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第95話「いざ鉱山へ!」


──鉱山都市カリオス。


「いいか? 俺たちカリオスが保有している鉱山と国が保有している鉱山は全然別物と思えよ?

 間違えて収容者用の鉱山にでも入ったら大変な目に合うからな?」


「たっ、大変な目って……?」


「中には収容者……つまり犯罪者しかいないってことだ。手足に枷はあるが、何してくるか分からんぞ」


 ヤバい! ヤバすぎるって!

 普通の鉱山はほぼダンジョンだし、間違えて入ったらプラス犯罪者ってこと?


 どっちに転んでも最悪じゃないか! これが採取依頼なの!? あり得ないんですけど!


「なぁ、リディア? この採取依頼ってランクはなんなの? 普通の採取じゃない気がするんだけど」


「えっ? それは、その……たしか、B? だったかな? 多分……」


 はぁ!? なんだそれ! 濁すように言ってもしっかりBって聞こえたぞ!?


「……ただの鉱石採取かと期待させておいて、そりゃないだろ……」


「パパっと鉱石見つければ大丈夫だって! それに、一番見つけやすい鉄鉱石にしたじゃない。ねっ?」


「ねっ? じゃねぇよ!」


 俺たちがやいのやいの言っている横で、親父さんは微笑ましくその様子を見ていた。


「お前たち、仲がいいんだな!」


「どこが!? 仲睦まじい感じありました!?」


「ワッハッハ! そう心配すんな! 収容者用と普通の鉱山は見分けがつくように入り口に目印があるから大丈夫だ!」


 それを聞いて俺は安心した。


「なんだ……それならそうと最初から言ってくれよ……」


「悪い悪い! 入り口に丸印の紙が貼られてるほうが俺たちカリオスの鉱山だ。間違えるなよ?」


 俺たちは親父さんから詳しい鉱山の場所を確認して、眠りについた。

 たくさんの鉱山が立ち並ぶ峡谷の一番奥、並ぶように二つの入り口があるから行けばすぐに分かるそうだ。


 親父さんは鍛冶仕事が立て込んでいるため付いてこられないらしいが、分かりやすい目印もあるし大丈夫だろう。



◆



──鉱山都市カリオス、カリオス鉱山十三号。


 広く長い峡谷の終着点に現れた二つの鉱山入り口。年季の入った木枠にはひび割れが目立つ。


「ここが親父さんが言ってた鉱山? だよな?」


 俺は辺りを見渡すが、この二つ以外には入り口はなさそうだ。


「そうだ! 目印、目印……」


 それはひび割れた木枠に乱暴に釘で打ち付けられていた。風ではためく丸印が書かれた紙。

 こんなんでよく飛んでいかないな。


 ここへ来る途中にもいくつかの鉱山入り口を通り過ぎてきた。そこの入り口にはどれも立て看板でしっかりと収容者用、採掘者用と分けられていた。


「なんでこの鉱山だけ紙なんだよ……」


 俺が目印の紙に触れると、今にも破れそうなほどのボロボロ具合だった。


「よっぽど、ここには熟練の採掘者しか来ないんでしょ。もしかしたらお宝なんかもあったりして♪」


「なんでそんなにお気楽なんだよ!」


「いいじゃない! ダンジョンなら何回か行ってるから問題ないでしょ!? それに、アナタのことだから目印なんてないって思ってたけど、ちゃんとあったから良かったじゃない」


 リディアはそう言うとケラケラと笑った。

 たしかに、俺もそう思ってたよ。紙を見つけた瞬間、ちょっとあれ? ってなったし。


 いや、待てよ。こんな簡素な目印、誰でも細工できそうだぞ?

 俺は紙を留めている釘に指をかける。グリグリと動かしてみると、簡単に折れてしまった。


「うわっ、錆だらけでボロボロじゃん」


 汚れた指をズボンで拭きながら、俺は頷いた。

 この目印に細工されている可能性は低いだろう。今までの経験上あり得ないが、こっちが正解の鉱山で間違いないんじゃないか?


「……大丈夫そうね。じゃあ入りましょっか」


「言っとくけど、魔物が出たら──」


「はいはい、アナタのことはワタクシがお守りいたしますよ」


「おい、なんだよその言い方! 元はと言えば騙すようにして連れてきたお前が悪くないか!?」


「騙すだなんて人聞きが悪い言い方しないでよ!」


「実際に騙してんじゃねぇか!」


 俺は文句を言いながら、カリオス鉱山へ入っていく。入り口を通ろうとした、その時だった。


「あっ! 冒険者の方ですか!? 良かった!」


「えっ?」


 呼び止められて振り返ると、収容者用鉱山の入り口で男が息を切らし、膝に手をついて立っている。


「なぁ、リディア。すごーく嫌な予感がするんだけど……」


「奇遇ね。アタシもよ」


「ハァ……ハァ……! どうか、助けてください!」


 男はくすんだ灰色の制服に身を包み、胸元には王国の紋章が刻まれた鉄製の徽章を付けていた。


 腰には短剣と警棒を下げ、使い込まれた革のブーツを履いている。


 いかにも看守らしい格好だ。


「リ、リディア……」


 俺はちょんちょんとリディアに合図を送る。


「ハァ!? なんでアタシが!?」


 リディアは嫌々ながらも前に出る。


「あのー、どうされました?」


 男はゴクリと唾を飲み込み、口を開く。


「し、収容者が中で暴れ始めました! 暴動です! 我々では手に負えず……どうか助けてください!」


 目印貫通してきやがったぁぁぁぁっ!




 次話へ続く

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