第110話:レヴィアス城、揺らぐ王の間
王の間を、マジャホが落ち着きなく行ったり来たりしていた。
普段の威厳ある姿はどこにもなく、ただ焦りだけが滲み出ている。
「……聖魔法……まずい……まずいぞ……」
そのとき、背後から落ち着いた声が響いた。
「……どうなされたのですか、マジャホ様」
振り返ると、赤毛の美少女──トリニティが立っていた。
「おお! トリニティではないか! 戻ったのか!」
「はい。親方様の用事は済みましたので、急ぎ戻った次第です」
マジャホは胸を撫で下ろした。
「それは心強い……実はな……」
トリニティは静かに頷いた。
「聖魔法ですね」
マジャホは目を見開いた。
「おお! さすがはトリニティ!」
トリニティは微笑み、軽く首を振る。
「落ち着いてください。らしくありませんよ、マジャホ様」
「……だが聖魔法だぞ……ヤバいだろ……」
「ご安心を」
トリニティは王の間を見渡しながら言った。
「このレヴィアス城には、物理・魔法すべてを跳ね除ける
超高位結界を、私自ら施してあります。
外部からの侵入は不可能です」
マジャホは肩の力を抜き、深く息を吐いた。
「……そうだ……そうだったな……
私ともあろうものが、醜態をさらした……」
トリニティは一歩近づき、柔らかく微笑んだ。
「マジャホ様。上に立つ者は、それくらい慎重でなければなりません。
さすがは“魔族No.2”の呼び声が高いマジャホ様です」
その言葉に、マジャホの胸は少しだけ誇らしげに膨らんだ。
「……ふむ……そうか……そうだな……」
だが、聖魔法の波動はまだ遠くで脈打っている。
レヴィアス城の空気は、静かに、しかし確実に緊張を帯びていった。




