第113話:静寂のホールと、笑いの爆弾
ローラは椅子にもたれかかり、ぐっすりと眠っていた。
その寝息だけが、広いホールの静寂にぽつりと響く。
バックスは周囲を見渡しながらつぶやいた。
「……誰も喋らないな……」
クラリッサは生成魔導士たちを観察し、眉をひそめる。
「……これだけの人数で、死んでるみたいだけど息はしてるわね……
真似した方がいいわね……」
アメリアは慌てて姿勢を正し──
しかし、すぐに肩を震わせ始めた。
「わかった……でも……ぷぷ……」
笑いを必死に堪えている。
バックスが怪訝そうに眉を寄せる。
「どうした!」
アメリアは指をさしながら、声を震わせた。
「……だって……バックスさん……その格好……」
そう、バックスは“かわいいコバック”の姿のまま、
しかもフリフリのメイド服を着ていた。
クラリッサも口元を押さえながら震える。
「……ぷぷ……」
エレンも限界だった。
「……笑っちゃ……ぷぷ……ダメです……よ……ぷぷ……」
バックスは顔を真っ赤にし、拳を握りしめる。
「……この野郎共……覚えてろよ……」
アメリアは慌てて手を振った。
「ごめん、ごめん!」
そのとき、バックスが急に表情を変えた。
「……あ!」
アメリアが身を乗り出す。
「どうしたの?」
バックスは真剣な声で答えた。
「……俺の“本体”が……近づいている」
ホールの空気が、一気に張り詰めた。




