちに再生したのだ。

 

 「――ッ! 速すぎだろ、これも第二形態だからってか!?」


 しかしツルギ達はもうボンバーベアーの目前にいる。そして、前に出たフォーティンスが上に飛ぶ。


 「弱点ってのは、大体首切り落とせば解決するもんだぜえ! 食らいな!」


 ズバッ!

 「ガッ」


 そして、フォーティンスがボンバーベアーの首を落とした。


 「よくやったぞ、フォース!」


 「へっ! どんなもんよ!」


 (さて……これで死んでくれた…か?)


 しかし、おかしい。首を切り落としたにも関わらず、奴は倒れず、立ったままだ。

 すると――、


 ボコボコボコボコ!

 「グオオオオオオオオオ!!」


 なんとボンバーベアーは首が再生して、大音量の咆哮をツルギ達に浴びせたのだ。


 「おいおいおい、首落としたってのに、死なねえのかよ!」


 「攻撃来るぞ!」


 ボンバーベアーはもうすでにダイナマイトを手に持っていた。そして、それをこちらに投げる。


 ドカーン!


 「――ッ!」


 それをツルギは間一髪で避けた。アレイシスとフォーティンスも爆発に巻き込まれなかったようだ。


 「――チィッ!」


 (くそっ、首が弱点でもないなら、どこなんだよ)


 「くっ、とりあえず、攻撃だ!」


 とりあえず攻撃して、首以外の弱点を見つける。今はただそれしかないのだ。


 どれだけ傷をつけても、弱る見通しが立たない。ツルギと他二人の体力も限界を迎えてきた。


 「食らえ!」


 ツルギはボンバーベアーの胸あたりに向かって剣を振った。すると、


 ガキン!


 「なっ!」

 

 ツルギが振った一太刀がボンバーベアーの腕で止められてしまった。


 ドゴッ!


 「ぐっ!」


 そして、もう一本の腕で吹き飛ばされた。

 

 「ツルギ! 大丈夫か!?」


 アレイシスとフォーティンスが攻撃の手を止めて、ツルギの元へ駆け寄った。

 

 「ああ、平気だ」


 しかし、ツルギもやられっぱなしではないようで、何か気づいたことがあった。


 (あいつ、心臓のあたりを守ってやがる。腕を切られても、首を切られても、何の躊躇いもないのに……)


 戦っていくうちに気づいたこと、それは相手の警戒しているところ。つまり、弱点。


 (しかも、そこだけ明らかに肉が分厚い。つまりは……そういうことだな!)


 「みんな、あいつの弱点がわかった!」


 「本当か!?」


 「ああ、だから一旦建物の影に隠れるぞ」




*************************




 「で、どこが弱点なんだ?」


 フォーティンスが質問する。


 「あそこだよ」


 ツルギが建物の影からボンバーベアーに指をさす。


 「心臓あたりか? でもなんで」


 「あそこだけ、他と比べて明らかに筋肉が隆起してる。そして、俺が攻撃した時、なぜかあそこだけ必死に防いでた」


 「つまり……」


 「ああ、そうだ。おそらく心臓が奴の弱点だ」


 ツルギが弱点を掴んだ理由を的確に話す。それに他二人も納得した。


 「でも、今までの攻撃方法じゃ、腕で攻撃を防がれて、爆発に巻き込まれるだけになる。だから、とある作戦があるんだ」


 「その、とある作戦とは、一体……?」


 「ふふぅん、それはな……―――――――――――――――――――――――――――――」


 「なるほど、それなら」


 「ああ、じゃあこの作戦で、勝ちにいくぞ!」




*************************




 「――よぉ、好き放題暴れまわりやがって、ただじゃ置かねえからな?」


 ツルギが建物の影から出てきて、ボンバーベアーと対峙する。相手も唸り声を上げながらこちらを睨んできた。


 「まあこれ以上暴れてもらっちゃ困るから、ここでお前は」


 「死んでもらうぜ!!」


 シュタッ!


 ツルギがボンバーベアーに向かって勢いよく走り出した。


 「うおおおおおおおおおお!」


 大きな声で叫びながら、ツルギは建物の方に目を向けた。


 「フォース! 今だ行け!」


 「おっらぁ!!」


 すると、フォーティンスが建物の二階の窓からボンバーベアー目掛けて飛び出した。


 「俺もいるってこと、すっかり忘れてたようだなあ、おい!」


 ボンバーベアーはツルギにしか目を向けていなかったため、いきなり出てきたフォーティンスに対応できない。そして、フォーティンスは剣を引き抜き、


 「これでも、食らえや!」


 ザシュッ!

 「グガアアアアアアアアアアアアア!」


 会心の一撃を食らわせた。その攻撃はボンバーベアーの頭を縦に両断した。


 「ふっ、やっぱ最高だぜ、フォース!」


 「戯言はいいから、こいつをボッコボコにすることだけを考えろ!」


 「そうだったな。じゃ、斬って、斬って、斬りまくるぞ!」


 そして、ここからは、ある人物の隙を作るための、時間稼ぎだ。


 ボンバーベアーの腕、足、腹に刺さってるダイナマイトなど、傷をつけられるところにとにかく損傷を食らわせる。


 「腕と爆弾を重点的に攻撃だ!」


 「わかってらあ!」


 腕とダイナマイトを斬ることで、爆発による攻撃を防ぐことが可能だ。


 しかし、再生速度が速すぎる。ツルギが次の攻撃を放つときにはもうすでに傷が塞がっている。


 (くっ、やっぱり、俺らだけじゃ到底敵わないよな)


 (でも、それで結構!)


 ツルギはニヤッと笑みを浮かべた。そして、ボンバーベアーへの攻撃の手を止め、横に飛んだ。


 「アレイシス! 隙は作ったぞ! やってくれええ!」


 「ツルギ、やはり君は、素晴らしい策士だ」


 建物の影から出てきたのは、アレイシスだ。

 ツルギとフォーティンスはアレイシスの一撃を与えるための時間稼ぎと隙を作っていたのだ。


 「二人が作ってくれた、隙、必ず無駄にはしない!」


 そしてツルギ達の後方で剣を構える。その剣は青い光を放っており、周りの空気が揺らいでいるのがわかった。

 

 「これが、今の僕が出せる、最高威力の技だ。食らえ!」


 『フラッシュ・インパクト!!』


 ドゴォン!!


 アレイシスは大地が揺れる勢いでボンバーベアーに突撃した。それはまさに閃光のようだ。


 そして、その剣は止まることを知らず、ボンバーベアーの体を、


 心臓ごと真っ二つに切断した――。



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