第三話 『イデラル・ワールド』について
「俺が救う。俺がーーー」
「壊してやる」
ツルギは決意のこもった眼差しでアルネブにそう答えた。
「ーーフッ…やはり…」
その答えを聞いたアルネブは何か呟いた。
「ん? どうしました?」
「いや、特に深い意味はありませんよ」
「ただ…」
「あなたなら、そう言ってくれると信じていましたからね」
「あっ…」
その言葉で、アルネブは最初からこうなると知っていたのだとツルギは思った。
「まあ何はともあれ、俺がこの計画にするんですから、あんたも、俺が英雄になれるように、協力してくださいね」
「ええ、もちろん」
アルネブはこくりと頷いた。
「ーーそこで…」
「ん?」
そして、アルネブは何かを話し始めるーー。
「この計画を実行するにあたり、ツルギ殿に伝えなければいけないことがいくつかあります」
「確かに、俺この世界のこと全く知らなかったですもんね」
「ええ、その通り」
「ーーこの世界は『イデラル・ワールド』という名前で、とある人物の暴走によって創られたことは、先ほど教えましたね」
「ああ、さっき自暴自棄になってたから、うっすらですが、そんなこと言ってましたね」
「そのため、まずはこの世界を創った人物……」
「『ニーハル』について、お話ししましょう」
「ニーハル…。それが、黒幕…つまり、俺たちの敵の名前ですか?」
「はい、彼こそがこの世界を創った人物…私たちの宿敵に当たります」
アルネブはツルギの敵『ニーハル』の素性と、暴走してしまった経緯を説明する。
「現実世界で言う、十年前です。彼は当初、地球……つまり、現実世界で、苦しんでいる人々を救うために奮闘していました。彼らを救う。そのために、『イデラル・ワールド』を創り、現実世界からこの世界へ彼らを連れ出し、生活をさせていました」
「――ッ」
(もともとは地球の人間だったのか…今まで会ってきた人、全員が……)
ツルギは住人が元は現実世界の人間だったと知り、苦い表情を浮かべた。
「しかし、その計画は上手くは行きませんでした。彼が理想郷に連れてきた人々が『元の世界に帰りたい』と、そう懇願してきたからです」
「あっ…」
「その言葉に彼は激昂し、支配の能力で彼らを洗脳しました。そして、彼らの現実世界での記憶を吸い取り、この世界の住人としての虚偽の記憶を植え付け、強制的に演じさせているのです」
「ひでぇ…なんて奴だ…」
ツルギはその話を聞いて、思わず吐き気を感じた。
「そして、彼ら…つまり、この世界の住人の解放。それが私の目的であり、あなたに協力をお願いした理由でもあります」
「ニーハルを倒すために、俺に協力を求めたってことですね」
「ええ、聞くに堪えない話を聞かせてしまい、申し訳ありません。ただ、これだけは伝えたかったので…」
アルネブは深々と頭を下げる。
「いや、いいんです。そのクソ野郎を必ず倒さないとって、余計覚悟が決まりましたから。頭、あげてください」
「フッ…その心、素晴らしいです」
アルネブは頭を上げ、微笑みながらツルギを褒めた。
それに続いてツルギは言葉を紡ぐ。
「アルネブさんはすごいと思います。誰かのために動けて、誰かのために悩めて…俺には到底できないことです」
「…ツルギ殿には本当に感謝しかありません」
アルネブは再びツルギにお辞儀した。
「ーーアルネブさん」
「絶対、ニーハルを倒しましょう。倒して、この世界の人々を、救いましょう」
ツルギはアルネブに誓う。宿敵を倒して、英雄になる決意をーー。
「ええ」
アルネブも力強く応えた。
「ーーそれはそうと、次に伝えることが残っていましてね」
「ん? ああ、そういえばまだ伝えることがあるんでしたよね」
「はい。実は、驚かせてしまうかもしれませんが、この計画に協力してくれる人物はツルギ殿だけではないのですよ」
「え…」
「そうなのぉ!?」
ツルギは衝撃の事実に驚き、唖然とした。
「ええ、その協力してくれる方々は、ツルギ殿と同じように私が現実世界から連れてきた、転生者です」
「あっ」
(転生してきた人って俺だけじゃなかったんだ…)
「彼らは…この施設の大広間にいます。この部屋を出て、廊下を歩いていると巨大な扉に行き着きます。それが大広間の扉です」
「わかりました。ところで、アルネブさんは俺と一緒に行かないのですか」
「私は、この施設内ならテレポート機能が使えるので先に大広間の方へ行かせてもらいます」
「げっ、まじかよ…いいですねー、その機能」
ツルギは羨ましそうな顔をした。
「ふふっ、では…後ほど」
「はい」
そして、アルネブは瞬く間にその場から消えた。
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「あっ…あれは…!」
十分ほど廊下を歩いていると、巨大で明らかに重い扉が目の前に現れた。近くまで行くと、その巨大さが目に見えて分かった。
「この先に、俺の、これから共に生きていく仲間がーー」
そして、ツルギは扉に手を当てる。
「フンッ!!」
ギギギギ……
ツルギは目一杯の力で扉をこじ開けた。そして、扉の先から光が差し込む。
(うっ、眩しいっ!)
その先に待っていたのは果たしてーーー




