第106話:暴走火力、解き放たれる
触手を断ち切られたバックスの身体が、まるで糸が切れた人形のように宙へ舞い上がった。
その落下軌道に合わせるように、エレンが素早く走り込み、両腕でしっかりと受け止める。
「バックスさん!」
「お、おう……助かった……!」
バックスは息を整える間もなく、巨大化しつつあるローラへ手のひらを向けた。
その掌には、赤黒い魔力が渦を巻き始めている。
エレンはすぐにバックスの背中へ手を添え、魔力を流し込んだ。
「魔力注入!」
次の瞬間、バックスの身体がビリビリと震えた。
「なっ……ヤベぇ魔力量だ!
おいエレン! あのローラってのはお前の知り合いだろ!
本当に殺していいのか!」
エレンは迷いなく答えた。
「大丈夫です! 殺すつもりで撃ってください!
死にませんから!」
「……何言ってやがる……」
バックスは信じられないという顔でエレンを見る。
だが、エレンの瞳は揺らぎもなく、ただ真っ直ぐだった。
その目を見た瞬間、バックスは腹を括った。
「……どうなっても知らねぇぞ!」
バックスは掌を突き出し、叫ぶ。
「ブラッドショット!!」
赤黒い魔力が凝縮し、轟音とともに放たれた。
空気が裂け、講堂全体が震える。
「……出したことねぇぞ、こんな火力!」
放たれたブラッドショットは、
巨大化したローラの胸部へ一直線に突き刺さった。
衝撃が爆ぜ、ローラの身体が大きくのけぞる。
講堂が揺れ、信者たちが悲鳴を上げる中──
バックスは息を荒げながら呟いた。
「……死んだか……!」




