第104話 エレンの作戦
マリアンヌが両手を広げ、禍々しい魔力を解き放った。
「そろそろ頃合いね……〈デモニック・リフォージ〉!」
その言葉と同時に、ローラの身体が痙攣しながら膨れ上がっていく。
骨が軋むような音が講堂に響き、彼女の影が巨大化して床に伸びた。
クラリッサが青ざめた顔でつぶやく。
「……あれ……レオニードの時の……」
アメリアはローラの変異を見つめながら、クラリッサに問いかけた。
「巨大化する魔法……クラリッサ、どうする?」
クラリッサはこめかみを押さえ、苦しげに首を振る。
「……ごめん……脳が働かない……魔法は無理……構築できない……」
アメリアはすぐにエレンへ視線を向けた。
「エレンくん! 何か考えて!」
エレンは一瞬だけ目を閉じ、すぐに決意を宿した瞳で顔を上げた。
「……クラリッサさん。剣は使えますか?」
クラリッサは息を整え、頷く。
「……うん……大丈夫……」
エレンは続けた。
「……であれば……バックスさんの魔法に賭けましょう。
クラリッサさんは、バックスさんに絡みついている触手を切り落として下さい。
バックスさんが解放されたら──」
エレンはアメリアを見た。
「アメリアさんは、僕をバックスさん目掛けて投げてください」
アメリアは目を丸くした。
「そしたらどうなるの?」
クラリッサが代わりに答える。
「……エレンくんがバックスに魔力供給……
バックスの魔法でローラを倒す……ってことだね」
エレンは静かに頷いた。
「はい。バックスさんなら……必ずやれます」
巨大化し続けるローラの影が、三人の足元まで迫っていた。
時間はもう残されていない。
アメリアは拳を握りしめ、息を吸い込んだ。
「……よし。やるしかない!」
講堂の空気が、再び戦いの気配で震え始めた。




