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第83話「念話のブレスレットは誰の手に」


──エルフの里、里長の家。


「なんと! 念話のブレスレットをユージ殿が持っていらしたとは!」


 里長が目をまん丸にして驚いている。


「持っているのなら、そう言ってくれればよかったのに……」


「いや、僕もさっきまで持ってるって知らなかったので」


 家の中に、不思議な静けさが落ちている。


「ま、まぁこれで聖竜に話を聞くことができます。結果オーライですよ!」


 エイルさんが静寂に耐えきれずに口を開く。


「じゃあこのブレスレットはエイルさんが着けてください。元々、弟さんの物ですし……」


 俺はエイルさんにブレスレットを差し出す。


「それが……そうもいかないのです」


「えっ? どういうこと?」


「この念話のブレスレットを装備したからといって、会話ができるとは限らないのです」


 エイルさんが重々しく口を開く。どういう意味だ?


「装備するだけじゃダメってことですか?」


 リディアがエイルさんに質問する。


「それが……ブレスレットには適性がありまして。

 限られた人間のみが会話できるのです」


「……弟さんにはあったと?」


「はい。なので私ではなく、弟が装備しておりました」


「なるほど。それじゃあ……」


 俺はそっとリディアにブレスレットを差し出す。


「……なんでアタシなのよ!? さてはアナタ、喋れる人だけ行かせて自分はここにいるつもりね!?」


「なっ!? そっ、そんなんじゃないし!」


「バレバレなのよ! いい? 試してみるけど、アナタも絶対に行くのよ?」


 リディアはブレスレットを腕に着ける。しかし、変化は感じられない。


「装備はできる……けど、これで喋れるの?」


 リディアはなにも変わらないことに、不安そうな素振りを見せる。


「実際にハナさんと喋ってみて確認しましょう!」


 エイルさんの提案に、「たしかに」と頷き、全員で家の外に出ていく。

 家の外にあるちょっとした広場で、ハナは翼を休めていた。


「ハナ、アタシの喋ってること分かる?」


『……クァ?』


 ハナは不思議そうに首を傾げる。


「ど、どうだ? ハナの言葉、分かるか?」


「……全然ね。はい、ユージの番」


 リディアはさっとブレスレットを外して、俺に渡してくる。


「いや、もっとこう、魔力を込めてみたりとかあるだろ!? 諦めるの早くない!?」


 俺はリディアから受け取ると、そのままエイルさんに渡す。


「えっ? 私はもう無理って分かって──」


「ほら! 時間も経ったし、もしかしたら!」


「は、はぁ……」


 結局、エイルさんもダメだった。魔力を込めたり、考えられる方法を試したりするも、ほんの少しも会話はできなかった。


「それじゃあ、ユージさん。お願いします……!」


 俺は渋々ブレスレットを受け取る。


「アナタ、どんだけ嫌なのよ……」


 そりゃそうだろ。たしかに、いつか喋れるようになるだろうモモはいいとして、シロやハナたちと話せるなら嬉しいけど……その前に聖竜との会話イベントが挟まるからな。


 俺は諦めてブレスレットを着ける。


「……おっ? なにも起こらない?」


「たしかに、なんか光ったりとかあっても良さそうなのにね。ハナと喋ってみてよ」


「あ、あぁ。……ハナ? 俺の言葉、分かるか?」


『クァッ! クァッ!』


 あれ? 分からないぞ……


「……どう?」


 リディアが覗き込んでくる。


「いや、まったく分からん」


「……嘘ついてないわよね?」


「疑うなよ! 本当に分かんないんだって!」


 エイルさんは残念そうに俺を見てくる。


「そうですか……ユージさんならあるいは、と思ったのですが……」


「なんかすいません」


「いえ、いいんです。里の人にもまだ試してない人がいるので、しらみつぶしに探しましょう」



◆



 結局、エルフの里の全員を試してみるも、誰一人として喋れるようにはならなかった。


「こんなことある!? 超重要アイテムを偶然手に入れてたのに、使えないなんて!」


 リディアがなぜか俺に当たってくる。そんなこと言われても。


「これ、偽物だったんじゃない?」


「いや、そんなはずはありません! 私はいつもこのブレスレットを着けた弟を見てました。見間違うわけないです!」


 そんなこと言っても、エイルさん。実際、誰も話なんてできなかったんだし。きっと弟さんには特殊なスキルがあったんだよ。


 俺は鞄にしまうのが面倒くさくなって、ブレスレットを腕に着けた。


「他に方法があるかもしれないし、なにか聖竜が暴れるキッカケになるようなことがなかったか探しましょう」


 そう言うと俺は、里長の家へ向かって歩き出した。


(なんだ、なんだ? また里長の家? あたしゃ暇だから嫌だな)


「まぁそう言うなって。広場で寝てていいから」


 リディアが俺の腕を掴む。


「ユージ? アナタなんで一人で喋ってるの?」


「……えっ? 今、ハナが……えっ?」


(これは念話だわさ。誰も聞こえてないよ)


「えっ? えっ? 念話のブレスレットって、そういう感じなの?」


「……は? アナタ、何言ってんの!?」




 次話へ続く

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